ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Are you detective? ( No.6 )
- 日時: 2010/08/12 17:31
- 名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)
#04 先輩と新たな事件
あの廃ホテルから戻り、オカルト研究会室の扉に手を掛けた。
「……誰か、来てるのか」
中から聞こえてくる数人の若い声。
ここは暇人の溜まり場であるため、人がいるのはあたりまえだった。
しかし中から聞こえる会話は耳を疑うものだった。
「ちょっとぉ。誰か来たらどうするのよ泰斗ぉ」
「大丈夫だよ。誰も来ないって」
「そんなこと言ってぇ」
先日名残に大変な迷惑をかけたあの男の声と、
そして女特有の高い声。
「……アイツ、殺してやろうか」
昨日のことも忘れ、女といちゃつく泰斗に苛立ちを覚えた名残は勢いよく扉を開き言った。
「女といちゃつきたいなら他所へ行け!! 迷惑だ、非常にな!!」
そう言い放った名残は目の前の風景に思わず目を丸くした。
そこにいたのは、
泰斗と女ではなく、顔見知りの男。
栗色の肩までの髪に黒曜石のような黒い瞳、高い身長。
「よぉ、名残。元気にしてたか?」
早稲田大、三年オカルト研究会会長、瀬戸原 斎(セトハラ イツキ)だった。
「さすが瀬戸原先輩の声はすげぇな。名残さえ騙しちまうもんな」
泰斗が笑いながらそう話す。
「俺の声真似は世界一だ!!」
名残はそんな二人の様子に脱力しきっていた。
からかわれ騙されたことへの怒りと呆れが一気に押し寄せた。
「もう、いい。寝る。俺は泰斗、お前のおかげで寝不足なんだ。退け、ソファーを開けろ」
ソファーに座る泰斗を蹴り落とし、名残はそのまま寝転がった。
「その前に、ちょっと話がある」
さっきと全く違う真面目な斎の声に仕方なく名残は起き上がった。
「何ですか、斎先輩。手短に頼みますよ」
溜息交じりにそう言って斎の話に耳を傾けた。
「お前等知ってるか? “戻れなくなるゲーム”の話」
名残、泰斗の二人は首を横に振った。
「最近出回っているウェブゲームで、一度プレイするとゲームの中に引きずり込まれ、クリアするまで出られないってヤツ」
よくある話だった。
このゲームをやると死ぬ、二度と目が覚めない、などの怖い話はどこでも聞く。
そしてそのほとんどがハッタリだ。
「斎先輩、アンタそんなの信じているんですか?」
名残は溜息をつき目を伏せた。
「消えたんだよ。アイツ」
悲しそうに目を細め呟いた斎。
「……消えたって、誰がですか」
いつもになく真面目な様子の彼。
こういう時に彼が嘘をつかないということはここにいる名残と泰斗がよく知っていた。
「結沢 春埜(ユイザワ ハルノ)、君島 碇(キミジマ イカリ)、他にもかなりの人数の同期生が消えてる」
名残に手渡された数枚の資料。
そこには早稲田大学生徒の名前が二十五人分書かれていた。
「これが、消えた奴等の名簿か」
目を通せば、話したことのある人物の名もあった。
しばらく沈黙を続けた名残は、資料を机に置き言った。
「仕方ない。先輩、これ借りになりますからね」
つまり協力する、という意味だ。
「ありがとな、名残、泰斗。俺は、この事件は霊関連だと考えている。名残の力が必要なんだよ」
名残の眼帯のついていない黒い左目が斎を捕らえた。
「後で、お〜○お茶、奢ってくださいね」
嬉しそうに微笑み斎は頷いた。