ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第5策  生い立ち ( No.10 )
日時: 2010/07/27 20:45
名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: aeLeTDX9)

家……と言っても僕1人には大きすぎる、まるで屋敷のような家だ。
家族の遺産の1つで、余計に大きい家なのだが、どうも売るに売れない。
黒薙家の家族は代々魔法の研究を行っていた権威ある研究者の家庭なのだが、魔法というものがこの世に存在するのかどうかの時点で黒薙家末裔のボクは首をかしげる。

「思い出って物が家にもあるのかな……」

取りあえず門を開こうとポケットから鍵を探る。
無い……!何処かに落としたか?
と思った直後、誰かが僕の後ろに近づいてくる音がした。

「おい!」

いきなり声をかけられ、……もの凄くビックリしたまま振り返る。

「大神さんですか」

そこに居たのは右手で鍵束の輪に指を通しクルクルと回している大神 氷だった。
彼女は、最近までこの家に住んでいた。
叔父が養子として施設から小さな子供を引き取っていたのだ。
唯一孤児院に居たのは、まだ自分のことを『氷』と名乗る小さな3歳くらいの女の子が1人。
孤児院へ行くまで養子を取る事に反対していた叔父は、その時こう言ったという。

『人間って、なんてことをするんだ。これじゃあ一匹狼じゃないか』

その言葉がどうも大神の名字に反映されたらしいのだが、そんな事はどうでもいい。
それに、切れたら我を忘れ熱くなる性格の癖に氷と言う名前の理由もどうでもいい、と言うか知らない。
その3年後、叔父家族は惨殺され、うちの家族になったのだが、その2年後、何故かボクの家族はボク以外が全員殺された。
母、父、兄、姉、妹……その全員が解体され、浴室で発見されたのだ。
後で部活動で犯罪者の追跡をするうちに、その犯人は、ボクの家族だけではなく、叔父家族が殺される4年前、大神の家族をも皆殺しにしていた。
去年やっと捕まり、極刑(死刑)を言い渡されたらしい。

「何で家の鍵を……?」

「帰りのバスの中で掏られてた、俺が軽く痛めつけて奪い返したけどな」

軽く混乱する童子に大神は呆れながら言葉を続ける。

「お前もとろいな〜……」

どうもこの叔父に似た口調はウザイ。
うちに来た時から確かこんな感じだったな。

「そんなことをボクに言いにきたの?」

大神がその程度の事でボクの所に来る事は有り得ない。
何らかの急を要する情報をつかんだ時だけだが、どうもこの家を嫌っていると言うのもあるらしい。

「そんなわけないだろ、毒トカゲの足取りが掴めた。21日、東京都で一仕事やらかすらしいよ」

毒トカゲの情報とは驚いた、どうやって情報を得たのだか……。

「21日って言うと……」

今日が19日だから……。

「明後日だ」