ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

プロローグ的ななにか ( No.3 )
日時: 2010/08/01 06:56
名前: 津軽海峡 ◆oOzenWM0UU (ID: kIkEWl1w)

——こちらが、今話題を呼んでいるゲームの……

夕方のニュース番組で、薄化粧で好感のもてる女性アナウンサーが原稿を読み上げていた。
そのニュースを小耳に挟みながら、一人の青年がダンボールからヘルメットにサングラスを付けたような機械を取り出す。

「こんな機械がニュースで……。だてに10万はしないってことか」

青年はダンボールの開封作業をとめ、テレビ画面を少し眺めながら呟く。

2010年、最も話題を呼んだゲームといえば、誰もが口を揃えてこういうだろう——dimensional game
勿論、題名だけではどのようなゲームかは判断はつかないだろう。
ジャンルは普通の『多人数同時参加型オンラインRPG』だ。
プレイヤーはゲームで知り合った仲間と助け合い、成長していく。よくあるRPGとなんら変わりはない。
そしてこのゲームの最大の売り、それは——圧倒的なリアリティ。
グラフィックが? 音響が? いや、そのようないたって普通なことが凄いのではない。

このゲームは、自分の意識を直接ゲームの中で左右させることができるのだ。

先ほど青年が取り出していた機械は、そのゲームをやる上で必要なもの。
その機械を頭にかぶり、スイッチを入れるだけ。それだけで、誰でも自分が主人公のゲームをプレイできる。
そんな、非常に画期的なゲームである。

「……よし、これで準備はできたかな」

青年はそういいながら、ゲーム機に繋がっているコンセントをプラグに差し込んだ。
ヘルメットに付いている緑のランプが点滅し、電源が入ったことを知らせる。
それを確認すると、青年はヘルメットを頭に装着した。サイズが合ってないのか、妙にきつく感じる。
そのまま、ヘルメットを少し触ってスイッチの位置を確認すると、ONの方向へ傾けた。

(うぉっ、なんか頭がくらくらと……)

スイッチを入れた途端、急に立ちくらみの様な感覚に襲われる。
薄れゆく意識の中で、青年は最後にやるべきだったことを思い出し人知れず後悔した。

——テレビの電源、切っとけばよかったなぁ……。