ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白夜のトワイライト 参照1500突破っ ( No.154 )
- 日時: 2010/11/24 23:52
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
「結構面倒臭いことになってるようだな〜」
崖から降りきった不知火が先に崖下についている七姫に向けて言った。
「遅いよっ! 色々すごいこと起きちゃってるのにっ!」
頬を膨らませつつ、興奮しながら七姫は不知火に言う。
これだと怒っているのかどうなのかが分からない。それに思わず不知火は苦笑しつつ答える。
「崖から降りている最中に把握したよ。あれは……反乱軍側に面白い敵がいるみたいだね」
不知火が状況を把握していることを知った七姫は怒ったように腕を組む。
「もういいですっ! 私一人で調べますから不知火は適当に相手でもしといてください!」
「いや、それって別行動っていうこと?」
不知火が返事を返す前に七姫は持ち前の能力で戦いの起きている要塞へと向かっていった。
その姿に肩を竦ませる不知火。だが、戦いに混じりたいというのは本当だった。
「やれやれ……赤頭巾が狼に食べられないように見守るのも、俺の仕事の一つなんだけどな……」
不知火はそうはいいつつも、優輝たちが戦っている場所の逆方向に向かいだした。
「だああっ! うぜぇっ!!」
月蝕侍こと秋生はイル3体に向けて二振りの刀で薙ぎ払う。
たやすくイルは撃破されていく。だが、数が数だった。
「これじゃあキリねぇっての!」
そうはいいつつも全く苦にもせず、たやすくイルを撃破していく秋生。
以前よりか強くなっていることは明らかだった。
「……もう少し味方がいればいいのですが」
大和撫子こと春はナイフを構えてその外見とは裏腹に俊敏な動きを繰り返す。
それは何回も細かく続いていく。そしてどんどんイルは倒れていくのだ。
大和撫子、一見そのアバターコードは優しそう、控えめな感じを漂わせるが、違う。
「大和撫子をなめないでください」
春は倒れかけたイルの脳天辺りにナイフで瞬間的に切り裂いた。
これが、大罪人を裁く仕事であるエルトールの者。これが普通なのであった。
「俺も……負けてられない……なっ!」
優輝が背丈を優に越える刀を振り払い、何体も薙ぎ倒していく。
だが、俄然突破口は見えないどころか、優輝は怪我がまだ完治していないためか激痛が走る。
「ぐっ……!」
情けなかった。自分ひとりだけが怪我を負い、足手まといになるということが。
だから無理にでも立ち上がる。悔しくて怪我をしている腹の部分に力を入れる。
今にも血が滲み出てきそうな激痛が全身を走った。
「大丈夫? 優輝君」
凛が傍におり、優輝に声をかける。
その言葉に救われてなんとか耐え切る。
「あぁ、ありがと——ッ!! 危ない!」
「え?」
凛の後ろには、不気味で鋭利に尖った腕を振りかぶり、今にも振り下ろそうとしているイルの姿。
「あっ——」
凛へと、無常にもその腕が振り下ろされ——なかった。
ドンッ!
胸を締め付けるような銃声が鳴り響く。武装警察に入っていることからしても音や威力で判断がつく。
この銃声、そして一撃で敵を吹っ飛ばすような威力の銃。それはマグナムだった。
「危なかったな」
どこかで聞き覚えのある声がしたと思った。
そして次に聞こえてくるのは、謎の呪文。
「苦痛せしアラトゥスと道化ヘルマン」
この呪文、どこかで聞き覚えがあった。そして、寒気が一気に全身をかけめぐる。
この呪文は、まさに運の呪文だった。当たりもあれば、ハズレもあった。
優輝はこの呪文で何度酷い目にあったことか。それがよく体に染み付いていたのだ。
「レイスさんっ! ワイズさん!」
優輝はその駆けつけた二人の名を呼ぶ。
エルンスト・ワイズマン。通称ワイズこと軍犬は無表情で頷いて返した。
そして、レイス・マキャベッリ。通称レイスこと短探求の能力が今、発動された。
上空から閃光が迸る。そしてそれは敵味方関係なく無差別に降りかかった。
「避難だっ! 逃げろっ!」
避難しようとする。その場はレイスの元にである。
レイスの元には災いはこない。ゆえにそこに優輝たち一同は向かう。
「グギャアアッ!!」
凄まじい奇声をあげてイルたちは倒れていく。それは次第に感染していき、ついには周りのイルはほぼ全滅
一気に形勢逆転だった。
「や、やりましたよっ! レイスさん!」
思わず手を取るほど優輝は喜ぶ。それに笑顔で返すのではなく、変な文の羅列が帰って来た。
「やはり、私の直感は当たっていたようだ。この闇にまみれる戦場下での推測はいかなる——」
その言葉を全て無視することになれていた優輝は次に凛を助けてくれたワイズへと挨拶をする。
「お久しぶりですね、ワイズさん」
ワイズマンは久しぶりに会う優輝の顔に少々笑みを零し「あぁ」と相槌をうった。
「ま、とりあえずは……後は目的は一人だってわけか」
秋生は遠くに見える少女を見据えて言った。
その少女の目は、いつまでも透明で、表情は小さく笑っていた。
「さてと……予想通りに事が運んだね? クロ?」
薄暗い室内のせいでよく顔は見えない。だが声からしてクロという人物に話しかけた男は相当若いだろう。
「はは……ラプソディ? 君は楽しみかい?」
クロこと黒獅子はラプソディという声の若い男に問う。
その問いにラプソディは首を傾げる。
「どういうこと?」
すると黒獅子は「ふふ……」と、不気味な笑顔と共に傍にあった椅子へと腰掛ける。
そして、言い放つ。
「世界はたった一つのトワイライトで混乱を招いた。そして終戦まで導いた……じゃあさ」
机の傍にある訝しげなボタンを押す。
すると目の前の壁がだんだん取り払われていき、一つの大きなスクリーンが出てくる。
そこに映っていたのは——
「トワイライトの数倍、いや数十倍はいく凄まじき兵器……"エコーズトワイライト"……
もうすぐで、完成するんだ。後、もう少しで。そのためには……集めないといけない」
「何を?」
ラプソディはずっと笑っているようだった。声からして楽しんでいるかのように感じ取れる。
「トワイライト適合者たちだよ。その中でも一番の人材……白夜光を、必ず……
必ず、捕まえないとね。いけないんだ」