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Re: 激動 ( No.3 )
日時: 2010/08/10 21:26
名前: 黒猫 ◆tZ.06F0pSY (ID: 8I/v6BBu)

序章




楽園・“METROPOLIS”

高度機械化社会成長を遂げた世界は、平和の象徴として“METROPOLIS”を設立した。



———2XX0年
高度機械化社会成長に突入した世界の8割以上が、生活の中で様々な機械を利用するようになった。
人工知能のついた人型機械を始めとし、全自動移動型車両の一般化、医学の高度な進歩、世界共通最大ネットワーク“Riris”の普及など…様々なものが発展し、人々の生活に根付いていった。

人工知能のついた機械は、非常に強いセキュリティでウイルスの侵入や暴走を完全に防がれた。
…約半割の機械には人工知能が付いていたが、暴走する事はなかった。

人間は機械の暴走を阻止し、暴走という最大の脅威を避けてきた。


世界規模の楽園の地“METROPOLIS”が設立されたのはちょうどこの時期であり、そこは人が極楽の地として創り上げた地であった。機械の導入は設立の5年後に決定され、その間その地は人間しかいない人間だけの楽園となっていた。

…しかし、世界の平和の象徴として設立されたのだが、その時世界の一部では———まだ戦争が勃発していた。






その“METROPOLIS”が設立されてわずか3年後、絶対安全だと思われた機械が突如暴走を起こした。

発端は戦争中の軍事基地で、軍事的に利用しようとしていた人型の機械…“ZENO”という殺戮兵器の暴走が原因だった。
何のためにその兵器が使用されるつもりであったのかは未だに不明であるが、おそらく———未だに続いていた国々の戦争に、殺戮兵器として導入するために造られたものだと言われているのが、それはあくまで一般論だ。真意はまだ定かではない。


———暴走を起こした機械は、機械の便利さのため貧弱化した人間を殺していった。
殆どが暴走による事故あったが、中には何故か故意的に人を殺したというケースが報告された。
…それが何を意味するのかは、その時の人間に分る筈も無かった。

今までに犠牲になったのは、世界で約15億人。当時、20世紀から23世紀にかけて起きた第二期人口爆発で、世界で約60億人に増えた人間の、約5分の一が犠牲になったのだ。


核兵器は数百年前、ある国の政策により———世界中から消失する事となった。
軍事力で暴走を鎮圧しようとするものの、それを逆手に取られ、機械は一気に暴走の範囲を伸ばした。
核兵器が無い人間にとって、軍事力で世界中の機械の暴走を阻止するなど…到底無理な行いであったのだ。




生き延びた逃げ場のない人間は、逃げ込むようにして“METROPOLIS”や、数少ない機械の導入がされていない発展途上国また未発展国へ避難していった。
…“METROPOLIS”の面積は、大きな国が一つ収まる程度で、機械の導入も一切されていない。
———人々が“METROPOLIS”に逃げ込むのは、当然とも言えた。


“METROPOLIS”に逃れた人間は、機械の暴走を終息させるべく———ある軍隊の結成と、“METROPOLIS”内で暴走した機械に対抗する機械を造りだした。
軍隊の名は“MBA”。———世界の軍隊の中から選抜された、機械の破壊を目的として結成された組織の事だ。
それだけでなく、機械の動きを完全停止させる粒子や、機械の侵入を防ぐ完全防壁なども造り上げ、“METROPOLIS”内に侵入していた機械を破壊、そして完全防壁を張り、まず“METROPOLIS”内での機械の脅威を取り払った。


力を取り戻し始めた人間は、“MBA”を利用し、暴走した機械に汚染された隣国や近い国などの機械を破壊した。
そして、徐々に機械の破壊活動の範囲を広げつつ、活動を進めていったのだ。





—————しかし、人間は未だに自分の犯した過ちに気付く事はない。
そして、機械が人と同じ“意思”を持ち始めた事なども、到底知る由もない。

…人はあまりにも弱くて、無知な生き物だ。


己の欲に生きる人間は、目の前の事すら見えてはいなかった。