ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黄昏の魔導師 - 奏猿テレプシコーラ ( No.2 )
- 日時: 2010/08/14 15:41
- 名前: 九蛍 ◆WpSnIpcg.c (ID: cRxReSbI)
第一話 「はじまりはじまりぃ〜」
ある日の放課後。
ボクこと端峰昏音(はしみねくのん)は、重いバッグを携えて下校しようとしたところだった。
「——あんた、魔法使いなんでしょ?」
ふと、背後から聞きなれぬ女子の声がした。
振り向くと、そこには髪の毛がピンク色の変態がいたので、ボクはそいつを無視し、家に帰ってやらなきゃいけない宿題などを思い出して憂鬱になった。
「はぁ……やってらんないよ、ほんと」
「ちょっとあんた、無視すんじゃないわよ! 端峰、待ちなさい! は・し・み・ね! あんた魔法使いなんでしょ!?」
ボクの名前を知っていて、かつこの図々しさから推測するに、どうやらこいつは同級生らしい。
全く、モテる男は辛いぜ——とかそんなノリじゃないな。これは。
「……魔法使い? なんのこと?」
巷で流行ってんの、それ?
「あんたのことよ。キューちゃんから聞いたもん」
「……九路(くみち)サンですか」
キューちゃん、もとより九路こと九路コルノ(くみちこるの)とは、ボクの幼馴染みで、恥ずかしながらボクの想い人でもある。——もっとも、数ヶ月まえにフラれて疎遠になるのかなあなんて悲しいことを思うも、最後に「いままで通り友達でいようね」的な言われをしたので、図々しくもオトモダチその一であり続けるのですが……
ですが、そのオトモダチのオトモダチが、一体ボクになんの用だろうか?
まあ、自分でいうのもなんだが、ボクは根暗だから、きっとオタクとでも勘違いされたのだろう。そうに違いない。
「……ボク、ゲームはあんまりやんない方なんだ」
「違うわよ! 誰がそっちの魔法使いとか言ったのよ!? ワタシは真面目に訊いてんの!」
真面目に魔法使いとか訊いてんだったら重症だ……。
「……えと、それで、ボクになんと答えろと?」
「だから、あんたが魔法使いかどうかって訊いてるんのよ!」
「違うよ」
即答した。
「ボクはただの端峰。魔法使いなんかじゃない。これでいい?」
「……キューちゃんご指名なんだけど」
「一体何があったんだ? ボクでよければ微力ながら手助けするよ」
「……」
なぜだろう。なんかものすごく呆れられた気がする。
「……いま、助けるって言ったわよね?」
「まあ、一応はそうは言ったけど……」
「お願いがあるの、ついてきて」
やだ——そう言おうとしたが、髪の毛ピンク色の変態女子に腕を掴まれて、半ば引き摺られがちに——
ボクは、小規模な世界の危機に巻き込まれるのだった。
「その後、ボクの姿を見た者は、い〜な〜い〜……」
「変なモノローグ入れてないでついてきなさい!」
「じゃあ、引き摺んなボケ! 変な髪の毛の色しやがって」
「これは地毛なのよ!」
「マジでッ!?」