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Re: 白夜のトワイライト 更新再開 ( No.147 )
日時: 2010/11/17 00:29
名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)

「え? ちょ、待ったああっ!」

秋生が思わず優輝と元帥の間へ割り込んだ。

「優輝っ! お前……ヴァン元帥の息子!?」

そういえば秋生だけが優輝のおい立ちを知っていなかったなぁと優輝は考える。
少し間を空けた後、優輝は苦笑しつつ

「いや……義理だけどな。俺は養子なんだ」

優輝がそこまで告げると秋生は大人しく「そうなのか……」と、難しい顔をして引き下がる。

沈黙が訪れた後、それを破ったのは白夜だった。

「ヴァン総司令官。話があって俺はここにきた」

白夜は見た目は子供だがしっかりとした態度で目線を上にあげてヴァンを見る。
その態度に「ふむぅ……」と、唸りつつ微笑みを浮かべる。

「おぬしがあの……。ふむ、何だ? 話とは」

ヴァンは顎の白髪をさすりつつ、白夜の話を聞いてあげることを告げた。
それに呼応するかのように白夜は淡々と話し始めようとした、が

ものすごい地響きが館内を襲った。
地下でもこの地響きということは地上では凄まじいほどの爆撃か何かがあったのだろうと推測できた。

「ふむ……話は後にしたほうがいいみたいだな、白夜光」

ヴァンは微笑んだまま、白夜、その他の春や秋生らを見回す。

「……俺たちを利用する気か?」

白夜のその推測は大いに当たっていた。
まさにその通りだったのだ。

「働かざるして、獲物はないだろうが」

どこか違うことわざを言いながら、ヴァンは指を指す。
さした方向にあるのは、大きなモニターであった。そのモニターに描かれているものは、この周辺の地図。
赤のマークと青のマークがあり、現在位置のこの館内の中は青のマークとなっている。
そしてその青のマークを取り囲むかのように赤のマークが無数にあった。

「青が無論、ワシらのことを意味する。赤が敵ということじゃの。何者かは大体予想はつくが……」

それだけいったヴァンは顎の白髪を再びしゃくりはじめた。
それを見かねたかのように凛が代わりに説明を始めた。

「どうやら、黒獅子率いる反政府軍のようですね……。データに残っています」

何だかよくは分からないがどうやら黒獅子の引き連れている敵だということは分かった。
凛が喋り終わった後、ヴァンは白夜たちと向き合い、白髪をワイルドに掻きながら告げる。

「ま、なんにせよ……こやつらをどうにかせんことには何の話にもなりゃせんじゃろ」

つまりは行って倒して来い、ということであった。
横暴、とは思ったが手に入れる情報はたやすいものではない。

「分かった。引き受けてやる。その代わり……俺の問いには答えてもらう、いいな?」

その白夜の言葉にヴァンは高らかに笑い、

「よかろうっ! その度胸、しかと見た!」

と、そこで秋生らから反論が出る。

「ちょ、白夜! お前分かってんのか? 相手はどんんな奴か全くわからな——」

その言葉を遮るかのように優輝が

「そうだ。それにこのジジイの言うことなんて——」

ゴスッ!
鈍い音が優輝の頭の上で鳴る。
どうやらヴァンに拳骨を喰らったようであった。

「いってぇなっ!」

痛そうに頭を抱えてヴァンから離れる。

「父さんに向かってその口はなんじゃい!」

ヴァンは顎の白髪を俄然、しゃくりながら言った。

「とにかく早く——」

ヴァンが喋ろうとしたその時、またもや大きな地響きが館内を揺らす。

「総司令官! 軍勢が進行開始し始めました!」

どこにいたのか武装をした者が突如、ヴァンに報告を告げる。
その言葉に黙ってヴァンは頷く。そして白夜たちの方へと向き、出番だとばかりに言う。

「さぁ、行って根性見せて来い。……あ、それとな。ほれ、凛」

「は、はい!?」

自分は蚊帳の外だと呆然としていた凛は突如話しかけられて驚いた表情して反応を示した。

「お前も同行しろ。研修だ」

「え、えぇ!?」

ヴァンの言葉に優輝が思わず反応する。

「凛は関係ないだろ!?」

「関係あるだろうが。こいつも立派な武装警察。いつまでもこんなところで案内係じゃいかんだろ」

ヴァンの言葉は真実だった。
ずっと凛は案内係をさせられてきた。それは戦闘ではあまり役に立たないとされていたためである。
だが、接客等は向いているとみなされたためにここにこうしている。
ゆえに、本当の戦闘はこれが初めてということだった。

「お前が守ればいいだろうが、お前が」

ヴァンが優輝を指さしながら意地悪そうに言った。その言葉につい優輝は押し黙る。

「行くのならば早く手立てを打たないと戦況が不利になります」

春がゆっくりと告げる。その言葉に白夜は頷き、扉に向けて歩き出す。

「私……私……やってみます!」

凛は決意した目で言い放ち、白夜の後をついていった。
優輝はその姿を見た後、ヴァンを少し睨み、自分も後を追いかける。

「ったく……あぁっ! クソッ! こんなことならついてくるんじゃなかったぜ……」

秋生はぶつぶつ何やらいいながらも律儀に白夜の後を追いかけていくのであった。




一瞬の内にして静かになる館内。
中には機械音とコンピューター制御用のCUPがいるのみ。
後は司令官が二人ほどいるぐらい。
ヴァンはモニターを見上げる。

「……ついに始まってしもうたわい」

顎をしゃくりながら、今度は笑顔ではなく、鋭い目つきをしてモニターを睨みつけた。