ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: モザイク ( No.3 )
- 日時: 2010/11/20 10:54
- 名前: 出雲 (ID: kDmOxrMt)
《1》
—兄が、俺といるとまた壊れてしまいそうで—
「おい…ハル、学校、いかないのか」
いつもならすでに外に出てるだろう時間。
輝石 ナツ—俺の兄貴。
兄貴は俺が家にいたことに驚いてか、驚いてないか真意はよくわからないけど、多分驚いてないよ、多分。
「いかないことにする、今日は」
兄貴みたいにはならない、そう決めたから。
輝石 ナツ—俺の兄貴でひきこもり。
「そうか」
兄貴は無表情でその場から立ち去った。
7年前だ。
兄貴が、壊れたのは。
11歳で、まだそんな年齢だったのに笑えなくなった。
笑わせることもなくなって、俺が大好きで尊敬してて自慢の兄は消えてしまった。
そして、俺が壊れたのも。
7年前。
「多分、7年前」
誰にも聞こえない小さな声で呟く。
独り言なんだけどね、そうは言わない。
7年前、俺は9歳。
記憶力が無いわけじゃなくて、忘れただけ。
忘れたかったから、思い出したくなかったから今はきっと記憶の中のずっとずっと奥にある。
輝石 ハル—それが俺の名前。
少し前まで精神科に通ってた、今も通わなくちゃいけないらしいけど止めた。
あそこに行くと、記憶の奥底からどろどろとした何かが思い出されてしまうから、いけなくなった。
兄貴こそ行かないといけない、でもあの7年前からひきこもりで外に出ていないから一度として行ってないんだと思う、多分。
「多分、か」
自分で思ったけど多分という言葉を使うと不安しか生まれない。
俺の知らないところで兄貴はなにをしてるのか。
何も思っているのか。
それは分かる筈もなくて。
輝石 ハル—俺の名前で《多分》が口癖。
「ハル、昼はどうする」
「え」
いたのか、と思うほど驚いた、というか驚かなければいけない所なんだと思う。
俺も兄貴と同じ、感情表現が分からない。
忘れた。
「昼、御飯はどうする」
死んだような目でそう言われても。
切っていない髪は目を隠してしまっている、兄貴は引きこもりをしているのに何をするわけでなく、俺の見た限り一日中ぼーっとしてるだけだ。
「買ってこようか?いつも出前、なんだろ」
買ってくるって言ってもコンビニだけど。
少しは外に出ないと引きこもりの空気に慣れてしまう。
というか空気を吸ってるとうつってしまいそうだから
兄貴が頷いた。
可愛いな、なんか。
いや、18歳でこの行動は、ってことだよ。
「何がいい?」
一応聞いておこう。
兄貴の好きなものとか昔のは分かる、でも今のnew兄の好きなものはさっぱりだ。
「なんでも、いい」
やっぱ、そうだよな。
「じゃ、行ってくるから」
俺は財布を握って玄関に向かうことにした。
やっぱりそう言うと兄貴は頷く。
キュンとくるな、ひきこもりの兄だけど。
—怖いから—