ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白夜のトワイライト  ( No.117 )
日時: 2010/09/15 23:49
名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)


エルトールの団長、ディストは自らの団長部屋でコーヒーの中に大量の砂糖をかき混ぜていた。


「…入っていいぞ」ディストはコーヒーを見つめながら大きな扉に目掛けて言う。

「…ディスト、どういうことだ?」

扉の先にいたのはディストを睨んでいる白夜だった。

「…はて? 何のことでしょう」

ディストは"あえてとぼけてみる"。白夜の反応は予想通りだった。


「とぼけるなっ! なぜ、なぜ断罪がルトのことを知っているっ!」

白夜はより一層ディストを睨みつけてこちらに歩みよってくる。


「君には知らなくてはならないことがある」ディストは砂糖をかき混ぜる手の動きをやめて言う。

「どういうことだ?」


「君は、レト君のことをまだ覚えているかね?」


「レト…っ!?」

レト、それはルトの弟でもあり、レトの目の傷は白夜がつけたものでもある。

つまり、何の状況もわからない状態のレトは白夜の存在は、憎悪にすぎない。


白夜はこのことを充分にわかっていた。


「そのレト君が…孤高の白城で君を待っているそうだ」

「何…?」孤高の白城は黒獅子の手掛かり、及びルトの手掛かりがあるといわれる場所。

次の白夜の目的地でもあった。


「実は、レト君は政府に逆らう反乱軍の一つでもあるんだ」

反乱軍、それは政府のトワイライトの発動や政府の様々な動きを反対するグループのことを指し示す。


「エルトールは慈善事業じゃない。罪人は誰であろうと罪人だ。依頼された罪人を裁くのが僕らだろう?」


「…何がいいたい?」


「…レト君は反乱軍の一つ。そして罪人として依頼がきている。…そしてレト君は君を狙っている。

  つまり裁くのに絶好のチャンスということ」


ディストの言いたいことはわかった。レトを白夜の手によって、裁けということである。


「出来ないのなら…他の誰かに裁かせるが?」ディストは顔の前で手を組んで白夜を見る。

普段は頼りなさそうだが心は冷血も冷血。凄まじい気迫を持つ男がディストである。


「…わかった。俺が裁く」白夜は無表情でディストにそう告げた。


「うん、そういってくれると思ったよ。君なら」ディストが微笑んでコーヒーを飲む。


「ん〜…砂糖がよく掻き混ざってないなぁ…また混ぜないと…」

ディストがまたスプーンでコーヒーを掻き混ぜようとする時、白夜は去ろうとしていた。


「…白夜君」ディストがコーヒーを見ながら白夜を呼び止める。


「…何だ」白夜は振り向かず、立ち止まって呟いた。



「断罪は黒獅子に服従しているわけじゃない。断罪の花っていうやつがいるんだよ」


白夜は黙って聞いている。ディストはそのまま続けて言い放つ。


「断罪の花、コードネームはさかき。罪人の中でも断罪以上の罪人だ。
 そしてその榊は元トワイライトの発明者なんだとか
黒獅子との接点はわからないけど…気をつけなよ?」


「なんで俺が気をつけないといけない?」振り向かないまま白夜は言う。


「断罪の花は君を狙ってるよ。それに君の諸事情も知っている。理由はわからないけどね」


「…俺は、ルトを助ける。それだけのために生きているといわなかったか」

白夜はそのまま団長室を後にしていった。



「…断罪の花はもう目の前まできている。君が知らなくてはならない真実を知るのはもう少しかな」

ディストはコーヒーをまた一口飲む。


「うん、いい味だね…。白夜君もこのコーヒーみたいになった時、どうなるんだろうね…?」

またスプーンで掻き混ぜ、その渦を見ながらディストは微笑み、ある人へと電話をかけた。


「…もしもし、僕だよ、ディストだよ。ふふ、久しぶりだね…… 
               
               ————黒獅子」