ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 本好き魔女の不思議な図書館 『オリキャラ募集中!』 ( No.55 )
- 日時: 2010/08/10 19:59
- 名前: 白魔女 (ID: zi/NirI0)
二話・謎の少年
ドタッと耳元で音がしたかと思うと、体に衝撃があった。あいたたと上半身を何とか上げる。そして翼は目を見張った——芝生に、木、青空。図書館と打って変わって、色鮮やかな色彩の風景が目に飛び込んできたのだ。
どこかに頭を打ったのだろう。翼はもう一回寝そべり、目を閉じた。色々あって、頭がこんがらがっているんだ。頭を休めよう——つまり翼は現実逃避をしたのである。
聞こえてくるのは、鳥のさえずりと、風の声——にまぎれて、足音が聞こえてきた。段々と大きくなってくる。
「何だ? ——うわっ」翼は悲鳴をあげた。寝そべっている翼の体の上を、何かが通過したのだ。
「——ん? あ、わりぃ」
「悪いと思うのならまず足を退けてくれ……」
翼の腹を上手い具合に踏みつけた人は、腰まで伸びた深緑の綺麗な髪を後ろで縛っている、翼と同い年くらいの少年だった。見下すように翼を見ている目は、右が碧で、右目に眼帯を着けていた。黒いローブの下から覗かせる肌は、病的なまでに色白だ。
「こんなところで昼寝か。楽しい?」
「いや……昼寝じゃないし、楽しくもないよ」今身をもって実感したし。
「見慣れない顔だな……この本でも、他の本でも見たことなあ」
じろじろと翼の顔を眺め回す少年。整った顔立ちに白い肌と碧い瞳が相まって少年は不思議なオーラを身にまとっていた。
「俺は梗だ。傀儡原 梗」
「俺は翼だよ」
ふーん……と梗がうなづく。そして手をぽんと叩き、言った。
「あ、お前、ティアんところの客か」
「……っ!? ティアのこと、知ってるのか!?」
「知ってるも何も、なあ……」
言葉を濁す梗に、翼は詰め寄った。
「ここはどこなんだ? と、図書館は? 一体——」
「あー、もう! うるさいなあ、黙れ!」
碧い目が一瞬煌めいたかと思うと、翼の体が宙に浮き、そして三メートルほど吹っ飛ばされてしまった。
「俺は忙しいんだ! 客の相手なんざしてらんねえよ」
そのままスタスタと行ってしまう梗。そしてふと足を止め、振り返った。
「この本はやめた方がいいぞ。それに、ここら辺は危ない奴らがうろうろしてるからな」
危ない奴ってお前だろ。なんて言ったら、次はどれくらい吹っ飛ばされるんだろうと思いながら打った腰を擦る翼。
梗はそれだけ言いたかったらしく、翼に背を向けて言ってしまった。悪い奴なのか、良い奴なのか。——あぁ、危ない奴なのか。