ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 激動  ( No.25 )
日時: 2010/08/22 07:27
名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)




「あぁ?何だ悪ぃのか」
眉をひそめながらそう言う俺の首には、『ZN-0005』と刻み込まれていた。
「……」
しかし、少女は俺の問いには何も答えずに少し黙った後、少しためらって少女はこう言った。

「———…『OS-00001』、またの名を「レイ」。」

『…、何だ、コイツOS機だったのかよ…』
俺はさらに表情を歪めると、舌打ちした。
『何で機械のクセに…ZN機の改良型のクセに、んな玩具(銃)使ってんだコイツはよぉ』
すると、そんな俺の思いを読み取ったのか、少女はさらに言葉を続ける。
「…制御装置の誤作動で、派手な運動はできない。だから街をここまで壊す事は、私には不可能。だから再び聞く、お前がこれをやったのか?」
「違うっつってんだろーがよ、頭割るぞ」
俺は零と名乗る少女にそう即答すると、少女は一瞬押し黙り、「ああ、そうか」と、短くそう言った。


「……」
俺は、ふとある事に気が付き零を見た。
「…何だ」
零は訝しげな顔をすると、再び銃を俺に向けた。俺はその、「ある事」に期待し、ニヤリと口の端を釣り上げた。その俺の表情に警戒心を抱いたのか、零は殺気を解き放った。しかし、それは最早意味を成さなかった。

「テメェ、OS機なんだよなぁ?なら、“コア”には何を使ってる…?」

逆に、零は殺気を感じた。目の前にいた男は、一瞬のうちに自分の後ろをとっていたからだ。
「ッ!」
零がそれを振り払おうと後ろを振り返ろうとした瞬間、何かが零の体を貫いた。それは、その男の手だった。
「…離れろ、そしてこの腕を抜け」
「ククク…お望み通り」
俺は笑いながらその腕を抜き取った。と、その瞬間零はガクンと、地面に膝をついた。

「…——貴様ぁ…!!」

零は、今までに無いくらいの眼差しで俺を睨み上げた。それはそうだ、俺は零にコアにつけられていた“A チップ”を、コアごと抜き取ったのだから。

「クク、まずは一つ目か…!」
俺はコアについていた制御装置を外し、まじましと“Aチップ”を眺めた。そう、俺の“探し物”は、特定の機械のコアにある“チップ”だった。

———が、しかし、
「…?…!?———…ちっ、何だ“ただの”Aチップじゃねぇか…期待させやがって」
俺はチップを確かめると、意気消沈しながらチップを零に投げつけた。
「…」
俺が何の事を言っているのかさっぱり分かっていない様子の零は、再び俺を訝しげに見た。おそらく、怒りと敵に情けをかけられた悔しさを交えた、何とも言えぬ感情を感じているからだろう。そんな零の顔を見て、俺は再びクククッと笑うと、「用済みだ、じゃあな」と、自らその場を立ち退いた。


…俺の求めているものは、“特別な”Aチップ。見つけるのは困難を極めるが、そんなのどうだっていい。何故なら、その“特別な”Aチップは、自分に使用されているものだからだ。俺はそのおかげで、“普通の”Aチップと、“特別な”Aチップを見分ける事ができる。俺は“特別な”Aチップを集めて、俺は使命を果たす。それまでは、俺は派手な動きをしない。

その時まで、力は温存しておきたいからだ。


「…そうだ」
俺はふと足を止め、振り返った。すると、零が何時でも襲いかかってくる、そいうような噛付く目線で俺を見ていた。しかし、そんなのどうでもいい。俺はただ、自分が名乗っていない事に気が付いただけなのだから。
「————俺は知っての通りZENO、ZN-0005だ」
俺がそう言うと、表情を崩さす零は訝しげに俺を見る。

「名前は“シード”。次、バッタリ出くわさねぇ事を願うこったな」

そして俺はそう言い残すと、次の目的地である東の大荒野の方向に姿を消していった。



「…」
取り残された零は、油断したとはいえ、自分があまり動けなかったとはいえ、一瞬殺されかけた事に悔しさを感じでいた。しかし、彼のおかげで自分を蝕んでいた制御装置が無くなったおかげで———自由に動けるようになった。

「…シード、次会った時は私がお前を潰す。絶対、だ」

零は自分にチップとコアを戻し、そう自分自身に誓い、彼女もその場を立ち退いた。



その2時間後、その場にMBAが駆け付けたというのは、彼も彼女も知った事ではなかった。