ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白夜のトワイライト  ( No.162 )
日時: 2010/12/19 00:38
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)

辺りが急に騒々しく騒ぎ始める。
外では優輝たちが事の発端でもあるものを食い止めようと戦ってくれている様子であった。

そんな中、本部内部で向き合う一人の少年と一人の桃色髪の女性。
少年、白夜の右手には光り輝く太陽の光が溢れている。
しかしそれは、もう片方の左腕に突如として現れた闇と配合していく。
混ざりに混ざった後に——銀とも灰色ともいえる混合色。

「面白い……! 面白いよっ! 白夜光!」

対する桃色の髪を持つ女性は不気味に笑いながら駆け巡る。
すかさずその猛進ともいえる接近に右手を振りかざし——横に薙ぎ払う。

凄まじい爆音と共にその桃色の髪を持つ女性、月夜の付近にて爆発が起こる。
だが、それはまるで読んでいたかのように軽々と上空を舞い、爆風を避けた。

(やはり……俺の予想は間違っていなかったようだ)

白夜は心の中で確信を持ち、ふたたび連続して爆発を生み出す。

「どうしたのっ!? そんなものじゃ——ないよねぇっ!?」

月夜は凄まじい身体能力を見せつけながら爆風を次々とかわして行く。
いくらなんでも、身体能力だけでここまで行動できるのは不可解であった。

「ふふ……!」

月夜が遂に全ての爆風を避けきり、白夜の2mほど付近まで近づいた時。

「何がおかしいの?」

白夜は——笑った。不敵な笑みを浮かべ、周りには灰色の薄暗い光が彩っている。
この光こそが白夜光という能力であり、また白夜そのものでもある。
その光がなにやらざわついているような気がして月夜は胸に不信な感情を抱く。

「貴様とのお遊びは、もうタイムリミットだ」

白夜は不気味に顔を歪ませて、銃口を月夜に向ける。
——何かが、おかしい。
不信な気持ちが月夜にそう思わせていた。

「貴様は、俺に勝てない」

「ッ!?」

その瞬間、白夜は月夜の後ろに回っていた。

(なっ……!?)

闇に纏わりついた左手を月夜の腹部辺りに押し当てる。

「チェックメイトだ」

ドクン! と、体中が跳ねたかと思いきや月夜の口から何かが込み上げてくる。

「ぐは……ッ!!」

それは、血であった。
闇の磁力などを利用し、相手の体内部にとてつもない衝撃を与えたのだった。
その衝撃さゆえか月夜はゆっくりと床へと倒れこむ。

「安心しろ。内蔵までは破壊していない」

「ど、どうして……!」

月夜は苦しそうに立ち上がりながら言う。

「どうして、未来を凌駕させることが出来た……!」

そう、月夜の能力は未来予知である。
あまり人に自らの能力を知らせることはしたくない月夜は謎の能力として知らせれていた。
持ち前の運動能力とその未来予知で相手の次の行動を知り、それを逆に利用して相手を倒してきた。
しかし、それがこの目の前にいる少年、白夜には通じなかったのだった。

「答えろ……! 白夜光!」

月夜は屈辱と共に白夜へと言った。
白夜は無表情に、何を考えているか分からないその"幼き子供"は言った。

「夢でも、見てたんじゃないのか?」と。

その言葉に、何故か寒気とおぞましさが込み上げてくる。
月夜にとってこの感覚は初めてだった。

(白夜光……噂以上の人間ね……!)

月夜は、目の前の畏怖するべき見た目は子供の白夜を見つめる。
表情は、読めない無表情だった。未来予知をしても、もう何も、見えなかった。




「私が、相手になります」

不意に言った一言。それは春の口から漏れた言葉だった。

「いきなり何を言って——!」

「これは、私の問題なのです」

優輝の言葉を遮り、春は冷たい口調で言った。
雰囲気が、いつもと違っていた。

「たった一人で挑む気か?」

秋生の言葉に頷く春。
ため息一つ、秋生は吐くと混乱している兵士たちの元へと歩き出す。

「お、おいっ! 秋生っ!」

「俺は抜ける。他の者を助けに行く。大和撫子がやるっていってんだから邪魔するのは悪いだろ?」

秋生はもっともな意見なのかどうなのかあまり把握が出来ないようなことを言って去っていく。
春は、真っ直ぐに優輝を見つめると言った。

「お願いします。あの子と……氷歌と、一騎打ちさせてください」

それは、決意の込めた目で言った。
いつもの大和撫子ではない、エルトールとして。
それを無為に断るわけにはいかなかった。

「……分かりました。その代わり、必ず勝ってください」

優輝も誠意を込めたつもりで春を見つめる。
そうして見つめ合った後、春は笑い「はい、勝ちますよ」と、言った。
それを聞くと優輝含む他3人は秋生と同じく、別のところへ支援に向かうことにした。

「さて……氷歌、久しぶりね」

一人佇む、少女。
近寄りがたいような雰囲気を出し、手には武器である大鎌を持っていた。

「貴方は……大和撫子?」

感情の読めないような声で氷歌たる少女は言った。

「そう、私は大和撫子。相変わらずですね」

大和撫子はそんな他愛も無い会話の中、ナイフを静かに取り出して構える。

「私と戦うの? 歌うよ?」

歌うという言葉とは裏腹に大鎌を構える。
静まった荒野の中に二人が対峙する。

「知ってますよ。貴方の歌も、何もかも。同じよう"暮らしてきた仲"でしたから」

春の言葉に全く動じることなく、無表情のまま静止している氷歌。
続けて春は言い放つ。大和撫子らしくない、冷めた口調で。

「何かの縁ですね、これも。きっと、戦わなくてはならない縁なのでしょうね、私達は」

春の言い放った最後の言葉にだけ、氷歌は——笑った。




「ふむ……」

不知火は顎をしゃくりながら立ち止まっている。
それは、目の前に写る光景が予想外とも呼ぶべきものであったからだった。

「全滅……?」

その風景は、まさに惨劇と呼べるものであった。
武装警察とイルが、全員死亡していたのである。
その殺した犯人の姿であるはずのイルの姿も一緒なのである。
この拠点は落とされたとして見るべきだが——殺され方が異常だった。

「これは偵察どころじゃないな……この戦争、何かがいる。とんでもない、何かが」

武装警察でもなく、反乱軍でもない何かがいたということなのだ。
その何かはまさに化け物といえるものであろう。
この何千といる軍勢を倒すほどの軍勢。
普通は何かてかがりを残すはずだが、それらしきものさえもない。

「これは——ヤバイな」

不知火は頭をいつものようにかきながら、そう呟いた。