ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第3策  追い詰めるにはまず頭を使え ( No.8 )
日時: 2010/07/27 10:54
名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: aeLeTDX9)

部活動の募集はこの学校の入学式から始まり、6月に締め切る。
何故かと言うと、犯罪者捕獲資格であるスイーパーライセンス取得のための期間であり、それ以降の期間は学校の理事会が許可を出していないからである。
そのため部員が少なく、理事会に掛け合ったこともしばしば。
理事会の権限は強力で、生徒はもちろん楯突く事などできないが、我等が口先の魔術師よろしくの部長が理事長を1時間かけて説得したことで、今年中にSSクラスの犯罪者を2人捕まえられたら何時でも資格取得を行って良いと言う条件の元に今部員達は燃えている。
ちなみに、書記の全我はスイーパーライセンス無しのド素人なのだが、部長の協力と言う名義での活動をまれに行うらしい。
その時の破壊力は町一つを軽く粉々にして海に沈めると言う伝説まで出てくるほど強大な物らしいが、真偽の程は定かではない。

「あれ?そいえばφは誰を追ってるん?」

部長が軽くふんぞり返りながらイスに座って横でせっせと記録を取っている全我に聞く。
純、全我はお前の奴隷じゃないぞ。

「確か……A級犯罪者毒トカゲ追ってましたよ。今日は証書と賞金持って帰るといって息巻いていましたわ」

この物語の数少ない女らしい女の子キャラなので喋り方にとやかく言うのは止めてあげて欲しい。
確かに、その言葉通り裏路地をいつもの2人が逃走者を追いかけていた。

「待て、この……ドタンチンがァ!」

路地の影から汚い言葉と共にその言葉の5倍くらい凄い蹴りが逃走者の背中に直撃、背骨が折れる音と共に逃走者は跪いた。

「おら、逃げんなよ!逃げようとでもしたら今度は背骨じゃなくて……首を砕くぜ?」

その暴言少女の横からビビリ少年がチョコンと出てきて倒れている逃走者を調べるように一見する。

「大神さん、偽者です。見事です、今の……」

前のめりに倒れた逃走者を持ち上げると腹が裂け、何かが中から出たかのような跡が残っていた。

「逃走方法。シリコンですよ、人体スーツです」

「このバーたれ!そんなことに感心している暇があったらこの残りから逃走ルートを洗え!」

「はッ……ハイィ!」

相変わらずのビビリだがまあコイツに出来ない事は無い。
特に、ゲームじみたこんな楽しい犯罪者追跡作業は!

「底のゴミ箱を使ってそのビルの窓から中に逃げ込んだらしい、汚れてる。それに、底の窓の下に丁度よくゴミ箱なんて置かない。猫が入り込みますからね」

その言葉通り、窓の下にゴミ箱。
そして、窓は開いている!

「追い詰めるぞ、童子!」

「分かりましたよ、大神さん。ボクの方が鼻は聞きますが、多分大神さんの運には負けますよ?」

「上等!」

ビルの1階正面から普通に入った童子に対し、大神は小柄なため窓から侵入。

「二手に分かれて追う作戦なのだが、今一的の顔は分からない上に変装の天才である敵を取り逃がしてしまった。ナレーター風に言うとこんな感じか?」

部長がイスに座りながら結果報告を聞く。
そう、Aクラス以上になると結局は何かの天才である可能性が飛躍的に伸びるのだ。
今回は変装の天才、手配書は名前こそ同じだが、写真は男だったり女だったりまちまちな上、身長まで違うと言うこの技術!

「はい、スイマセン部長」

童子が申し訳なさそうに誤る。
だが、申し訳なく謝るべきはこのいい加減な手配書を世に送り出した元であろう。

「君が謝る事は無い。そいに、Aクラスなんて1年に1、2人しかつかまらないで?今捕まえてもうたら1年分の運の半分近く使ってまう。そう考えんとやってられへんやないか?次は追い詰めるにはまず頭を使おうな」