ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白夜のトワイライト  ( No.103 )
日時: 2010/09/13 21:37
名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)

響く足音が透明な床をこだまする。

煌びやかな黒髪をなびかせ、和服を着こなす綺麗な女性は笑顔のまま一刻と歩いていく。


「…おや、もう回復したのかい? 断罪」


奥の部屋に大きな椅子で腰掛けて待っている男が女性に声をかける。

その男は長い白髪をし、黒いスーツを着こなしている。見た目は紳士のような格好。

顔は薄暗い部屋のせいでよく見えない。ただ声からして若いということはわかる。


「…はい。黒獅子さん、私を誰だと思ってるんですか?」笑顔の状態だが殺気がひしひしと伝わる。


「フフフ…君は面白いね。なんでもかんでも敵意を剥き出しにする…君の心には本当は何があるんだい?」

黒獅子と呼ばれた長い白髪の若者はそう言った刹那、断罪が十字架を黒獅子の目の前に向ける。


「…黒獅子さん。世の中には聞いてはならないものと、見てはならないものがあるのですよ…」


あくまで笑顔で、殺気は今さっきまでとは比べ物にならないぐらいのものを出している。

「君ぐらいだよ…俺を恐れずに武器を向けてくるのは…」余裕の表情を浮かべる黒獅子。

そして十字架を手で払いのけてこう言った。その赤い瞳を断罪へと向けて。


「俺はね…その聞いてはならないもの、見てはならないものを見る権限があるんだ…」


断罪のものすごい殺気を掻き消すかのような"白い気配"。黒と白の混じったその気配はまるで——

「ふふふ…楽しみだよ。早くおいで、白夜君…君にはまだ働いてもらわないと…ね?」

黒獅子の笑みは断罪をも冷や汗をかかせるほどの気力があった。




第5話:裁くべきもの、守るべきもの



そこは殺風景な部屋。目立つものといったら真ん中におかれてある巨大なパソコンと椅子

そして壁にかけてある白色のコートのみ。


そんな部屋の中、一人で佇む少年の姿があった。綺麗な白髪をし、外見は美形の外国人のようだ。


一口リンゴをかじり、その少年、白夜は窓を思い切りよくあけた。


眩しい日差しが白夜の目に差し掛かる。だがこんなふざけた現実は偽りの世界だ。


普通に過ごしている社会人も金に困ってエデンに手を出したり、ストレス発散のために手を出す。


そんなふざけたゴミのような世界。もう、すでにこの世は腐っていた。

なぜ人を殺して平然な顔で暮らしていられるのか。


だが自分はそんな世界を救う気などない。自分の目的はただ一つ。


自分の受けた罰、ルトを救う。ただそれだけのために生きている。

白夜はまだかじったばかりのリンゴをまるごとゴミ箱へと放り捨てる。


「早く…助けないと…」白夜はまた自分の使命のためにパソコンの前へと立つ。

ただ、それだけのために。





「にっしても…よくお前生きてたな?」

白い個室にあるベッドに腰掛けている優輝に向かってその少年は言った。


「あぁ…腹にあれだけの傷を受けたのに…」優輝は自分の腹を触る。生きているんだと実感を共に感じた。


「ま、この秋生がいなかったらちっとまずかったんだぜ?」

秋生と名乗るその少年は自分の胸を叩いて笑顔で言う。


「ありがとうな? ていうか、現実で来るとは思わなかったよ」


「そんなのエルトールの知能で一発よ! それにお前が生きれたのは大和撫子のおかげなんだぜ?」


大和撫子というと風月 春のことである。ずっと自分を治療して看病してくれていたみたいだった。


「あぁ、また会ったらお礼いっておくよ」


「そうしたほうがいいなっ! …おっと、俺はちょっとエルトールの仕事があるんでこれで失礼っ!」


「ん、わかった。色々ありがとうな?」


「気にすんなって! 仲間だろ?」そう笑顔でいって秋生は病室から出て行った。


「仲間…か…」


自分の手を強く握り締める。こんな罪人を仲間と呼ぶのはやめろと体が拒絶しているのがわかった。

また、自分は人殺しという罪を重ねるのではないか。そんな気がしてならなかった。


「うぅ…!!」


自然に、優輝の目から涙が零れた。自分の一番大切だった家族をめちゃくちゃにした黒獅子。


優輝はいつまでも痛む腹を抑えながら、いつもでも止まらない涙を流しながら


必死に、必死に肉親のいない寂しさを振り払っていた。