ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第29策  自分の死体に腰掛テレビを見る姉 ( No.62 )
日時: 2010/08/25 15:10
名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: NN.yKTYg)

「う゛……」

眼を開くと、見慣れた家の真っ赤な天井が視界を覆った。
何故真っ赤かと言うと、飛散った血がそのまま付いているからで、他にも家の中には家族が死んだときのままのように死体も、食べかけの料理も、何もかもを童子の部屋以外の部屋全てに防腐剤を撒き散らし、そのままにしていたのだ。
このまま、片付けてしまったら記憶がなくなってしまいそうで何だか怖い、そんな考えが童子の中にはあるのだが、表立った理由は証拠を消さないためと言い、正直強がっているだけだ。
童子の居たのは見慣れた自分の部屋のベッドの上だ。
起き上がると童子に周囲の景色も視界によく映る。
恐らく、部活メンバーの誰かが運んでくれたらしい。
ふと気が付くと、下で水の流れる音がずっとしている。

「何で水道が繋がってるんだろ? 全部契約切ったハズなのに……」

そう思い、階段を音もなく飛び降りると、今度は居間でテレビの音がする。
何だか、懐かしいな……。
ついているテレビは、時代が古かったので型も古く、今はもう放送が終っているハズなのだが……。

「誰か居るの? 出来ればそこは入らないで貰いたいんだけど」

そう言いながら居間に入った童子は扉のレールにつまずいて転んだが、その後直ぐに顔を上げて絶句した。
姉が……死んだはずなのに何故ココに!

「ハハハ、相変わらずだね、童子。久しぶりだね、どうしたの? そんな呆けた顔して、死んだ姉が生きてちゃいけないの?」

その言葉を聞き、その姿を見て完全に言葉を失った。
姉が、姉の死体の上に腰掛けてテレビを見ていたのだから。
ゆっくりと童子の口から言葉が吐き出される。

「何でココにいる?」

「ココは私の家でもあるのよ、あたしが居ちゃいけない?」

そんなことなど、聞いていない。
何故生きているのか聞きたいんだ、何で……?

「どうして生きてるの? って顔してるね、良いでしょ、この体。年をとらないし、病気もしない、骨を折っても砕いても、今の段階では1時間あれば完全に復元できる」

まさか……そんな……。

「アンタは……向こう側に付いたのか」

「ええ、そうよ。この死体もクローン殺しただけのダミーだし、今のあたしの体も1回取り替えてる。津堂なんて三下は未完成品よ、あの男の欲望丸出しの所、あたし苦手なのよね。じゃあ、あたしは仕事があるから戻るわ」

その言葉と同時に、姉はその場から霞のごとく消え、そこから紅いビー玉のような物が大きさに似合わぬ大きな音を立てて床へと落ちた。