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Re: 守護者と少女と絶望と ( No.10 )
日時: 2010/08/07 18:19
名前: 月兎 (ID: QuEgfe7r)

第三話「誰?」

「ここですよ、本当の荊様とは初めまして。」
声の方を振り返るとそこには優しく微笑む青年が立っていた。

「カイリ…?」
はじめてだ、私は会えなかった。
普通の人間だから、普通の二重人格者だから…

「そうです、俺はカイリ…灰李ですよ」
突然眼から涙がこぼれ始める。

そうだ、私の話をしよう。

孤独で愛をしらない哀れで傷ついた私であって私ではない誰かの話を。

「灰李は私がわかる?彼女ではなくて私が」
荊という私の中の違うイバラ。
彼女は狂っていた、嫌…私が狂ってたからもっと狂ったもう一人の自分が生まれたのかもしれない。

「ええ、もちろんですよ俺は貴方の守護者ですから」

守護者—

聞き慣れない言葉が耳にはいりこんでくる。

「守護者…?」
こんなにも長時間イバラが出てこないのは初めてだった。
私のことをのっとって好きなように動き始める。

それでも私にとってはただ一人の友人なのだけれど—

「荊様はしらないのですね…無理もないです。紅様ならわかると」

「紅?」
それもまた聞き慣れない名前だった。
だが分かる気がする…いや一人しか思い至らないのだ。

「それはもしかしてもう一人の…私のこと…?」
そうだ、私は彼女で彼女は私だから。

「そうです、紅様はご自分で御名乗りしました。私の名前は丑宮 紅と…」

ああ、そうか彼女にも名前があったんだ。

勝手に同じ名前で呼んでいたけれど、彼女と私は同じだけど違うのだ。

なんか残念だなァ—