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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 誰も知らない誰かの物語 ( No.1 )
- 日時: 2010/08/23 15:40
- 名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=d7xvkyKvbRw&feature=related
第一幕 「それはまるで桜のような」
—どうせ散るなら、美しく散りたい
十二月の寒空の下、道行く人々は厚手のコートを着込み、マフラーに顔を埋めながら家路を急ぐ。その様子を少年はブランコに揺られながら眺めていた。十二、三歳くらいのその少年は全体的に色素が薄く、どこか儚い印象を受けた。
しばらくぼーっと道行く人々を眺めていた少年は、頬を掠めたものに視線を彷徨わせた。瞳がジャングルジムを映した時、ふと、視界の端を白いものが横切った。
「あ・・・・・・」
バッと空を見上げれば、フワフワと粉雪が舞い始めていた。少年は、微かに目を細めて降りそそぐそれを見つめた。
「桜・・・」
以前、誰かが雪は桜に似ていると言った。フワリフワリと舞う雪は、確かに桜に似ていると思う。
・・・けれども、それは。
「悲しいな・・・・」
散りゆく桜と同じならば、この雪は、なんて悲しい始まりなんだろうか。
そこまで考えて、少年はフッと皮肉げに口元を歪めた。
—あぁ、ならば自分は、
「この雪と、同じか」
一つだけ違うとすれば、この雪は“始まり”で、自分は“終わり”だということだろうか。
フワリ、フワリ。ゆっくりと降りてくるそれは、幻想的で美しい。少年は、舞うそれを掴もうと空へと手を伸ばす。ブランコが、キィ、と音をたてて軋んだ。
けれども広げた手のひらは、何も掴むことが出来ずに空を切った。
無言で手のひらを見つめる。白すぎるほど白いそれは、男にしては小さい。
少年は、ギュッと手を握りしめた。しばらくそれを眉間に皺を寄せて凝視していた少年は、小さくため息をつくと手の力を抜いた。そのまま自分を抱きしめるようにして肩を引き寄せる。
—キライだ
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