ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 守護者と少女と絶望と ( No.6 )
- 日時: 2010/08/06 15:01
- 名前: 月兎 (ID: QuEgfe7r)
第一話 「つまんない」
「つまんない」
少女はその言葉を今日もまた繰り返した。
いない誰かを罵るように、冒涜するように、心底嫌悪な顔で吐き捨てる。
「あああああああ、やることない、することない、何もない、私は無い、誰も無い」
呪文のようにいくつもの言葉の羅列を並べ、その少女—廻夢 荊—は苛立たしそうに隣に置いてあった片目のボタンが外れたクマの人形を思い切りドアに叩きつけた。
ドスっと人形が落ち、荊のいる部屋もしくは家が静寂に包まれる。
「貴方もそう思わない?ええ、そうよ、つまらないの何もかもが、世界が、自分が…ね。」
またいない誰かに語りかける荊。
精神異常者だと誰もが眼を疑うだろうこの光景、後に彼女は本当に現実を創り上げてしまうのだから。
「あぁ、貴方はいいわねカイリ。いつでも笑ってて、そんなにこの世界は楽しい?」
荊の周りではもうすでに違う空間が広がっている。
何もかもに失望し、意味をなさなくなり『つまらない』を言い続けた荊という少女は何の力が合ったか、いやそんな非現実なことは言わないが…何が合ったか突然想像上の相手と話しだす。
不気味—
この言葉に限るだろう、普段の彼女は普通の女子高生でいつも笑っているようなそんな少女なのである。
いや、そう演じているのだ。
彼女の部屋は何の飾りもない女子高生の部屋とは思えないほどに殺風景である。
それも彼女には人形のいっぱいなメルヘンチックな部屋に脳内で変換され、眼に映るものは現実とは違って見えた。
彼女自体がもはやこの世界を生きる『現実』世界を生きる、『日常』を暮らすものではないかのような—
「、、、つまらない、もう学校には行かない。だっていっても意味はないもの。なんで私があんな所へ行って必要でもないことを無駄に頭へ入れ込んで、ストレスを作らなければいけないの?」
突然話を変えてペラペラと語りだす。
彼女の目の前にはカイリという想像上の人物が相槌でもうちながら聞いていてくれてるのだろうか。
「無駄が多いのよ此の世は、まぁあの世なんかいったことないから何とも言えないけれど一つだけ言えるのはやっぱり此の世はつまらないということよ」
結局つまらないということでおさまって、またこのお話は途中で終わった。
その後すぐに荊は言うのだったが
「そうね、そうよ、あの世ってどうなのかしら?つまらなくないのかしら?ああ気になる、あの世が愛おしい!死が待ち遠しい!!…待ってる暇は無いわ、死んでみましょう、私はあの世を愛してるから」
恐ろしいことを夢見る少女のように眼を輝かせながら、手を大きく広げながら自分に言い聞かせ机の中からおもむろにナイフを取り出すと愛おしそうに胸元に引き寄せる。
「愛してる、愛してる、愛してる、私が愛せるのは私の宝物と存在しないものだけ!!なんて美しいの、脆いところも美しい」
満面の笑みで言いだすかと思いきや冷酷な瞳で今度は物騒なことを、人間の冒涜を始める。
自分も確かに人間なのに—
「それなのに人間は美しくない、脆いのに、愛せない、私は人間は絶対に愛せない、でも愛してほしいわ!私は愛を感じていなければいけないの、ああ…誰かもっと私を壊して!狂わして!愛してよ!!」