ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 第1策 残念な逃走者 ( No.3 )
- 日時: 2010/08/10 21:34
- 名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: aeLeTDX9)
「ハァ、ハァ……」
1人の男が闇から迫り来る何者かから必死に逃走を試みている。
月夜の晩、周囲を月光が照らすが、"何者か"を照らすことは決してなかった。
ただ、こんな声だけは確かに聞こえた。
「右に1mずれて、顔を見られる」
その言葉から察するに敵は2人。
逃げる男の心臓は一層速く鼓動を鳴らし、人間の本能的なカンから殺されること覚悟での玉砕的行動に出る。
その行動とは、声のする方にただひたすら攻撃を飛ばすだけの策とも何とも言えない物だ。
その攻撃は見事に全て外れ、代わりにカウンターが飛んできた。
腹に一撃、それだけで肋骨が折れている。
女物のシャンプーの臭いとさっきの声から察するに、敵は男と女のはずなのだが、今の攻撃は間違いなく女の方だ、何故ここまでの力が !?
そこで追われていた者の意識は途切れる。
「よっしゃ、金入った!部活存続決定!」
逃走者は女だと言うのは当てた、確かに茶髪の結構美人だったのだが、見るからに暴走族のような感じで、怖い雰囲気ムンムンだ。
それに比例し、男の方は倒れた逃走者を軽く避けている……?
では無く怖がっている?
「何怖がってるんだよ、童子ィ!良かったじゃないか、ハンティング部の存続が決定した瞬間だぜ !?」
その言葉に対し、童子と呼ばれた男は呆れるかのように言葉を返した。
「今のだって立派な部活動、実際に週1人捕まらなかったら部活は解散だから」
「確かにな、毎回言うのは止めるか」
女側の余りにも男勝りの発言ではなく、今少し痙攣を起した縄で縛られ気絶している人間に対して童子はビビッていた。
ああ、男性女人化の波はこんな所まで……というわけでも無いらしい。
はしゃいでいる女1人とビビッている男1人を割って入るかのように大きなハサミを持った、センスの壊滅的なまでに悪い服装の男がやってきた。
「大神、早かったな……。実際スタートしてからものの15分で連絡が来た時は流石にびびったぜ?」
「別に、運が良かっただけだってば、E 級犯罪者だし。それにさ、東城に任せたら首と胴体が別々の状態で換金所に行く羽目になってただろ?」
大神と呼ばれた女は楽しそうに答える。
東城がそのまま逃走者を片手で持ち上げると、3人とも夜の闇の中へ消えていった。
犯罪者を捕まえ地域の平和を守る部活、それが彼らの表向きの部活動、ハンティング部。