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- 第二章——悪魔と正義と翼と—— ( No.45 )
- 日時: 2010/08/09 12:52
- 名前: 白魔女 (ID: zi/NirI0)
第二章——悪魔と正義と翼と——
一話・皇女・ミーナ
私は、聡明で、美しく、立派なお母様が大好きだった。完璧なお母様を尊敬し、お母様のようになりたいと思っていた。
お父様は、私が小さい頃になくなってしまったから、国王であったお父様をついで、お母様が女王としてこの広い国を治めていた。たった一人で、国と、私を守ってくれていた。
だから、私もお母様のようになろうと、たくさんの勉強をした。将来、私がこの国を治めるために。
それは、満月の夜のことだった。
私は真夜中に目を覚まし、となりにお母様がいないことに気がついた。どこに行ったのだろうと思うと同時に、広い寝室に取り残された恐怖が私を襲った。まるで、暗闇に一人置いていかれたようだった。
温かい布団から抜け出し、私は寝室を出た。暗い廊下。私は蝋燭を片手に、暗い城を歩き回った。
広い城に、私の足音だけが響き渡る。メイドや、城の者が見当たらなかった。この城には、私以外の者がいないんじゃないか、と思ったときだ——。
この広い城には、私も足を踏み入れた事のない場所が何個かあった。その一つに、私はたどり着いたのだ。それは、地下に通じる階段だった。
ろうそくで照らそうと思っても、階段は深く下へ続いていて、先は真っ暗だった。しかし、なぜか私には、きっとお母様はここにいるという確信が芽生えていた。大好きなお母様。今、行くからね。
意を決し、薄暗い階段を一段一段慎重に降りた。
降りても降りても先が見えない。段々とあせりと恐怖で心臓が激しく高鳴り始めた。早く着け、早く着け、と足が速まる。
一体私はどれくらい降りたのだろう。地球の中心部まで来たんじゃないかと思うほどだった。しかし、目的地に着いたのだ——私の目の前に、一つのドアが現れた。
ドアの向こうから、光と、話し声が聞こえる。お母様だ! そう思い、私はドアノブに手をかけようとした——が、もう一つ、低い声が聞こえた。
「いいんですね——? 後戻りは、出来ませんよ」
「えぇ、私に捨てるものなどありません。さあ、早く!」
お母様の、凛とした声。しかしそれが、いつもとは違かった——。