ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Are you detective? ( No.3 )
- 日時: 2010/08/03 11:40
- 名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)
#02 現場調査
早稲田大学、オカルト研究会室。
ここは別名、暇人の溜まり場という名を持つ。
栢世 名残(カワセ ナゴリ)はその暇人の溜まり場にあるソファーで仮眠の時間を過ごしていた。
しかし寝ようにも東京の暑さではその行動は無駄となる。
暑過ぎて寝れないのである。
汗で頬に張り付いた黒髪が余計に名残を苛立たせていた。
右目に付けられた眼帯に汗が染み込む。
「暑過ぎる。冷たいお茶が飲みたい。出来ればお〜○お茶が飲みたい」
呟いてもお茶が歩いてくるわけはない。
仕方なく近くのコンビニへ向かおうとソファーから立ち上がった。
その刹那、
激しい音と共に流れ込んでくる人間。
その騒がしい光景に眉を寄せる。
「た、助けてくれ……」
今自分の目の前で助けを請う人物に名残は見覚えがある。
いつも何かしか事件を起こし、その度に自分を頼る。
この暑く苛立たしい時期に最も見たくない人物。
同期生の木枯 泰斗(コガラシ タイト)だった。
「……泰斗、今度は何だ?」
とりあえずソファーに座らせ落ち着かせる。
「あのさ、最近噂になってる廃ホテル、分かるか?」
廃ホテル。
その単語を聞いた瞬間、名残の目がカッと見開かれ泰斗を睨む。
「お前はまた、そんな所へ行ったのか!! 馬鹿が!!」
額に青筋を浮かべ、怒鳴る名残。
その姿は鬼神のようだった。
「ち、違ぇよ。今回は俺主催じゃねぇって」
慌てて首を横に振りそう言い繕う。
「俺の、結構古いダチでさ……。ソイツが久しぶりに昔の仲間で肝試しでもしようって言い出して」
冷たい目のまま話を聞く名残。
泰斗はその視線にビクビクしながらも話し続けた。
「んで、女友達がビビッちまったから、ソイツが一人で中に入ってたんだけどよ——」
その後、泰斗は冷たい視線の中全てを話した。
「そうか、お前の馬鹿さと学習能力のなさはよぉく分かった。帰れ。もう帰って寝ろ」
俺も寝る、と一言捨て吐き、名残はソファーに寝転がった。
「お〜○お茶、缶三十本入り一箱」
ピクッと反応した名残の様子に泰斗は笑みを浮かべた。
「もし今回助けてくれたら、だけどな」
ニヤニヤと笑みを浮かべる泰斗にしてやられたと言わんばかりの悔し顔の名残。
「チッ……。約束は守れよ」
「おう!!」
◇◆◇◆
「で、ここがその廃ホテルか」
想像していただこう。
よく夏にテレビでやるホラー特集番組の廃墟。
錆びた扉に腐りかけた木。
そして重い空気。
いかにも幽霊出ますよな雰囲気が溢れている。
「こんな場所に自ら寄るお前らの気持ちが分からん」
ちらりと視線を泰斗に向ければ彼の背後にいた女性二人と目が合った。
「今回だけだ。俺が協力するのは。今後こういう場所に立ち寄るな」
そう言い捨てて廃ホテル内へ足を進めた。
「泰斗ぉ。アンタの友達めっちゃイケメンじゃん」
金髪のロングヘアーの女性がそう泰斗に耳打ちする。
「うんうん。なんかクールって感じ?」
茶髪のポニーテールの女性は頬を染めながら頷いた。
泰斗もそれをまるで自分の自慢かのように聞いていた。
「はぐれてお前らの死んだ友人に殺されても文句言うなよ」
「はい……」
三人の声が綺麗に重なった。
黙々と歩き続ける名残。
「おい、名残。どこ行くんだよ」
「黙って歩いとけ。死ぬぞ」
名残はそう言って足を早めた。
「……今からお前の友人が死んだ、最上階に行くんだよ」
少し悲しそうな目をした名残。
その意味が分からない泰斗は首を傾げていた。
「……お前らは、強盗犯なんかじゃなかったのにな」
小さく呟かれた名残の言葉は闇に包まれ消えた。
いつの間にか外されていた眼帯の下の紅い瞳が悲しそうに歪み揺れた。