ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 本好き魔女の不思議な図書館 キャラ絵描いてみた ( No.100 )
日時: 2010/10/12 21:14
名前: 白魔女 (ID: 4fZ9Hn2K)



十一話・事件


 耳元で物音のような音がして、翼は目を覚ました。見れば、もう日はかなり高く上っていた。横で、ミーナが大きく伸びをする。


「ようやくお目覚めですか、お二人とも。すいませんね、寝場所がほとんどなくて……」

 昨日は、ルーフが慌てて部屋をおおざっぱに片付けたので、半分以上の本は残っている。その本の山をかき分けるように三人は床に寝転んで寝てしまっていた。

「朝食は、出来ています。早く店に行かないと、安いものはなくなってしまいますよ」

 半ば翼は、母さんに「起きないと遅刻するわよ」といわれた気分になった。


 まだ寝ぼけ眼の状態で、のんびりと朝食に二人がかぶりついていたとき。ゴミだしに出て行っていたルーフが慌てて部屋に戻ってきた。真っ青な顔で、冷や汗で前髪が顔についている。


「ルーフ、どうかしたのか?」

 何とか深呼吸をしているルーフに、優しく話しかける。

「人が、人が——」

 そしてまた、深呼吸。



「殺されたそうなの」



 あまりにも唐突で、現実離れした言葉に、翼はすぐには反応できなかった。現実離れだなんて、今さら言えた義理じゃなかったが、人が殺されていた、なんてのはあまり普通の出来事とはいえない。それに、翼は昨日の騎士のことをまだ覚えていた。

 驚いてパンを落とした翼以上に、ミーナはまた驚いていた。

「この近く——ですか?」厳しい顔で、ミーナが聞く。

「すぐ、そこだそうです」


 翼の停止されていた脳機能が復活する。自分のすぐ近くで殺人が行われた。きっと、物語を進めて行く手がかりのはずだ。


「俺、ちょっとその事件現場まで行ってくる」

「えっ、危険で——」

「わ、私も行くわ」

 ルーフが言い終わらないうちに、ミーナもそう言い出す。

「で、でも——」何か言いたげだったが、意を決したように、ルーフも言った。


「二人だけ行かすわけには行きません。私も、行きます——」