ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Are you detective? ( No.7 )
- 日時: 2010/08/20 16:11
- 名前: 獏 ◆3/PzWcBaQI (ID: tuG0e6yh)
#06 ゲーム①
名残、泰斗、斎の三人は現在パソコン室へと来ていた。
時間は午後七時半。
人気もなく、自分達の足音だけが大きく響く。
「これだよ、これ」
斎は起動させたパソコンの画面を指差した。
「……洋館からの脱出。これが先輩が言ってた戻れなくなるゲーム、ですか?」
名残は画面を覗き込む。
画面上には特にこれと言って問題も異常もない。
至って普通のホラーゲームだ。
「この学校の生徒が多く消えているのには理由があるはずだ。これは霊以外に、もっと面倒なものが絡んでいそうだ」
名残は溜息を落とし、額に手を置いた。
「とりあえず、ゲーム、やってみるか?」
名残と泰斗はそれに頷く。
緊張が高まり、心臓は大きく鼓動する。
クリック音が室内に響き渡った。
「……特に、何も起きないじゃん」
泰斗が安堵の息を漏らした、その時だった。
突然真っ暗になったパソコンの液晶画面。
パソコン室内の電気は全て消され、何も視界に映らない。
何かを殴ったような鈍い音。
それに続き、二人の人物が倒れこんだ。
「先輩!! 泰斗!!」
名を呼ぶが答えは返ってこない。
名残は舌打ちをし、目を凝らすが何も見えないことに変わりはない。
自分にとって最悪の状況だった。
そして、
「なっ!!」
突然後頭部を襲った鈍い痛み。
意識が薄まり、真っ暗な視界が歪んでいく。
倒れそうな体を支えようとしても、手も足も力が入らない。
目の前に映った赤い髪の人物を最後に名残の意識は闇に沈んだ。
「悪いな、三人さん。ちょっと眠ってろよ」
赤髪に被せられていた黒いフードが取られ、窓から入る風に髪が流れる。
男は手に持っていた鉄パイプを外に投げ捨てた。
「良い夢を……」
◇◆◇◆
滴る水の音、
風で窓が揺れ、不気味な音を奏でる。
「……っん」
名残は頬を冷たく流れるものに気づき目を覚ました。
それが水であることを確認し、痛む頭を押さえ辺りを見渡す。
月明かりで見えたのは洋館のような豪華な部屋。
自分の横たわっていた床にも高級そうな絨毯がある。
「起きたか」
背後からの声に、名残はゆっくりと振り返った。
そこにいたのは斎と泰斗の二人。
「……無事だったか。それより、これはどうやら霊関連というより人間の仕業じゃないのか?」
痛みや冷たさは感じるが現実味が全くない。
名残は立ち上がり、腕や足を動かす。
感触そのものは現実と現実と変わりないが、恐らくこれは、
「幻覚、薬物か何かを与えられたのだろうな」
名残は至って冷静に判断した。
先に目覚めていた二人もこの現実味のない世界に違和感を覚えていた。
そのため、全員が状況を理解するのに然程時間は必要なかった。
「……人の気配は全くない。仕方ない、少し調べるぞ」
名残の後に二人が続き、
三人の姿は洋館の暗い廊下に吸い込まれていった。