ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: −Alive− #03up オリキャラ募集 ( No.15 )
- 日時: 2010/07/30 09:03
- 名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)
#07 赤い夢と不死の神
赤 赤 赤
どんなに走っても、逃げても
消えない赤。
「母さん!! 父さん!!」
両親を呼ぶのは幼き自分の声。
そして目の前に“ある”のは
ただのモノとなった両親の姿。
「嫌だよ……。一人に、しないでよ……」
流れる涙は頬を伝う。
「泣くことはない。お前もすぐ、パパとママの所に行けるからな」
自分の背後に立つ男は俺の頭に銃を突きつける。
直後聞こえた銃声
夢はいつも、ここで終わる。
「また……あの、夢か……」
荒くなった自分の呼吸を整え、大きく息を吐いた。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
時間は分からないが、恐らく外は暗くなる時間帯だろう。
「……あの夢に出てくる子供は自分。でも、俺の両親は生きているし、俺もこうして生きている」
ただの夢なのか、
もしくは俺の昔の記憶か……。
俺には七歳より前の記憶がない。
今の両親との思い出も七歳からだ。
だから、
両親が本当の親である確信も、あの夢がただの夢だという確信もない。
「こんな時にこういうことは考えないのが鉄則」
俺は頭を左右に振る。
「まずは此処からどうやって脱出するか」
今の自分は手足を拘束されている、それにこの部屋には窓ひとつない。
あるのは目の前にある鍵の掛かった扉のみ。
「……あのドアぶっ壊して出るってのはないよな」
回転しない自分の頭に思わず溜息が落ちる。
「眠先輩、無事かな……」
そう呟いた時だった。
コツコツと自分の下に近づく足音。
その足音に俺は耳を澄ます。
扉の前で止まる足音、そして重い扉が開く。
「はじめまして、音無 紅逆君」
聞いたことのない声。
目の前にはまだ若い、二十代と見られる男が立っていた。
黒髪に何を考えているか全く読めない蒼い瞳。
上等なスーツに身を包み、自分の前に立つその男を俺は睨みつけた。
「アンタが俺を拉致った犯人?」
強気な態度でいるが、正直体の震えが止まらなかった。
男から放たれる強い威圧感。
少しでも気を抜けば押しつぶされてしまいそうだ。
「まぁ、元を辿ればそうなるかな。私は鈴堂(リンドウ)」
「……アンタの目的は何? 眠先輩は無事なのか?」
鈴堂と名乗った奴の表情から何も読み取れない。
冷や汗が額から流れる。
「眠、とはこの少女のことかな?」
鈴堂が奥にいた付き人らしき男に何やら指示を送る。
「音……無……」
男に連れられて来たのは屋上で一緒にいた彼女だった。
「眠、先輩!?」
傷だらけの弱った彼女を俺はただ呆然と見つめる。
「抵抗するものだから、少し傷物になってしまったが、命に問題はないよ。まぁ、それは君次第だけどね」
鈴堂は笑みを浮かべそう言う。
「俺、次第?」
「そう。君が大人しく言うことを聞いてくれれば、彼女はすぐに解放しよう」
嘘かもしれない。
だけど、この男はきっと、俺が抵抗すれば簡単に眠先輩を殺す。
「……何すりゃいいんだよ」
俺は睨んだまま言い捨てる。
「不死の神、奴の姿を見せてくれないか?」
意味が分からなかった。
不死の神。
そんなもの、俺は知らない。
「そんなもの、知らねぇよ」
そう答えれば眠先輩に首元に近づけられるナイフ。
でも、
俺は本当にそんなもの知らない。
「先輩に触れんな!! 俺は不死の神なんて知らねぇ!!」
俺がそう言い放てば鈴堂は顎に指を添えて考えるような表情を見せる。
「そうか……。嘘をついているようには見えないな。本当に知らないのか……なら」
「無理やり出させてやろう」
頭を掴まれそのまま床に押し付けられる。
「っ、く……」
痛みが走り、顔を歪めれば鈴堂はさらに力を強めた。
そして手に持ったナイフを構える。
「いっ……」
肩に深く刺さったナイフ。
血が流れ、痛みで意識が揺れる。
「っ、音無!!」
眠先輩が彼女の腕を掴む男達を振り解こうとするが、それも阻まれる。
「不死の神、早く出てこなければこの子供がもっと苦しむことになるぞ?」
鈴堂はそう言ってナイフをさらに奥へ刺す。
「っうあ!! や、めろ……」
痛みが全身を襲い、血はさらに地面を濡らす。
その時だった。
『紅逆、ここは俺に任せな』
聞いたことのない筈の声、なのにどこか懐かしいその声が頭に響く。
次の瞬間、意識の糸が切れ体から力が抜ける。
「もう意識を失ったか?」
鈴堂が紅逆に再びナイフを振り下ろす。
だが、それは紅逆の手によって弾かれた。
『お前か。俺の眠りを妨げ、コイツを苦しめたのは』
手足の拘束を解き、立ち上がる紅逆。
瞳は鈴堂を真っ直ぐ捕らえ、睨みつける。
『お前のご要望通り、出てきてやったぞ』
紅逆の左の灰色の瞳が右と同じ赤に染まる。
鈴堂は嬉しそうに笑みを浮かべ呟いた。
「不死の神、イーリスト・アルバート。ついに見つけたぞ」