ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: スパイは荒事がお好き—スパイ募集— ( No.49 )
- 日時: 2010/09/03 18:50
- 名前: agu (ID: zr1kEil0)
ゴードンを見下す、大男。
彼は仰々しく、重苦しい声で言った。
「君が……ここの司令官か?」
謎の大男の突然の訪問に、気が動転していたゴードンだったが、
はたと気がついたように顔を挙げる。
「ああ、君達はなにも……」
そう問いかけた所で、彼は目の前に佇む大男の衣服に気が付く。
(将校用の軍服……階級章は……大佐)
この時点でゴードン・ゴロプは相手が何者かを理解した。
彼はすぐさま足を整えると、背筋をシャンと伸ばす。
そして彼は眼前の“ドイツ国防軍大佐”に一部の乱れもない敬礼を行った。
「第27物資集積所司令官、ゴードン・ゴロプ中佐であります。
少官に何か御用でしょうか?」
お手本のような返礼に“大佐”は、満足げに微笑し、
彼はいくばか、その重苦しい声を和らげて返答する。
「……君は優秀で忠実な士官と聞いている……中に入っても?」
ゴードンは自分の非礼を自覚し、慌てて大佐を部屋に招き入れた。
大佐はその長身を半ば、折り曲げるようにしてオフィスに足を踏み入れる。
ゴードンは手振りで大佐に椅子を勧めるが、彼はいらぬ世話だと手を振って応じた。
大佐が口を開く。
「ゴードン・ゴロプ国防軍中佐。今から君に話すことは機密事項だ……
たとえ相手が陸軍元帥でも、口外する事は許されない……分かるな」
いきなり始まった予想外の話に、ゴードンは内心仰天したが、
かろうじて表情に出すのを食い止める。
彼は自分を落ち着けながら、真剣な声色だが、煮え切らないように答えた。
「りょ、了解しました……しかし、自分はただの集積所司令官でして……その……」
大佐はそれを聞き入れると、うんざりした様に言う。
「……自分はただの管理責任者です、か?……ふぅ……官僚のような物言いだな。
“優秀で祖国に忠実な士官”私にとってはそれで充分なのだ、権威など必要ない」
それを聞いたゴードンは不安げに頷き、左手で首をさすった。