ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白夜のトワイライト うおっ!参照1000いきました!w ( No.127 )
日時: 2010/09/21 13:54
名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)

「お前…どうして…」


白夜は予想だにしない展開に持ち前の"優れすぎた頭"も少し混乱していた。


——先の戦い、断罪との戦いで瀕死のダメージを喰らった男が自分を守って敵と対峙している。


理由がわからなかった。そうして辿り着くメリットは白夜は考えられなかった。

自分は死ななければならない。そうすることで罪が洗い流されるのだ。


それを目の前で自分を助けた男は"バカ野郎"と言う。


「どうしてもクソもあるかよ。借りを返せないまま死なれるのも後味悪いしな」


優輝は決して後ろにいる白夜へと振り返らずに続ける。


「勝手だとは思うけどな、全部聞かせてもらったよ。お前の過去の話は」


「何…?」これもまた、予想外の言葉だった。しかし、自分の過去を知っても何故自分を守ったのか。



「…ある所に、幸せな家族がいました。その家族は父、母、子供の三人いる家族でした」


いきなり語り始めた優輝に白夜もレトもがその場で聞いていた。


「でも、そんな幸せな時がいつまでも続きませんでした。ある日、父が狂い母と子供二人を殺したのです

残ったのは手に血がこびり付いたナイフを持つ父と丁度学校から帰ってきたばかりの生き残った子供だけ

父親は帰ってきた子供にまでナイフで殺そうとしました。何度も、何度も謝りながら。

子供は怖くて、傍にあった鉄バットを持ち、ひたすら父親ではなくなった父親に向けて殴りつけました。

何度も、何度も。そして最後にいったのは、子供を哀れむような顔をして、仇をとってくれ。

黒獅子に…全てを壊された。といって父親は死にました」


白夜は黙って優輝の話を聞いていた。優輝の肩が次第に震えて、声も同時に震えていたのがわかったからだ


「これが俺の過去だ。俺も…父親を殺したんだ…! 正当防衛なんかで許されるもんじゃない」

優輝の声は震えていた。奥底に眠っていた優輝の知られたくない過去。


「それがどうしたっ! 俺はなっ! 奪われたんだよっ! 何もかも!」

レノは白夜を睨みつけて言う。白夜は肩から流れ落ちる血を手で押さえながら俯く。


「お前は何も知らない。白夜はお前の全てを奪った、だがお前を救ったんだ」


「何を言ってる…!? 俺を救っただとっ!? ふざけるのもいい加減にしろっ!」


レノが螺旋を発生させ、優輝に向けて駆け出した。


「お前ももう分かっているはずだ。お前は目を逸らしているだけだ!」


「黙れっ…! 黙れ黙れ黙れぇえええええ!!」


螺旋の竜巻がうねりをあげて優輝へと向かっていく。


竜巻に向かって焦る事なく、優輝は剣を構え、竜巻に斬撃を送り出した。


「無駄だっ! 螺旋は全てを…何!?」


優輝の出した斬撃は螺旋を切り裂き、そのままレトのほうへと向かっていく。


「俺のコードネームは『神斬』。能力は…神をも斬れる斬撃を生み出せる」


レトは回避できずにそのまま螺旋の翼へと当たる。


「ぐぁああっ!!」大きく飛ばされ、レトは岩の壁へと激突する。


「…一ついっておくけどな、白夜。お前は…その、俺の憧れ的なもんなんだよ」


「憧れ…だと?」白夜は目を見開いて優輝を見る。



「…あぁっ! もうっ! 言うんじゃなかった! …とにかくいいか? 気にするなっ! うん!」


そこでようやく白夜は気付いた。


優輝は自分を励ましてくれているのだと。自分の闇を取り払ってくれようと、罪を軽くしようとしていると


「そんなもの…関係ないんだよ…。白夜は、俺の…! 全てを…! うぉおおおお!!」


