ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 本好き魔女の不思議な図書館 『オリキャラ募集中!』 ( No.50 )
- 日時: 2010/08/09 21:51
- 名前: 白魔女 (ID: zi/NirI0)
気がついた時には、私はもう部屋の中に入ってしまっていた。驚いた拍子に開けてしまったらしい。呆然とする私に、唖然とするお母様。そして目を細める男——。
私は目の前に飛び込んできた光景に息を飲んだ。お母様と話していた男を見て、私の足が恐怖でがたがた言い始めた。周りには城の者が部屋を、二人を取り囲んでいた。
——知ってる、この光景。本で見たことがある、これは、これは——。
「ミーナ……何故あなたが」
「お母様、お母様——なんで、どうして——」
「ミーナ、私の話を聞いて」
それは、私が悪い事をしたときに向けられるまなざしだった。お母様のいう事はすべて正しいから、私はお母様の話を素直に聞いていた。お母様が好きだったから。
しかし——今となっては信じられない。
周りにいる城の者たち。私といつも遊んでくれたメイドも、輪の中にいた。知ってる顔もたくさんあるのに、今となっては皆恐ろしい。
「ミーナ……」
お母様が一歩近づいた。そして私が一歩退く。
「来ないで!」部屋に、私の悲痛な叫びがこだました。
「どうしてお母様、何でこんなことを——」
信じたくない、お母様のことが好きだから。
「話を聞けば、ちゃんとわかるから……」
言い訳なんて聞きたくない。お母様のことが好きだから。
私にとって、お母様こそが正義だったのに。
「大人っていうのは、こういうことなのよ——」
「何よ、そんなの! お母様は言ってくれた。悪には負けちゃいけないって。悪は憎むべきだって!! お母様がそう言ったのに!!!!」
「それが、大人ってことなのよ!」
ずるい。
そうだ、いつもそうだ。何か悪い事をしたときは、いつも「大人だから」と逃げて。
そうだ、お母様はいつも言い訳ばかり。何かとつけては自分は悪くないと言って。
オカアサマハ、セイギナンカジャ、ナカッタンダ……。
「嘘つき」
私はその時、初めて裏切られた——一番信じていた人に、裏切られた——。
お母様の顔から動揺が消えた。冷たい、冷酷な顔になって言い放った。「この子を捕らえなさい」
城の者たちが、私に襲ってきた。私は周りのものすべてに裏切られたのだ——。
必死の思いで私は階段を駆け上った。あっという間に上についたかと思うと、薄暗い階段から何本も手が伸びて来る。
私は城を飛び出し、暗い森を駆け抜けた。追っ手の足音が、絶えない——。
——私はお母様が、大好きだった——。