ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 本好き魔女の不思議な図書館 『連載再開!』 ( No.82 )
- 日時: 2010/09/29 21:58
- 名前: 白魔女 (ID: CW87oFat)
七話・梗とティア
パタン、と本が閉じる音が図書館に鳴り響いた。自分が今出てきた本を手に取り、梗は足を進めた。図書館の奥の部屋で仕事を片付けていたティアに、歩み寄る。
「梗、戻ってきたの。どう? 自分にかけられた呪いを解く方法、見つかった?」
「結果なんてわかってるだろ。今日はお前に聞きたいことがある」
「珍しいねえ。どんな知識でも持っている梗が、私に質問だなんて」
作業をやめ、振り返るティアは薄ら笑いを浮かべていた。蝋燭の火が、ティアの影を不気味に映し出している。
「お前……この本に魔法をかけただろ」今日は今さっきまで自分がいた本を出した。それは、翼が入っていった本でもあった。
「魔法? なんで私が?」
「それを聞きに来たんだ。ここの魔法の本は確かに魔法のおかげで本の中に入れるが、本の中で誰かを傷つけたり、傷つけられたりするのは出来ないはずだ」
梗がティアに、本を突きつける。その本には、元々なかったはずの傷が表紙にあった。
「主人公が傷を負うたびに、本もそのダメージを受ける呪いだ。そして、主人公が死んだと同時に本は消滅し——主人公は本から出れなくなる」
沈黙が、二人の間に流れた。穏やかな表情のティア。だが、目だけは鋭かった。
「俺はこの本にいるガキがどうなろうと、知った事じゃない。だが、この図書館の館長であるお前には、もしもの時に責任とやらを取る必要があるんじゃないか?」
「館長、ね——」ここでやっとティアが口を開いた。
「館長ってのは、結構退屈なものなのよ」
それだけ言うと、ティアはまた作業に戻ってしまった。梗はしばらくその後ろ姿を睨んでいたが、部屋を出ていった。本を開けるとそこには、少女と歩く翼の絵が描かれた挿絵があった。
残されたティアは、ふと顔を上げると机の上にあった写真立てに目をやった。にこやかにこちらに笑う少年が、そこには写っていた。