ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 本好き魔女の不思議な図書館 キャラ絵描いてみた ( No.85 )
- 日時: 2010/10/02 20:56
- 名前: 白魔女 (ID: 4fZ9Hn2K)
八話・迷子の翼
「なあ、ミーナ——」
「……」
「この道、さっきも通らなかったか?」
「……そうですか…?」
「それに、ここ——もう道とは言えないぞ…」
「……そう、ですね……」
歩き始めて二時間。翼とミーナは迷子になった。
迷子になっただなんて、何年ぶりだろう。しかしここは知らぬ土地。俺は迷っても当然かもしれないが、ミーナは……。
オロオロと道を探す少女を見て、翼はため息をついた。
「ナッサウは確か東の方にあるから、えーと、それで太陽が右を向いてるから——」
空を見上げたり、地面を見たりするミーナを横目に、翼は腹が減って仕方がなかった。考えてみれば、ここに来て食事をした覚えがない。まず、ここの世界の食べ物って、どんなのだろう——。
翼が辺りを見回すと、林檎のような果実が実っている木があった。ただ、色が異様なほどに真っ青だ。ちゃんと成熟してないのだろうか。それとも、元々そういう色の果物なのだろうか。
とにかく、食べてみなければわからないと思い、果実を手に取ってみる。それに気づいたミーナが声をかけた。
「そ、それ、食べれるんでしょうか……」恐る恐る、翼に訊く。
「平気だって。ミーナもあとで食べてみれば?」
そう言い、翼が実を口に入れようとした時だ。果実がいきなり横にパックリ割れたかと思うと口のようなもの出来、逆に翼に噛み付こうとしてきた。
悲鳴をあげて座り込む翼に、木の上から誰かが声をかけてくる。
「ダメですよー。このダルトの実をそのまま食べようとしたら、ダルトに丸呑みにされちゃいますからー」
「へっ? ま、丸呑み……」
すると木のツタを伝って、少女が降りてきた。手にかけている籠には、ダルトというらしい果実がたくさん入っている。どの実も少女を食べようと口を大きく開けて騒いでいた。
「ダルトは危険な果実ですが、ちゃんと調理をすればとても美味しく食べられます。薬にだってなるんですよ?」
長く白い髪を整えながら、白っぽい瞳をした少女がにこやかに笑いかけた。その瞬間、少女の瞳がふっと輝いたような気がして、翼はハッとした。
「あなた——魔術師? それとも剣士?」
「へっ?」
少女にそう言われ、翼はすっとんきょんな声しか出なかった。
「あ、ならいいの。不思議な魔法の形をした方だと思って。私は明槻 真幌って言います。ヨロシクね」
何を言っているのか翼には、そしてミーナもわからなかったが、とにかく握手をしようと、手を伸ばす。
「ヨロシク、真帆さ——」
「でも、ルーフって、呼んでくださいね」
その台詞にはどこか、絶対的な何かがあるように感じられ、翼もミーナも少しばかり硬直したのだった。
そんな二人を知ってか知らずか、ルーフが明るく話しかける。
「旅の方ですか? 道に迷っているのなら、私の住んでいる近くの町まで行きませんか?」
ガバッと、ミーナが顔を上げる。
「い、いいんですか!?」
もちろん、翼も同じ気持ちだった。
ルーフはまた、にこやかに笑いかけた。
「はい、もちろん。よろしければ、私の家に来てくださいな」