ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 本好き魔女の不思議な図書館 『オリキャラ募集!』 ( No.16 )
- 日時: 2010/08/03 20:26
- 名前: 白魔女 (ID: zi/NirI0)
二話・図書館と女の子
ぎいぃ……という、マンガでよくありそうな音が鳴った。これから起こる不思議なことを予兆しているようだ。
そして——それは本当だった。本当に不思議なこと翼の目の前で起こったのだから。
扉の向こうの空間は縦長ではなかったのだ。広々とした館——といったほうがいいだろう。何個かある蝋燭に照らされ、所狭しと本が高いところ並べてある。収まりきらず、床にも置いてあった。そして本棚が横に幾つも存在してあるのだ。
一回深呼吸してから、翼は扉の外に出てみた。あぁ、見間違いじゃない、やっぱり細長い。そしてもう一回中を見渡す。広い、体育館のような広さだ。
「あ、あの……」
自分でもびっくりするくらいひょろひょろの声が出た。情けない。男ならドンと行け! 翼の中の強がりな翼がそういう。そうだ、その通りだ。
「あ、あのっ! 誰かいません、か……」
最後の文字だけ弱々しくなってしまったが、いくぶん、自分の中の怖いものを追い出せた気がしてすっきりした。
無論、誰も返事をすることはなかった。そう、それでいいのだ。それで俺がそのまま回れ右をして家まで一直線で帰れば——。
「あー、どいてどいて」
翼は30センチくらい飛び跳ね——ようとしたところを手でぐいっと押された。そして目の前を黒い影が通り過ぎる。黒い影はさっさと左に行き、本棚に隠れてしまった。
恐怖心と好奇心との一騎打ち! 恐怖心が好奇心のわき腹を蹴る——おぉっと、好奇心も負けずと恐怖心のあごにアッパーを食らわせた!
勝者! 好奇心!
翼はそんな事を頭の中で繰り広げ、意を決したように足を進めた。
「あのっ! すいませ……」
問題の本棚を向き、そう叫ぼうとしたがまたしても黒い影が「どいてったら」と翼のすぐ左を通って後ろへと向かってしまった。
どうやら黒い影は女の子——しかも翼より少し年下くらいの子で、手には何冊もの本を持っていた。どうやら片付けをしているらしい。
問題はその姿だ。黒いトンガリ帽子はぶかぶかのようで、横にずれてしまっているし、体にはまたぶかぶかのマント。大きすぎて床についてしまっている。
ぽかんとしている翼の目の前で、女の子は黙々と本を棚に並べていた。一回顔をあげ、翼の顔を見たが、また作業に戻ってしまった。