ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 激動 オリキャラ大募集! ( No.11 )
- 日時: 2010/08/15 17:06
- 名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)
そこには、たくさんの残骸が横たわっている、見るも無残な光景が広がっていた。
人が血を流し、あるいは機械の一部が砕けて辺りに散乱している。しかし、それも「戦場」では極々当たり前な事であって、その場にいる者はそれらを見向きもしなかった。
地には、何台もの戦車が制し、空は戦闘機で埋め尽くされ、最早薄暗くなっていた。地上に落とされる小型爆弾に、地を飛び交う銃弾は、いずれも大群のターゲットに標準が合わされていた。しかし、そんな猛攻を受けながらもその大群は、今もなお抵抗を見せ続けていた。
「———こちらリオン、応答願う」
と、不意に聞こえた声。その声は、ある一機の戦車の影から聞こえて来たものだった。声の主は、隙の無い鋭い眼つきをした、若々しくも凛々しい顔立ちの青年で、そのリオンという男は、小型の通信機を口元にあて、前方を気にしながらそう言った。
「ザ——————…ジジジ……、こちらヴァルター…」
すると、雑音を交えながらも通信機の向こうの相手は、落ち着いた口調でそう応答した。しかし、通信機の向こうから聞こえる爆音や銃声は、途絶える事なくこちらに聞こえていた。
「そちらの戦況を報告してくれ」
「こちらはあらかた片付きました。次の指令を」
リオンは、ヴァルターという通信の相手の報告を耳にすると、再び銃を構えながら前方を窺った。すると、未だに何体かのターゲットである————暴走した機械は、最後の抵抗を見えていたが、離れた所の戦車の砲撃により粉々に破壊され、ほどなくして完全に機能を停止させた。
「…御苦労。我々の所も、もうじき片付く。全員その場で待機してくれ。」
「了解」
二人は短くそう言葉を交わすと、通信機のボタンを押して通信を切った。
「やっと今回の略奪戦も終了…か」
リオンは、空を見上げながら溜息をついた。しかし空は、破壊された機械、建造物などから漏れる黒煙に覆われ、その本来の色が黒に塗りつぶされている。
…何時までこの戦争は続くのだろうか。
人間と機械との共存競争が、こうして戦争を生み出し、そして多くの命が消されてゆく。今回のこの戦争でも、たくさんの人間が死に、犠牲になった。
——しかし、そう考えたところで、自分にはどうする事も出来ない。
たくさんのものが消え、失われていく。しかし、そうさせたのは———我々人間だ。そして事実、その真実は今、人間を苦しめている。
『—————嫌な時代になったものだな…』
リオンは皮肉に笑い、そして最後のターゲットが破壊されるのを確認すると、全軍に今回の略奪戦での勝利宣言を言い渡した。
そしてその瞬間、辺りから歓声が響き渡るが…リオンは黙って、それから背を向けた。
*
人間と機械が戦争を始めて、最早八年が経とうとしていた。そして、機械の反乱は十四年前になる。
軍事的に開発された“ZENO”という機体は、元々リオンが所属していた軍の施設で造られていたのだが、暴走を起こした。
その時、機械の暴走にリオンを含む25人の兵士が対処にあたったが、暴走を起こした機械を止めることは出来なかった。“殺戮兵器”というものは、人間が手に負える品物ではなくなっていたのだ。
ZENOには“Aチップ”というチップが使用されている。Aチップは、機械の破壊された部位を瞬時に再生させる、“瞬間的高性能再生プログラム”が導入されたチップの事だ。
どんなに破壊しても、A チップの核が残っている限り、無限に再生を繰り返すという品物である。
しかし、Aチップの真の恐ろしい所は「生物にも使用が可能」と言う事だ。
つまり、生物を生きた兵器へと変えてしまうという恐ろしいものだった。
このAチップの性能を知る者は、極々限られたものに限る。いや、Aチップを知る者が限られているのだ。
開発者を含み、開発国の元首相と責任者、MBAの元帥や准将等とといった階級の者、そしてリオン。他にも知る者はいるが、とにかく極々限られているという事だ。
そのチップが使用されているZENOを含む機体は、ほぼフリーズされた。あの暴走したZENOは、そのまま暴走しやがて施設から姿を消したが————たくさんの負傷者を出す大惨事になってしまった。その中でも、リオンは仲間を庇って死傷を負い、生死の狭間をさ迷う事となった。
———そしてリオンはその際、Aチップを使用される事となった。
心臓に穴が開いており、最早死を待つしかなかったのだが…一人の開発者が現れ、
「彼は死なない。チップさえ使えば必ず“直る”」
そう言って、手で、直接リオンの心臓へチップを突き刺したのだ。