ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 激動 ( No.24 )
- 日時: 2010/08/22 07:07
- 名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)
『全ては破壊され、創造される』
破壊による創造は、この世界で幾度となく繰り返されてきた。滅び生まれ、壊れ造られ、そして破壊され再生する。世界はそうして今もなお進歩している。
——人は生まれ、今までたくさんのものをつくり上げて来た。しかし、人には“滅び”が無かった。いや、人がそれを拒み続けて来たのだろう。
だが、次は人が滅ぼされる番だ。
全ては世界のルールには抗えない。生まれれば、終わりが必ずしも来る。
しかし人間はその運命に抗い、今も抵抗を見せている。ならば、俺が全てを終わらせてやる。壊して、破壊して、粉砕して、そして崩壊させる。それこそ“滅び”。それは、人が俺に与えた最大で絶対的な使命であり、俺の存在理由。
…だが、今はその時ではない。まだ足りない。俺には絶対的に足りないものがある。
だから、今はその“足りないもの”を求める事にする。
*
「…お前は誰だ」
人の住む国の隣に位置する国———人はそれを隣国というようだが、そんなのはどうでもいい。ただ俺は“探し物”を探しに、遠くからここまではるばるやってきたのだ。
しかし、どうやら俺は面倒くさい奴と出くわしてしまったらしい、俺の目の前には白銀の長い髪を風になびかせ、悠然と立ち尽くす奴がいた。それも、まだ幼い少女だ。
「あぁ?テメェこそ“何だ”?」
崩れた瓦礫に腰をかけいた俺は、訝しげな表情を浮かべながらそう言った。ソイツが人間で無い事は、一目で分っていた。
——何故なら、俺の腕が何かに吹き飛ばされたように無く、傷口から機械の部品やらが飛び出していたからだ。普通、こんな光景を人が見たならば、俺を機械だと判断し、一目散に逃げるであろうからだ。
「…、お前が全部…街を壊したのか?」
その少女は、破壊された建造物、あたりに飛び散るガラス、そして崩れた外壁———まさに、戦争跡とでもいうような街の光景を目にし、そう俺に呟いた。
「ちっ…、俺の訳ねぇだろーが。むしろテメェがやったんじゃねぇのかチビ」
俺はその問いかけに、苛立ちを覚えながらそう言い返した。
『クソ、んな調子じゃあ“探し物”どころの話じゃねぇじゃねぇかよ…!』
俺は腰かけている瓦礫を目の端で見つめながら、沸々わき上がる怒りを抑えながら拳を握った。ただ俺は、“探し物”を探す為、ここにやってきた。と、言うのも、“探し物”に関する有力な情報を手に入れたからだ。そしてそれがここに在ると聞いてやって来てみれば———このありさまだ。
『…気にくわねぇ、何で俺がこんな目に逢ってんだ。俺はただそれだけの為に来た筈なのに、何故この女に腕をブッ飛ばされるんだよ…!』
俺は、目線を自分の吹き飛ばされた左腕を見つめ、脱力するかのように溜息をついた。
*
時間は少し前に遡る。
俺がこの街についた時、既にもう街はこの有様だった。しかし、“探し物”にしか興味が無かった俺にとってはそんな事どうでもよかった。“探し物”を見つけ、さっさとこの街から出て行くつもりだったのだ。
しかし、街をいくら探しても、“探し物”は見つからなかった。
「ちっ…的外れじゃねぇか!“探し物”の手掛かりすら無ぇじゃねぇかよ」
俺は暴言を吐き捨て、街を出ようかとUターンをきろうとしたその時、
『…、俺とした事が、何故今の今まで気が付かなかった?』
俺は苦笑を浮かべながら、つくづくそう思った。
気配
突き刺さるような殺気が、俺の後ろから感じられた。こんなにも露骨でハッキリした殺気を感じたのは、ある意味久しぶりだ。
「……、…!!?」
俺は無言のまま振り返った。しかし、その瞬間絶句した。
「誰だ?」
奴は、俺にそう言った。そして、その瞬間俺が振り返った瞬間にはもう、構えていた巨大なバズーカ砲を連想させる様な銃を俺にブッ放っていた。
「ッ!」
辛うじて体を後退させ、左腕は飛ばされたが———まぁ、それ以上の大きな外傷は負わなかった俺は、イラッとした表情で相手を睨んだ。
『あぁ———ダリィ!何なんだよ、マジでウゼェ!』
別にドンパチしにきた訳じゃねぇっつーの、平和的に“探し物”探してるだけだ。なのに何だ?コイツはよぉ。本当…大概にしろ、じゃないと本気で——
「殺すぞ」
俺がそう言い放った瞬間、ビクッと身震いさせた相手は動きを止め——持っていた銃を下した。
「…」
『…、それでいいんだよ、最初からそうしてろっつーの』
俺はチッと舌打ちをすると、ドカッと近くにあった瓦礫に腰をかけた。すると、銃を下した相手は俺に歩み寄り、こう言った。
「…お前は誰だ」
*
そりゃ、こっちの台詞なんだよ、何で俺がこんな餓鬼に腕をブッ飛ばされなきゃならねぇんだよ!
「クソがっ…!テメェ、次何かやってみろ…その頭本気で潰すぞ」
俺は少女にそう怒鳴ると、再び左腕をキッと睨むように見た。すると、ようやく腕は俺に内蔵されたチップによって修復され、完全に元の形を取り戻していた。
「…ったく、これだからやりにくい…」
俺は自分の左腕を、グーとパーを交互に何度か繰り返し良好だと確認すると、その拳をグッと握った。
「ZENOであるのにも関わらずこうも再生能力が劣っていると、——やりにくい事この上ないな…」
「何?お前ZENOか…」
すると、そんな俺のぼやきが聞こえたのか、少女は表情を一切崩さぬままそう言った。