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Re: 本好き魔女の不思議な図書館 『オリキャラ募集!』 ( No.27 )
日時: 2010/08/05 20:31
名前: 白魔女 (ID: zi/NirI0)



「あの……」今度はすんなりと言葉が出た。相手が自分より年下だったからだろう。それでも敬語ははずせなかった。

「ここで何しているんですか?」


「何って」女の子は顔も上げず、ただ笑ったように、「図書館の整理だよ、仕事だからね」と言った。

「仕事——図書館の——」

 翼がぼんやりと言葉を繰り返したときだ。いきなり女の子がばっと顔を上げた。まるで、その時やっと翼がそこにいるということに気づいたかのようだった。


「ま、まさか!」

 だだだっと、マントを引きずりながら女の子はぐいっと翼の顔まで迫った。拍子に何冊かの本を蹴飛ばしてしまったが、女の子は気にしなかった。


「お客!」女の子はまずそれだけ叫んだ。「あなた、お客さんね! そうなんでしょう!」

 間近で見ると、可愛らしい女の子だった。丸々とした顔に、大きくランランと光らせた瞳。背伸びをして、その顔を翼に近づけている。

「え…客、です……」

 女の子に圧倒されながら、翼は答えた。そしてしばらく経ってから、いつから俺は客になったんだろうと思う翼。


「お客さんなんて久々! 最近はあまり来なかったのよね。さぁさ、どうぞおくつろぎください!」

 女の子は翼の背中を押して、本棚の奥にあるテーブルとイスに案内した。未だに自分が今どんな状況におかれているかも理解できない。い、一体どうなってるんだ? 

 外と中が違う図書館に、この女の子——この格好、どこかで見たんだが——本? テレビ? そんなことより、大切なのは今だ。流れからして、何か——話をするのだろう。何の? ええい、もうこの際、どうにでもなれ!

「えーっと、本日のお望みは?」女の子が先に口を開いた。


「おっ、お望み?」


 どうにでもなれと思った途端、これだ。落ち着け俺、クールになるんだ。

「は、話がよく掴めな——」

 翼はハッと、そこで言葉を切った。女の子が左手をパチンと鳴らしたかと思うと、そこになかったはずの、紅茶を注ぎ込まれたティーカップが現れたのだ。

「はい、どうぞ」

「どっどうも」

 ——今のはきっとあれだ。手品。客を喜ばせ云々で、この女の子は手品が出来るのだろう。

「あら、もしかしてお客さん、この図書館初めて?」

 もしかしても何もあるか——と思っているなんて、微塵も思わせない口調で「はい、そうです」と言った。この女の子は手品師なのだろうが、あまり挑発的になるのはよそう。

「あら、じゃあこの図書館が何なのかもわからないのね?」

 図書館が何なのか? 一体何の質問を? 本格的に頭が痛くなってきた翼。


「ここ——この図書館はね、“魔法の図書館”なのよ」