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Re: スパイは荒事がお好き—スパイ募集— ( No.20 )
日時: 2010/08/10 18:18
名前: agu (ID: zr1kEil0)


パリ郊外の物資集積所。

そこに一台の自動車がやって来た。

道なりに走っていた自動車は、集積所前に設置された検問で止まる。
検問所に詰めていたドイツ軍兵士が、確認の為、自動車の側に寄った。

兵士は運転席の窓ガラスを叩く。

スモークガラスが少しずつ下げられ、おぼろげにしか見えなかった輪郭が段々と明確になっていく。


軍帽からちらりと見えるトウヘッドの髪に、碧い目。
シャープな感じの顔は、どこか子供の無邪気さを感じさせた。

彼は書類を取り出し、兵士に突きつけた。

「アプヴェーアのリッターセン中尉だ。他に3人乗せている。詳しくは書類を見てくれ」

兵士は突きつけられた書類を戸惑いながらも、受け取った。
別のドイツ軍兵士が近寄ってきた。軍曹の階級章を付けている。

兵士、軍曹はチラリとトウヘッドの男の階級章を見て、問いかけた。

「中尉殿。ここには何の御用でこられたので?」

トウヘッドの男は顔を顰める。

「軍曹、私はアプヴェーアだ。そして君の部下が今持っている書類には、ハンス・オスター長官直々のサインが書かれている」

彼は一度、言葉を切った後、言った。

「これは非常に重要な任務だ。詳細は話すことは出来ない。分かるだろう?」


軍曹は強張った顔を兵士に向けた。
兵士は青い顔をしながら書類を指差し、頷く。

軍曹は最敬礼をしながら言った。

「失礼しました、中尉殿」

トウヘッドの男は微笑しながら言った。

「いい心構えだ、軍曹。君は出世するぞ」

彼はスモークガラスを上げると、アクセルを踏む。
自動車は敬礼している軍曹を残して、走り去っていった。