ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 誰も知らない誰かの物語 ( No.2 )
日時: 2010/08/09 19:15
名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)



嫌いだ。男にしては華奢な体つきも、白い肌も、色素の薄い髪や瞳も。自分を形作るもの全てが、嫌で嫌でたまらない。

肩を抱く腕に力をこめる。少年は、どこか泣きそうな顔で空を見上げた。振り続ける雪は、しかし積もることはなく地面に触れるとすぐに溶けて消えてしまった。それが、今は羨ましくてたまらなかった。


「・・・このまま、溶けて消えてしまえたらいいのに—」


囁くようにして紡がれた言葉は、揺れたブランコが軋む音に掻き消された。




—あの時告げられた言葉は、あっけなく全てを壊してしまったから



少年は、閉じていた目をゆっくりと開けた。全身から力が抜けて、肩を抱いていた腕も自然と下へと落ちた。だらんと垂れさがった腕はそのままに、少年はぼんやりと空を見上げた。


クルクル、クルクル


粉雪は踊るように舞う。自分を中心にして、円を描きながら。


クルクル、クルクル


そんな様子も、桜に似ていると思った。


「桜吹雪・・・なら、雪吹雪・・・?」


ふと、そんなことを考える。雪吹雪なんて言葉はない。でも、少しだけこの言葉が気にいった。

“桜”は温かくて優しいから怖い。
けれど、“雪”は冷たくて・・・美しいから。



—どうせ散るなら、美しく散りたい



そう思ってきた。・・・・だから。


少年は、腕をゆっくりと上げ、空に手のひらを翳した。指の隙間から見える空は、どこまでも高い。天から舞い降りてくる白い奇跡は、広げた手のひらの上で溶けた。じんわりと冷たさの余韻が広がる。

目を細めて空を見つめた少年は、ふと、翳した手のひらを胸元に引き寄せ、そのまま立ちあがった。反動でブランコが少しだけ揺れた。


「雪吹雪・・・」


噛みしめるように、もう一度呟いた。はらはらと雪だけが舞う空間に小さく響いた声に、少年は満足げに微笑んだ。

少年はポケットに手を突っ込んでけだるげに歩きだした。

小さな公園を出るとき、もう一度だけ空を見上げて、











「               」










何かを呟いた少年は、そのままゆっくりと人の波にまぎれていった。











—どうせ散るなら・・・・





雪吹雪のように散るのも悪くない









       *(あとがき)


・・・ハイ。こんなできになりました。ひとまず感想(自分で書いたのに)


「これ、短編か?」


思った方もいらっしゃるでしょう。えぇ、これはですね、作者が書きすぎて無理ですとか出て消えるのを恐れたからなんですよ。

いつも即興なので、消えるともう一度同じの書けないとか、そういうのを暴露っちゃったりはしませんよ!!・・・・(ハッ!!)


・・・ごほん。まぁ、こんな感じになりますが、読んで下さる方はお付き合い下さい。