ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 本好き魔女の不思議な図書館 『オリキャラ募集中!』 ( No.61 )
- 日時: 2010/09/29 19:40
- 名前: 白魔女 (ID: CW87oFat)
三話・謎の皇女?
図書館に一人残されたティアは、翼が入っていった本を手に取った。古ぼけた本。
ティアはおもむろにそこにあったナイフで、自分の指先を切った。滲む血を眺め、そしてその指で本に魔法陣を描く。血塗られた本の表紙は一度光ったかと思うと、また光は消えてしまった。血の魔法陣と共に。
ティアの指先の傷はもう消えてしまっていた。ティアは本を撫でてテーブルに置くと、また作業に戻ってしまった。
「この本はやめた方がいいぞ」ったって……やめ方さえ知らないってのに、心配してくれているのか、それとも皮肉だったのか。
何をすればいいのか分からない翼はまたゴロンと横になった。無駄に体力は使わないほうがいいだろう、という結論にたどり着いたのだ。
今度は前触れもなく、唐突にだった。少しうとうとしていたので、足音が聞こえなかったのだろう。横っ腹を蹴られたかと思うと、翼の上に誰かが倒れこんできた。
「だ、大丈夫でしたか…?」
翼の上から起き上がってきたのは、セミロングでこげ茶色をした少女だった。ティアとは少し違う、気品な大人っぽさがあったが、どこか慌てているようだ。
「俺は大丈夫だけど……君こそ…」
言いかけたときだ。後ろから罵声が聞こえた。こちらには気がついていないようだ。
「皇女を探して捕らえろ! 手を焼くようなら、殺しても構わない!」
皇女——? 一体誰のことだろうと思ったが、少女の青ざめた顔を見て状況を掴んだ翼は、少女の手を掴んだ。ハッとこっちを見る少女の茶色の目には明らかに疲れの色があった。ずっと逃げてきたのだろうか。
「こっち!」
少女の手を引いて、翼は男達に見つからないように、森を駆けた。少女を追っている奴らは何人も居るようだ——コイツらが、梗の言っていた危ない奴か。
男達の声は少し聞こえるが、どうやら上手く逃げおおせたようだ。少女は疲れきっているらしい。息が荒い。
「大丈夫? 君——追われてるらしいけど——」
その時だ。後ろの茂みから音が聞こえたかと思うと、男が草むらから出てきた。翼を見、そして少女を見てにやりと笑った。コイツ、この子を追ってるやつらの仲間か——。しかし、翼が思っているより男はいい身なりをしていた。少女はたぶんどこかの貴族みたいだから、盗賊は金類を狙っているものかと思ったのだ。銀の鎧を着込んだ男は、兜を被り、言った。
「やっと見つけました……ミーナお嬢様……。お母様がご心配なされています。城に、早く——」
「あの人は私の心配をしているんじゃないわ! 自分の秘密が漏れる事を心配しているのよ!」泣きそうになりながらも、少女が怒鳴った。
男——この格好からして騎士だろう。騎士は言葉に詰まったようだ。その隙に翼は騎士の体に体当たりした。さすがは銀の鎧だが、不意をつかれて驚いたようだ。そして翼は騎士のつけていた剣を取った。武器を使わせないつもりだったが、騎士はそれを見て驚いたと同時に、さっとは打って変わって見下したような顔をした。
「クソガキが。俺に歯向かうつもりか?」
その様子にちょっとばかしプッツンと来た翼は、その鉄の剣を握りなおした。
「これでも剣道部やってるんだ! 来るなら来い!」
「ケンドウブ…? よくわからんが、剣は使えるらしいな。面白い」
すると騎士はもう一つ、短剣を取り出した。まだあったのか、と毒づいたがその瞬間、翼の頬に一筋の血が流れた。頬を探検がかすめたのだ。