レトがまたしても突っ込んでくる。


「お前…! 黙って聞いてればただのシスコンじゃねぇかっ! ちゃんと現実を見ろよっ!」


レトの繰り出す螺旋の真空波の連続を全て飲み込むかのように大きな斬撃を出す。


「何度やっても無駄だって——!?」


「でかい斬撃は連続では出せないだろ?」レトがものすごいスピードで片翼で優輝へと向かってくる。


「やばい…! 避けられねぇっ!」その刹那



「——死なせはしない、君と白夜君は」


何者かの声、そして上空から降ってきたのは"閃光"のようなもの。



「何っ!」レトはそれに弾かれるかのように離れる。上空から降りてくる一人の男。



「お前は…」白夜は上空から降りてくる人物を見上げる。


「ハァーイ、お二人とも」


エルトール団長、ディストだった。


「何故お前がこんなところに…!?」レノが驚きの言葉を発する。


「ご苦労様、優輝君。そして…白夜君も」笑顔でディストは二人に告げる。

どうやら優輝はディストによってここまで来たようだ。


「レノ君を裁けなかったみたいだね?」白夜に声をかけるディスト。


何も言わない白夜を差し置いてディストは続いて言葉を続ける。


「ここにすごい人が来るっていうものだから…さ」ディストの睨んだ先にはレノの後ろに潜む影。


「そろそろ出てきなよ…黒獅子」


「黒獅子…!?」優輝の驚きの声。これは優輝にも知らされてなかったことなのだろう。


漆黒の闇の中から出てきたのは、黒い紳士服を着こなし、髪は白髪の男。


「…久しぶりだね、白夜君」


白髪の男は白夜に向かって微笑んだ。


「あいつが…?」優輝の震える声。だが間違いない。あの日聞いたあの声と同じ。


「…本物だ」白夜はそう呟く。


「ふふ…白夜君、"君も"こちら側へ来ないか?」


その言葉の意味を考える。そして結びつけた答え。


「まさか…レト…お前…!」


「黒獅子様は俺の力を覚醒させてくれたお方だ。白夜、お前はこのお方には到底及ばない」


それは白夜にとって一番考えたくないことだった。

そしてそれは、ものすごい皮肉なことであった。


ルトにトワイライトを操作させるようにしたのは黒獅子である。


まさに仇といえるのは、真実は黒獅子が本当の仇であった。


その本当の敵を慕い、味方についている。それは白夜にとって厄介なことだった。


「白夜君…君もこちらへ来ないか?」


黒獅子が白夜へ問いかける。そこへ黒獅子は一言付け足した。


「来れば…君の知らない真実を教えてあげるよ…」


「俺の…知らない真実だと…?」白夜は黒獅子の顔を見た。

多分レトは人質みたいなものなのだろう。"あの計画"を実行するには白夜の力が必要だった。


「俺は…」白夜は黒獅子の顔を見たまま呟いた。


「白夜…っ!」横から優輝が白夜に向けて真剣な顔つきで見つめてくる。

白夜の答えは一つだった。


「残念だが…真実は自分で見極める。自分の目で見ないと信じられないからな」


「…ふふ、君ならそういうと思ったよ。まあいいさ…これも予想済み、全て計画通りといったところ」


そして黒獅子はディストに目を向ける。


「ディスト、約束の物だよ」そういってディストに向けて物体を放り投げる。


「じゃぁね…白夜君、そして…日上の息子の…優輝君?」


その言葉に優輝はものすごい勢いで黒獅子の方へと走り出した。


「てめぇっ!! 降りて来いっ! 殺してやるっ! 黒獅子っ!!」

優輝は自分の仇を再確認したことにより、目的が確定したせいか感情が理性より上回っていた。


「ふふ…君には生きてもらわないといけないよ…君も大切な候補だからね…ね? ディスト」

そういって黒獅子は消えた。


「…ディスト、どういうことか説明してもらおうか」白夜はそう言った言葉に対してディストは


「…ようやく、この時がきたね…」と、笑顔から目だけ真剣になった表情で呟いた。