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第30策  自分の墓に腰掛ける兄 ( No.63 )
日時: 2010/08/26 14:06
名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: NN.yKTYg)

ギシ……ギシィ……
床がきしみ、誰かが歩いてくる音がする。
馬鹿な、俺以外にこの家には居ないのに……、誰がこのボロ家に?
そういえば、そもそも誰が俺を家に運んだんだ?
まさか、童子……?
ボンッという音を立て、氷の顔は真赤になった。

「おーおー、我が妹ながら純情なんだなー。想像でコレとは……」

黒い影がベッドで横になっていた氷の顔を覗き込んだ。
思わず俺はベッドから飛び上ってそのまま浮き上がり、天井を蹴り飛ばして加速、言われた事に対する怒りも含めてそいつに突っ込んだ。

「あぶねッ! 何するんだよ氷ォ〜殺す気か? まあ、その気だったんだろうケドさ」

そいつは攻撃を避けると、俺の腕をもの凄い力で掴む。
動けない……!?

「誰だよ、お前!」

「誰って……酷いなぁ、お兄ちゃんの顔を忘れたのか? 兄の顔を忘れるなんて、思いもしなかったよ?」

大神……炎!

「何しに来た! 死んだはずだろ、お前は墓に埋まっているハズだ!」

ソレを聞くと、炎はケタケタと笑い始めた。
可笑しくてしょうがない、そんな感じだ。

「俺が死んだって? まあ、確かに世間的には死んだな、クローンが代りに。それで、今居るのがホンモノ、墓に埋まっているのは偽モンだ」

「それならどう見ても敵だな、俺を殺しにでも来たのか!」

ソレを聞いて、再び炎は笑う。

「クックク……、有りえねー! 俺がお前を殺すって!? 冗談も大概にしてくれよ、殺すわけねぇじゃん。それよりも、お兄ちゃんは妹が俺なんて言っているのに驚いたよ、言葉使いはもう少し——…」

「お前の知った事じゃない!」

そう言い、手を掴まれたまま、飛び蹴り。
見事直撃したはずなのだが、当たったという感じどころか実体に触ったという感触すらない。
いったい、どうなっている!?

「お兄ちゃんはジョーカーで働いてるんだ。一個忠告に来た、ジョーカーには関わるな、死ぬぞ」

その言葉と童子に、氷を捕まえていた手が完全に消え、床にビー玉のような玉が大きな音を立てて落ちた。

「まあ、気を付けてくれよ」

窓の外から声がする、慌てて窓から外を見回すと、兄は自分の墓に腰掛ながら手を振ると、その場に溶けるようにして消えた。