ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 本好き魔女の不思議な図書館 キャラ絵描いてみた ( No.106 )
日時: 2010/10/31 17:11
名前: 白魔女 (ID: yjvy1BGb)



十二話・ショック


「二人とも——。一回ここを、離れましょう」


 ルーフが声をかけた。なおも集まる人ごみから、やっとこさ抜け出し、三人は近くのベンチに座り込んだ。

「どうして、こんなことが——今までこんな事件、なかったのに——」

 ルーフは本当に辛そうだった。自分の街でこんな惨劇が起こるなんて、考えもしなかったのだろう。

「ここで考えているのもなんですし、やはり家に戻りましょう。犯人がいつどこでうろついているのかも、分かりませんし。今、この街の外を出歩くのは、危険です」

 その通りだった。それに、今の翼では、自分が今どうしたらいいのかさえまったくわからなかった。
 ——なぜ人が殺された? 自分に関係のない人が、なぜ? ただの偶然だろうか。そんなはずはない。これは本だ。物語だ。物語は主人公とまったく関係のない事件など、起こるはずがないのだ。
 よくある物語では、この次の主人公の身近な人が殺されるんじゃないのか——?
 そこまで考えて、翼は自分の考えにゾッとした。そんなこと、させてたまるものか。ミーナが、ルーフが、襲われるだなんて——。

 そんなこと、させてたまるか。そうは思うが、——しかし、今の俺に一体何が出来るのだろう。こんな無力な自分に、何が——。



「——翼、翼。顔が真っ青です、家に戻りましょう」

「あ、あぁ——」
 ルーフに呼びかけられ、翼は現実に引き戻された。

「翼のせいなんかじゃないですよ。思いつめないでください。お二人は、早めにこの街を出て行ったほうがいいでしょう」
 なぜ自分の考えている事がルーフにわかったのか。翼は驚いたが、ルーフに優しく笑いかけられると、何も言い返せなくなった。


「ごめん、ありがとう、ルーフ」

「何を言っているんですか。もう」

 くすくすと笑いながら、ルーフは言ったのだった。