ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白夜のトワイライト  ( No.175 )
日時: 2011/09/25 16:43
名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: PUkG9IWJ)

データを解析中……。

そんな文字が薄暗い部屋の中、パソコンに浮かび上がる。
食べかけの林檎は既に腐り、その場に放置されていた。
お腹が減ることも無く、また、現実の世界に帰って来たとしても、何も感じることはなかった。ただ、一度望みはシャットダウンされただけで、これからも探し続けるだけ。
それは、今も前からも変わらない自分の使命、罪なのだから。

「ふぅ……」

ブゥゥン、と重低音がパソコンから部屋へと鳴り響いた。
疲れが相当溜まってしまったのか、少年は頭を抱える。そして、一つ息を大きく吐くと、立ち上がる。
現実と電脳の違いにより、感覚が麻痺し、上手く歩けない。ふらふらと足取りをそのままに、冷蔵庫へと近づく。
中を開けてみると、何本ものドリンクが入っており、それを何とか取って飲み干した。
冷蔵庫の上に貼ってあるカレンダーには、赤く塗り潰された日にちがあった。
9月31日。
それは、悲劇の始まりを意味する日付だった。
少年は、その日付を睨みつけた後、ゆっくりと元の場所へと戻っていく。
少し、電脳世界の方で能力を使いすぎた。その疲れが現実にこうやって疲労を感じさせている。
金には困らなかった。電脳世界の、エデンというふざけたゲーム世界の中、金というものなどいくらでも稼げる。上手く出来たリアルな世界は通り、食べ物や飲み物もリアルに感じることが出来る。しかし、死も同様に。
これを好き好んでやるこの世界の人間共は皆腐っている。そこに、メリットは沢山あるが、デメリットは命の保障ということを感じないままにデットヒートを繰り返しているのだから。

カタン、とその時机から何か物が落ちた。
それはビー玉だった。拾う気もなく、ただその青いビー玉を見つめるだけだった。
電脳世界の出来事は、全て本当の出来事として還元される。それは、いつまでも忌々しく続いていく。
少年の、月影 白夜の体がその証明だった。
副作用という名の体の収縮がそれだった。本当ならば、植物状態になっていただろう体を見ては、何度も傷つけようとしたことか数え切れなかった。
白夜にとって、それだけ自分の存在は許せないものがあった。

「だから……」

部屋の中、ようやく呟いた言葉がそれだった。喉が潤されたとしても、しばらくはこの本物の喉で声を出していなかった白夜の声は掠れていた。

「だから、俺はここにいるんだろう」

擦り切れそうな声で搾り出した声は、どこか決心を決めたような表情だった。
見つけなければいけない人がいる。助けて、それから……どうしようというのだろう。
白夜は再び電脳世界へと飛び込んだ。
何をするわけでもない、ただ、自分の宿命のために。




【一章完結】