ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: −Alive− #03up オリキャラ募集 ( No.11 )
- 日時: 2010/07/28 08:46
- 名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)
#05 眠る先輩
「えーっと、家の階段から転げ落ちた?」
苦し紛れの言い訳。
いや、言い訳にすらなっていない。
俺は今、嘘のつけないこの性格を酷く恨んだ。
黙ったままの夜行。
なるべく目を合わせないように俺は視線を泳がしていた。
「……はぁ。お前、ホント嘘下手くそだなぁ。まぁ、今日はこれ以上聞かないよ。
聞いても紅逆はそう簡単に言わないだろうし」
夜行は薄く笑みを浮かべながらそう言った。
「感謝するよ」
俺も笑ってそう言い返した。
「じゃ、俺はちょっくら昼寝でもして来ますヨ。じゃーねー!! 紅逆」
手を振りながら夜行が遠ざかっていく。
アイツはこういうところで空気を読める、ある意味大人な奴だ。
だから俺もアイツを慕っているし、これからもこの関係を崩したくはない。
「だから、まだ俺がどういう状況なのかは秘密にしといてくれ」
俺の呟き声が小さく響いた。
*
紅逆の胸の傷。
大分深いように見れた。
ただの一般人のアイツがあんな怪我をするとは思えない。
ということは、
「生徒会長が動き出した、ってところかな」
俺は誰もいない廊下を進む。
「紅逆、お前はもう戻れない」
思ったよりも響く自分の声。
笑みを浮かべながら、俺は歩み進めた。
*
「……授業終了まで残り三十分。暇だ、暇すぎる」
あまりにも暇すぎて溶けてしまいそうだ。
俺が嫌いなモノ、退屈。
今俺はその退屈の頂点にいる。
夜行も行ってしまったし、授業が終わるにはまだ時間がある。
「久しぶりに、屋上でも行ってみるか」
痛む胸に手を当てながら、俺は屋上へと向かった。
「お、もう開いてる。先客かな」
既に鍵の開けられている屋上の扉。
俺はその扉を開け、静かな風の流れる屋上に立つ。
「気持ちー」
思いっきり伸びれば胸が痛み、俺はしゃがみこんで呻いた。
「痛ー……。めっちゃこの怪我不便だ。後でもう一回一縷に謝らせてやる」
一応、一縷は先輩なのだが、どうもあの人を先輩と呼ぶ気になれない。
屋上の壁に寄りかかり、空を眺める。
雲の流れに目を向けていたら少し眠気に襲われる。
そんな時、ふと感じた人の気配。
その後に聞こえた女の子の声。
「誰?」
そして首元に触れた細いワイヤー。
その部分からは一筋の血が流れた。
てか、俺最近こんな出来事ばっかりだ。
刺されたり、切られたり、正直うんざりしてきたぞ。
俺は両手を挙げて自分は敵じゃありませんと強調した。
「名乗って」
少女はワイヤーを俺に首に当てたまま言う。
どうやらワイヤーを退ける気はないようだ。
「……音無 紅逆。一年の一般生徒ですよ。先輩」
俺は彼女の胸ネームプレートに目を向けた。
三年A組、夢喰 眠(ユメクイ ネム)。
長く伸ばされた青い髪、そして、なんというか……異常なほどにでかい胸。
それがとても印象的だった。
「……そう。貴方が会長の言っていた子ね。苦労しそうな顔してる」
そう言って笑う眠先輩。
先輩なのに可愛いなんて失礼かもしれないが、そういう笑顔だった。
「先輩も、生徒会役員?」
「うん。会計」
なんだか最近会った人の中で一番まともな気がする。
それに、彼女の表情からは優しさが感じられる。
「……先輩、たまに相談しにきてもいいッスか? 俺の周りはどうもキャラが濃くて疲れる」
「音無は、会長にも捕まっちゃってるしね。私、いつもだいたい此処にいるから、おいで。いない時は生徒会室にいる」
眠先輩はそう言うと再び眠りに入った。
規則的に聞こえる寝息。
だんだんと眠くなってきた俺は、その寝息を耳にしながら眠りについた。