ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白夜のトワイライト 更新再開 ( No.145 )
- 日時: 2010/11/15 03:07
- 名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)
荒れ狂う風を漂わせる荒野の中、爆撃が起きたことを確かめる二つの影があった。
荒野の真ん中に佇むようにして建つ、一つの大きな要塞を遠く見守るようにして。
「……帰ってきたらこんなことになっているとはな」
見ているだけで思わずため息がついてしまうような言い草をする軍服のようなものを着た男。
その腰にはリボルバーがでかでかと光っている44口径マグナムが装備されていた。
「全く……どうする? レイス」
軍服の男は隣にいる黒いローブを着こなし、頬には不思議なマークが刻まれている男に話しかけた。
その男は、軽く鼻で笑った後、淡々と返した。
「面白いじゃないか、ワイズマン。まさに次世代の始まりともいうべきか」
何やら意味の分からないことを言っているが、その目は真っ直ぐに荒野の真ん中に聳え立つ要塞を見ている
そんな相方の様子にワイズマンと呼ばれた軍服の男は何も言わずに腕を組む。
「……傍観しておく、というのもありだが……さすがに本部が目の前でああなっているからな」
軍服の男、エルンスト・ワイズマンは不気味にくつくつと笑いつつも横にいる相方に話しかける。
「さすがは"軍犬"といわれるだけあるよ。この不純理な戦いに混ざりに行こうか」
黒いローブを着ている男、レイス・マキャベッリはその丘の崖を一気に下ろうとする。
その行動を見たワイズマンは鼻でふっと笑い、
「君こそ好奇心旺盛さは変わらない。さすがは"探求者"と呼ばれるだけある」
一足遅れて、ワイズマンもレイスの後を続いて崖を降りるのだった。
戦いが始まるであろう荒野に目掛けて。
レイスたちが崖を降りている頃、もう反対の崖にも二つの人影が存在した。
一つの影は、ボサボサな頭をし、黒いコートを着ている女顔の男。年齢は20代ぐらいであろうか。
もう一つの影は、子供のように小さい影、赤いフードを被ったいかにも"赤頭巾"といった子供の姿。
「あーやっぱり始まっちゃってるんですね〜!」
呑気な感じに赤頭巾を被った小さな女の子が言った。それに対して横にいる男は微笑を浮かべる。
「ハッハッハ! やっぱりいってみるものだね? 赤頭巾ちゃん?」
赤頭巾というのはどうやら赤いフードを被った女の子のことを示すのであろう。
それに適応した赤いフードを被った女の子は頬を膨らましながら答えた。
「むー! ちゃん付けはやめてくださいっ! 子供扱い禁止ですってば! 不知火さん!」
可愛らしいミニスカをふりふりとさせつつ、不知火という名を呼んだ。
「あはは、ごめんごめん。……さて、と。どうする? 七姫ちゃん?」
「名前で呼ぶとかもっとダメだよ〜!」
アバタコード、赤頭巾こと阜 七姫(ぎふのふ しちひめ)は子供のように反論する。
その姿を見て、思わず不知火は笑みを浮かべてしまう。
「行くよっ! それが任務なんだしね」
七姫は自分の能力である七国靴を発動させる。
七国靴は空中浮遊能力があり、空中を移動できるという能力があった。
「はは、じゃあ……いこうか」
不知火は、そう告げて崖へと足を滑らせたのだった。
それぞれの動きが交差する中、白夜たちは凛に連れられて最奥の場所まで来ていた。
「ここって……財布の最高機関じゃないと入れないとこじゃねぇか!?」
驚いた様子で秋生が声を上げる。
それもそうだろう、何せ一般のユーザーが入れるような場所では到底ない。
むしろ、入ってはならない場所だった。
「この奥に……あるお方がお待ちです」
凛がその最奥にある大きな黒い扉を指差して言った。
その顔には何の躊躇もなかった。
そして、開く。ゆっくりと扉が。
その先に広がっていたのは
「これは……」
まさに科学の集合体ともいえる場所であった。
機械という機械が埋め尽くされている。そしてそれに伴った薄暗い部屋の明かりにも圧倒される。
武装警察の最深部は、こんなにも科学的な構造下にあったのだった。
「ん……客か」
まるで来るのを待ちわびていたように、その部屋の中心部に立っている白髪の男が言った。
外見はガッシリとしていて、いかにも警察の偉い方だと見た目で判断できそうな格好だった。
「あぁ〜……やっぱりか……」
優輝がため息混じりに頭を手で抱え、何か呟いている。
そんな優輝の様子に白髪の男はいち早く気付いて傍まで近寄ってくる。
「ん……お前は……やはり優輝か!」
優輝の顔を見たと思うと途端に驚き、笑顔となった。
「え? え?」
秋生は何が何だか分からない感じで優輝と白髪の男を交互に見ていた。
「はっは! 久しぶりだな、優輝。……ということは、お前が白夜光か」
白髪の男は優輝の肩を何回か軽く叩くと、次に白夜へと話しかけた。
「……あぁ」
一言で白夜は返した。
その様子に全く害することもなく、白髪の男は言う。
「申し遅れたな。私の名前は、ヴァン・クレイゼルだ」
「ヴァン・グレイゼル? もしかして……武装警察、総司令官及び、元帥の……?」
春が確かめるように白髪の男、ヴァン・グレイゼルに聞く。
すると、返ってきたのは笑い声と、それに対する応答だった。
「いかにも。私が総司令官及び元帥やっておる」
武装警察はあらゆる点で活躍するいわば政府の裏の機関のようなものである。
それは規模は大きく、いまや世界的システムとなったエデンなどにも力を入れている。
その規模はあまりに膨大で、武装警察そのものが政府といっても過言ではない。
そんな大組織を従える総司令官が自分たちの目の前にいるという現実。
そしてさらなる事実といえる現実を宣告された。
「"ワシの息子"と仲良くしているみたいだな」
「息子?」
秋生がすっ呆けた顔をしながら聞く。するとヴァンはゆっくりと頷き、
「左様。優輝はワシの息子じゃ。義理じゃがな」
白夜と優輝以外の凛を含めた春と秋生は驚きを隠せなかった。