ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜ZAME〜一応4話まで更新 ( No.29 )
- 日時: 2010/08/05 17:42
- 名前: 黒助 (ID: KF4wky37)
【05】
旧渋谷警察署
住宅街から離れた場所、空き地が一面に広がり、その中に悲しそうにポツンとそれは建っていた。
4階建ての旧渋谷警察署は、壁が煤で汚れ、まるで火事の後のような姿だ。
「ここで・・・いいんすか?」
あまりの不気味さに、3人は口をポカンと開けて愕然としている。
旧警察署は所々大きな穴が開いており、寒気がする風が壁を通り抜けて不気味な音をたてる。
「ここまででいいよ。連太郎、ありがとう。」
「連太郎君、ありがとう。気をつけてね。」
「2人も気をつけて。応援してるよ。」
2人は車を降り、連太郎は笑顔で手を振って行ってしまった。
翼と綾乃は、鉄の柵で囲まれた旧警察署の敷地に出入り口から入り込み、辺りを警戒する。
近くで見ると、更に旧警察署は不気味さを増した。
「ここで宝探しゲーム・・・・?」
「とりあえず行こう。」
翼は綾乃と手をつなぎ、恐る恐るエントランスに入った。
自動ドアはすでに動かず、開いたまま止まっている。
床にはガラスの破片や資料、手錠や警察手帳が散乱している。
「なんで、今警察署は廃墟になったの?」
「数年前だったかな?警察が捕まえた容疑者の遺族がここに抗議してきたんだ。その時、口論になって遺族の一人が放火。定休日だったし火も消しとめることができず、消防車が駆け付けたのは全焼した後だった。」
「詳しいね。」
「父さんが警察だったんだ。生前に聞かされたんだよ。」
2人は足を進め、不気味な空気を漂わせる廊下を歩く。
足を動かすたびに、足もとから謎の音が聞こえるが、2人は敢えて無視をした。
少し歩くと、2人は大きな部屋へと着いた。
「会議室・・・・かな?」
「なんか怖い・・・」
翼の手を握る綾乃の手が強くなる。
翼は恐怖を抑え、会議室に足を踏み入れたその時だった。
「はじめまして、姫咲と言います。」
2人は突然の声に、思わず体をビクリとさせた。
会議室の一番前の机の上に、この廃墟に似あわない服装をした女性が立っていた。
「誰だ!?」
「ミスターXの命により、宮本綾乃を抹殺します。」
「何!?」
翼はその言葉を聞いた瞬間、背筋が凍りつくような感じが走った。
それ以上に、綾乃は顔を強張らせ尋常でない震えを起こす。
「綾乃!!走れ!!!」
翼は何かされる前に、綾乃を引っ張って元来た道を走って逃げた。
「無駄なことを・・・・。頼みますよ、憂威。」
─────
「急げ!!綾乃!!」
2人は旧警察署を飛び出すと、急いで潜り抜けてきた鉄柵の出入り口に向かう。
翼はまだ体力をそこまで消耗していないが、綾乃はすでに体力の限界だった。
「よし!!大丈夫・・・・・」
翼は勢いよく出入り口の扉を開けた。その瞬間だった。
「そこまでだ!!!!大人しく止まるんだ!!」
「え?」
2人は思わず足を止める。
目の前に5台のパトカー、銃を構えた20人以上の警察官。
どうやら後をつけてきたらしい。完全に逃げ場を失った。
「そ、そんな・・・・・」
翼は目の前の現実を受け入れきれず、その場に崩れ落ちる。
綾乃は放心状態に陥り、警察をボーっと見つめている。
「捕獲だ。捕まえろ。」
指揮する水城が、2人の前に現れながら命令を下す。
そして、2人は呆気なく手錠をかけられた。
「ここで・・・・終わり・・・・・・」
連続殺人犯に陥れられ、挙句の果てには警察に捕まる。
一体、ミスターXという男は、俺に何の恨みがあるのだ?
翼はそんなことを考えながら、パトカーに入れられた。