ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 第37策 金色の人影 ( No.80 )
- 日時: 2010/09/01 14:59
- 名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: NN.yKTYg)
化け物との戦闘から数分、今は街中をバイクで疾走し、次のターゲットを探している。
だが、そうも簡単にはターゲットも顔を出してくれないのが現実で、今も神狩さんからの情報待ちだ。
はっきり言って、この時間が一番暇で、さらには眠い。
「オイ、童子。爆発音が聞こえないか?」
大神の言葉に反応し、周囲に耳を澄ます。
車の音などにまぎれて聞き取りづらいが、確かにどこか遠く……そんなに遠くない、近い!
「大神さん、近いで——…」
あろう子とか、その言葉と同時にビルを人間が突き抜けて行くと言う漫画じみた光景を目の当たりにした。
飛んでいくのは紛れも無く人間で、童子たちの真上を飛んでいったせいで血の雨が服をぬらす。
それを追うかのように、太陽を反射して金色に光る人影がビルとビルの間を飛び越えて走っていった。
「何事だ? 童子、追うぞ、しっかり掴まってろよ!」
そう言うと、反対車線へ出て人影を全速力で追った。
その影は、人とは思えない速さでビルとビルの間を飛び回り、弧を描き飛んでいった相手をつかむとまた投げ飛ばすと言う、わけの分からないことを繰り返している。
「大神さん、上です!」
童子の言葉に反応し、バイクの真上にあった影が消え、代わりに吹っ飛ばされていた人間が落ちてきた。
「おい、大丈夫——……なわけないか」
その言葉の次の瞬間、大神を何者かが吹っ飛ばした。
そいつは、手の中で鮮やかな緑色の液体で満たされたビンをクルクルと回している。
そいつは金の長髪で、黒と錯覚させるような青い目が2人を地面に縫い付ける。
殺気も何も、まったく感じないのに!
「考えたね、魔力の運搬を複数で行って、なおかつヤバくなったら体に取り込むなんてさ。あっちで抽出するの? 耐性が無かったら2分と持たずに死んじゃうよ——…あれ?」
そいつは、大神の持っていた手配書を拾い上げ、まじまじと穴の開くほど凝視し、首をかしげる。
それにつられて、童子も首をかしげた。
たった今落ちてきた奴は、その手配書の人間と同一人物にしか見えない。
目と鼻の関係で考えると、そっくりどころではない、まったく同じだ。
「君たちも魔力を狙ってるの? まだこの時代には早いんだけどな、君たちみたいな人。まあいい、人違いだったよ、ごめんね。そっちのこは怪我、治しておいたから、じゃあ」
そういうと、そいつはビル裏口の開いているドアの戸をわざわざ閉めてからドアに見慣れない形に鍵を刺し、ドアノブを回して中に入っていった。
それと同じタイミングで、大神がケロッとした顔で起き上がった。
怪我は、どこも無く、骨が折れているというようなことも無いらしい。
あいつは……何だ?