ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第27策  問 ( No.55 )
日時: 2010/08/22 09:51
名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: aeLeTDX9)

人は、幸せになれず、絶望によって不幸のどん底に叩きつけられると、抗う者が殆どだろう。
一番最初は、不幸になった原因を探し、この事で幸せになれる方向へと矯正する。
二度目になると諦めが入り、三度目になると諦める。
コレが凡人の行動パターンだ、天才を見てみよう。
一番最初は同じようにその件へと向き合う、二度目は考え不幸になった際の失敗を無くし再挑戦する、三度目派になると考えが自然と変わる。
"失敗するためのマイナス要素を消し去ってしまい、別の事で成功する"
これはプラスの天才の考え方、マイナスになるとこうなってしまう。
"幸福も不幸も無いように原因を全て根絶やしにしよう、何も無い様にしよう"
これが、危険なのだ。

「おお、黒薙家末裔の童子君だね? 迎えに来たよ、さあ行こう。おや、こちらには大神家の松江のお嬢さんもですか、我々の元へ戻ってきてください」

津堂の差し伸べた手を童子は銃で打ち抜いた。
うつむいたまま、地面に放った兆弾で二度と腕が動かぬよう筋肉の端を両方とも!

「勝手な事抜かすな、どれだけ苦しんだと思っている? 人体実験のモルモットなんざやりたかねぇ、今ココで危険分子を排除することにするよ」

童子の眼は既に我を忘れ、復習に駆られた殺人鬼の眼へと変貌を遂げ、津堂を寄せ付ける気配は愚か、その場に居た全員を威圧し、近づけることはなかった。

「東城先輩、操られているだけですよね? そうですよね? 敵じゃ……無いですよね?」

しかし、その問いは完全に東城の声を押し込ませていた。
その答えを待つまでも無く童子は津堂へと襲い掛かった。
有り得ない速さ、有り得ない威力、有り得ないほど性格で、有り得ないほど殺意に満ちた攻撃が津堂を捉え、軽く吹っ飛ばすと壁へと叩きつけた。
しかし、コイツもコイツ、常人なら骨が砕けるような威力のはずなのに、アバラ一本折っていないどころかカウンターで童子の顎を捉えたらしく、ノックアウトしていた。

「素晴らしいだろう? 長年の研究の成果だよ、私の身体能力は人間をとうに超え、進化した。大神家の強靭な遺伝子を元に造り上げた強化細胞なんて代物さ」

その言葉を耳した大神が今度は切れた。
それもそのはず、そのために家族は殺され、大神1人絶望のどん底へと追いやられたからだ。
童子も同じように、家族全てをこいつ等に殺されている。
しかし、身体能力などの強化が目的ではない、天才を作るための材料、薬の製造用として殺されたのだ。
何故2人が生き残っているかは簡単な推測では、絶望と言うストレスを与えればどれだけでも才能は成長するからだ。

「テメェ! いい加減にしろッ!」

容赦ない大剣の攻撃に襲われようともそいつは顔色一つ変えずに避け続け、反撃の一撃でだけでは足りなかった物の、3回の攻撃だけで大神すらをも仕留めた。

「クソッ! 殺しはしたくなかったんだけどねぇ、後輩のは面倒見るのは先輩の役目だ、取り合えず、君——…」

ドン!と言う銃声と共に何人もの武装兵が窓から投げ込まれた。

「そうだな、助けてやら無いとな」

桐嶋達が、武装兵数人を吹き飛ばし、扉を開くと真っ先に津堂に銃撃を浴びせる。

「やっと援軍が来たか、待ちくたびれたぞ」

「言うなよ、神狩。こっちだって結構手こずったんだ、何か雑魚が地味に強くってさ」