ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 〜ZAME〜生存確率1%の逃走 ( No.40 )
日時: 2010/08/11 17:40
名前: 黒助 (ID: AidydSdZ)

【08】

連太郎に自宅に留まっている翼と連太郎は、綾乃奪還作戦を練っていた。
丸い机に2人向き合う形で、真剣に作戦を考える。

「タイムリミットは96時間。つまり、4日か。」

「相手は警察、俺らだけじゃ無理っすよ。」

確かに、ただの大学生と元不良にそんな力はない。
時間は刻々と過ぎて行く。
関東中央留置所に乗り込むのは、2人の力では無理だということを翼は悟っていた。

「一体どうすれば・・・・・」

「ん?待てよ・・・そういや、あの刑事。留置所に行ったら裁判するって言ってたっすよね?」

連太郎は、水城が車内でそう言っていたことを思い出す。
パソコンを取り出し、東京にある全裁判所の日程を調べた。

「あっ!!綾乃も裁判がある!!日にちは・・・・2日後、間に合うっすよ!!!」

連太郎の言葉に、翼は暗んでいた表情を笑顔に変えた。
それならば、留置所から裁判所へ移送している時に襲えばどうにかなるかもしれない。
もう、作戦は、進む道はそれしかなかった。

「よし!!2日後に向けて準備を始めよう!!」


──────


同時刻 東京 秋葉原


とあるメイド喫茶の前に、明らかに秋葉原と釣り合わない格好をした男が立っていた。
男は黒髪をオールバックで整え、顔は爽やかである美男子だ。

「な、何なんだよ!!」

男は辺りを見渡しながら、足を進める。
何かに警戒しながら、自身が着ている黒いコートの襟に顔を半分隠す。
その時だった。
男の不穏な空気を打ち消すように、愉快で楽しさを強調する携帯の着信音が鳴り響く。

「な、なんだよ・・・・」

男はそう言いつつ、携帯の電源を入れた。

『ZAME参加者2号とでも言っておこうか・・・。どうだい?課題は進んでいるかな?』

『てめぇ・・・秋葉原に着いた途端、変な奴に殺されかけたんだよ!!何が目的だ!!』

『君の課題はアサシンから逃げること。何なら、課題をリセットして違う課題を与えようか?』

『そ、それでいいから、もう体力の限界なんだ!!!』

男の言葉で、ミスターXは笑い声を放つ。

『分かった。君の課題は、現在捕まっている宮本綾乃の救出だ。』

『は、はぁ!?なんで他人を助けないと・・・』

『君に文句を言う権利はない。無論、任務失敗の時は妹の命がどうなるか・・・』

『っち、分かったよ!!!』


ガチャ! プー プー


男は携帯の電源を力を込めて切ると、右目から一滴の涙を流す。
彼の名前は、山本春夜。裏世界ではハッカーとして有名な彼にも、不運は訪れたのだ。
ミスターXによって仕掛けられた‘ZAME’に強制参加、大事なものは、現在入院中の妹。

「梓、お兄ちゃんが絶対に助けてやるからな。」

春夜は両手をガッツポーズにし、その場から急いで立ち去った。