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Re: 本好き魔女の不思議な図書館 『オリキャラ募集中!』 ( No.37 )
日時: 2010/08/07 22:41
名前: 白魔女 (ID: zi/NirI0)



 女の子が——翼より年下くらいの女の子はいつの間にか、翼と大して変わらないくらいの少女になってしまったのだ。茶髪の髪をなびかせ、少女は先ほどの女の子より大人っぽい声で言った。「私は魔女・ティア。よろしく」

「お——俺は」とっさに翼も言った。「俺は翼」

 翼は何かのステージでも見てきたような気分になった。あんな幻想的なものを魅せられたのでは、信じられるものも信じられなくなってしまう。いっそ夢だと思おう。本当に夢かもしれない。だって——信じられないじゃないか。


「信じてもらえた?」いたずらっ子のような笑みを浮かべ、ティアは言った。

「え…あ…無理」すんなりと本当のことを言ってしまった。しかしティアはクスクス笑った。

「まあ、信じようと信じまいといいんだけどね。
 ここは魔女の管理する魔法の図書館。何千冊の本にも、不思議な魔法がかけられている」

 ティアは詠う様にそう言った。少しばかり、先ほどの女の子の口調と違っている。声のせいもあるだろうが、落ち着きをはらっていて、透き通るような声はとてもキレイだ。

 翼がぽかんとしていると、図書館から、透き通るような歌声が聞こえてきた。



——さあ、私達の声を聴いて


——あなたの本を手に取りなさい


——あなたの選んだ本を、その手で開きなさい



「こっ、これは……?」

「これは本の声。目をつぶって、翼」

 ティアに言われるがままに、翼は目をつぶった。胸の高鳴りを抑え、翼は深呼吸をした。

 魔法だの、魔女だの、本の声だの——よくわからないことばかりだが、それでも、悪い気はしない。そう、はっきりと言ってしまえば、この胸の高鳴りはきっと——。

「さあ、じゃあ目を開けて」

 そういわれ、翼は恐る恐る目を開けた。すると自分の手に、なかったはずの本が一冊、おいてあった。重さにも気づかなかった。一体、いつの間に? 古めかしい表紙に、どこかの王国の城と、女の子が描いてある。なんだ、これ——?


「それがあなたの本よ。このあとすることはあと一つ。

 さぁ! その本を開いて!」


 待ってなんていう間も与えず、ティアは翼の手を掴み、本を開かせた。少し開いただけで漏れてくる明るい光。わっとその光が翼とティアを包み込んだ。翼は自分の体が宙に浮くのを感じた。他に感じるものといえば、自分のほうを撫でる優しい風と、ティアの温かい手。

 抗う事も、恐れる事も忘れたように、翼はその光の中で目をつぶった。ここはもう、話の流れに身を任せよう、と——。