ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Are you detective? ( No.4 )
- 日時: 2010/08/10 08:56
- 名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)
#03 真実①
道中特にこれといった心霊現象もなく、名残達は無事最上階、西の客室へ着いた。
汚れた壁
今にも抜け落ちそうな床
湿気で腐った木の机ともう当時の面影すらないベッド。
「うっわ。ホラー映画みてぇ」
周りを見渡した泰斗がそう言った。
二人の女も泣きそうな顔をしている。
そんな三人を無視し、名残は客室内を調べる。
そして部屋を一周し、大きく息を吐いた。
その時だった。
客室の扉の奥、廊下から聞こえる足音。
徐々に近づくその足音に名残を除く三人は青ざめていた。
「き、きっとアイツだ。俺らを呪い殺しに来たんだ。名残、どうしたらいい?」
泰斗の微かに震える声に名残は何も答えようとしない。
「おい!! 何とか言えよ、名残」
足音は扉の前で止まる。
そして扉が音を立てて開いた。
泰斗達三人は名残の背後に隠れ、震えている。
「……見ろよ」
名残は溜息混じりに前方、つまり扉を指す。
恐る恐る顔を上げ扉に目を向ける三人。
「え、なんで……」
三人の表情は情けないものになっていた。
そこに立っていたのは
あの日、死んで自分らを呪い殺すと言った
友人、実史(サネフミ)だった。
「お、お前、ささ実史なのか!?」
泰斗が実史を指差しながら叫ぶ。
「お、おう」
実史は右手を上げてそれに答えた。
いつもと変わらない顔、崩れてもいないし、死んでもいない。
誰が見ても実史は生きていた。
「ななな名残、何でコイツ生きているんだ!!」
パニックに陥った三人を落ち着かせようと名残は話し出す。
「お前らが見た、死んでいる実史は幻覚だったんだよ。よくある話だ。恐怖からそういう幻覚を見るなんてな」
名残は半目で三人を見る。
「実史は死んでいないし、あえて言うならお前らとこの廃ホテルには来ていないそうだ。ずっと家で過ごしていたらしい」
お前らに痛い目見てもらおうと俺が呼んだんだよ、と名残は言った。
「え、でも。俺らをここに連れてきたのって、実史じゃねぇか」
泰斗は再び顔を青くして尋ねる。
「……お前らをここに呼んだのは、ここにいるお前らが強盗と呼ぶ霊だ」
名残は目を扉の奥に向ける。
「……真実を知ってもらいたかったのか」
名残はそう呟き扉に近づく。
そして小さく微笑んだ。
「お前達の真実は俺がこの世の者に伝えるよ。もう、昇れ」
綺麗な、微笑だった。
泰斗らはそれに目を釘付けにされていた。
長い付き合いの泰斗でさえ、名残があんな柔らかく微笑む姿を見たことはない。
「何人の顔見てやがる。馬鹿が」
名残は泰斗の頬をつねり上げた。
「いたたたっ」
そして言う。
「今からお前らに、この廃ホテルの真実を教えてやる」
開かれた紅い瞳が真っ直ぐと彼らを見つめた。