ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 本好き魔女の不思議な図書館 『オリキャラ募集中!』 ( No.66 )
- 日時: 2010/08/15 17:43
- 名前: 白魔女 (ID: GGWZJyQ.)
四話・戦闘
「どうした小僧? 動きが鈍いぞ?」余裕ぶって、騎士は翼のほうに少しずつ、歩み寄ってきた。
その瞬間、恐怖がどっと押し寄せてきた。俺は、殺されるのか……? ここは本の中じゃないのか? しかし、夢の中などとはとても思えなかった。少女の手を握ったときに確かに感じた暖かな体温——そして頬の傷。
翼は神経を集中し、剣を構えた。今は、今は——ここが本の中だとか、殺されるとかそんなことより、後ろで震えているこの女の子を守ることに集中しよう、しなくちゃ——この子の手を引いたときから、もう俺はこの子を守らなきゃいけない立場になったのだ。
普段、いつもへタレキャラだけど——俺だって一応、男なんだ!
「やる気になったかのか、小僧。あろうとなかろうと変わらんがな——」
言い終わったか終わらないかのうちに、騎士の兜が吹っ飛んだ。驚いた目で翼を見る騎士は、明らかに恐怖で動揺していた。
「お前、一体何者なんだ……!?」
「一応、剣道の全国大会で一位取った者です」
翼はニコッと男に笑いかけた。騎士はちんぷんかんぷんだったようだが、逆上させてしまったらしい。あからさまに顔を真っ赤にし、短剣を振り上げた。
「クソガキィイイイ!!」
翼が剣を振った。その刹那、風を切る音が聞こえたかと思うと探検が少し後ろの方の地面に突き刺さった。
戦いはこれで終わりかと思われた。息をつこうと、深呼吸したときだ。後ろからけたたましい悲鳴が聞こえた。男はまだ武器を持っていたのだ。少女の頭に拳銃を押し付けている。
「動くなよ、小僧! 動いたらこの小娘がどうなるか……」拳銃をかちゃり、と動かす。
「その子を連れて行くだけじゃなかったのかよ!」
「うるさい! やむを得ないんだ。それが、大人っていう……」
「また大人!」
翼も男も、二人共ぎょっとした。少女がいきなり声を荒げたのだ。
「大人だからって、何してもいいと思ったら、大間違いなのよ!」
そして少女は口を大きく開けたかと思うと、男の毛深い腕に噛み付いた。男が悲鳴をあげる、その間に少女はばっと逃げ出した。しかし、銃口が少女を捕らえる。
「危ない!」
とっさの判断だった。翼は走り出し、騎士の銃を持っている腕に切りかかった——。
その瞬間、翼の目の前が真っ赤になった。男の大きな悲鳴が森中に響き渡り、そして弱々しくなり、男はばったりと倒れてしまった。
翼は一体、自分がどこを切ったのかもわからなかった。とにかく、地面に染み込む血を呆然と見つめていた。持っている剣から、血の雫が流れ落ちる。
気がつけば、翼は少女に手を引かれていた。あの男の悲鳴で他の騎士に見つかってしまいそうになったのだ。うしろで、「……大丈夫か!? 血が……返事をしろ…! …おい!」と途切れ途切れに声が聞こえた——俺は、人を、殺してしまったのだろうか——。
頭の中真っ白で、洞窟の中に隠れてまんまとやり果せても翼は何も感じなかった。