ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白夜のトワイライト ( No.184 )
- 日時: 2011/10/10 17:08
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: EFs6h6wo)
ポツ、ポツと繰り返して同じリズムを刻んでいくその雨粒は、天井の岩石から滴り落ちていた。
薄暗い洞窟の中に、三人の人間が息を潜めていた。その内の二人は気絶しているのか、その場で倒れ込んでいる。二人の隣にいた赤い目をした男は、片手に持っていた瓶を口へとつけ、一気に中身の水を飲み干した。水を飲み干す音と、水音が滴り落ちる音しかないこの薄暗い空間の中、黒槍 斬斗は息を吐いた。
近くの岩石の壁に剣を二つ、たて掛けている。いつでも剣を取ることが出来るように出来るだけ傍に置いてあった。
「ふぅ……」
瓶からようやく口を離し、一息吐いた後に隣で寝ている二人に目をやった。
(何故俺がこんなことを……)
思い返してみれば、それは突然のことだった。
第11話:混雑な世界
あの闘争の中、敵だった斬斗を助けたのは、現在斬斗の隣で寝ている内の一人、風月 春こと大和撫子だった。
何故助けたか。その理由は斬斗の考えることでは全く理解しえないものであった。
「離せ! 敵の恩などいらん!」
斬斗はその時、肘を振り回してそれを払った。善意で助けてくれたというのは斬斗にも分かっていたが、敵だった。それはどう考えても敵で、先ほどまで殺し合いをしていた者同士。なのに恩を着せる、などということは斬斗にとって有り得ないことだった。
「あ——ッ!」
その時、春は後ろに飛ばされた形になり、後方へ仰け反った。その直後、眼の前が眩み、地面が大きく揺れ動いた。春の足元には地割れが起きようとしていた。そのすぐ傍で涼代 美月こと氷歌も倒れており、二人してその地割れの波に飲み込まれそうになっていた。
本来なら、それは敵が死ぬという"メリット"で助けなかっただろう。しかし、その時の斬斗の心の中では、その規律は乱されようとしていたのである。
もう既に戦争は終わった。この闘争は、終わりを告げた。つまり、敵も味方もない。今はもう、一プレイヤー同士だと。
「うぉぉッ!」
斬斗は力の限り走り出し、春と美月を助け出した。その時から既に二人の意識は途絶えてしまっていた。
地割れの断面を何とか飛び越え、転がるようにして着地をした後、二人の様子を確かめる。脈がしっかりと取れていることを確認すると、安堵の息を吐いた。
それから周りを見渡し、もう一人仲間の連れがいなかったか探そうと立ち上がったその時、突然斬斗たちの足元に巨大な地割れが開いたのであった。
「な——ッ!!」
斬斗たちは成すすべもなく、そのまま谷底へと落ちていった。
だが、今はこの通り生きている。それは落ちている最中、急に眼の前に現れたアップデートという文字が関係しているのかは分からない。だが、現在こうして助かっているところからすると、関係性は確かにあるのだろう。
(しかし……こんな洞窟、見覚えがない。もし谷底から落ちたとすれば、即死になる……生きているし、どこかに転送されたとしか考えが思いつかん……)
また一口水を飲み込み、喉へと通した。冷たい水がひんやりと喉から胃にかけて冷ましていく。
「う……」
その時、不意に隣の方からうなり声のようなものが聞こえた。そこには、青いバンダナをした春がゆっくりと起き上がってきていた。
「起きたか」
「ん……あれ? ここは……」
「分からん。どこかに転送されたのかもしれん」
春が寝ぼけたような声を出しながら辺りをキョロキョロと見回す。その様子を斬斗は暫く見ていると、不意に春の方から「あっ!」と声を出して斬斗の方へと向いた。
「貴方は……!」
「……あぁ、黒槍 斬斗だ。アバターコードは斬将。俺もお前も、そして……お前の後ろにいるそいつも、三人が三人ともこの洞窟に転送されたようだな」
「後ろの……え、美月!?」
春は後ろにいた美月の肩を揺さぶり、目が覚めるまでそれを繰り返しながら名前を呼び続けた。
「うぅん……」
「よかった……目が覚めた」
ゆっくりと美月も体を起こして、状況が全く掴めない、といった表情をして春と斬斗を見比べ、そしてそのすぐ後に突然身構えた。
「大和撫子。私をまた"あの場所"へ戻しに来たんでしょ!?」
「違う。私はそんなことをする為にここにいません。……氷歌。貴方は何で黒獅子側についていたの?」
「黒獅子……? そんなの関係ない! 私は、あんな場所に戻りたくない! あんな場所で、歌いたくない!」
混乱したように声を荒げる氷歌を落ち着かせようと春が宥めるが、全く言うことを聞かない。斬斗はその様子を見て、
「おい、氷歌。少しぐらい話を聞いてやれ。ただ駄々を言っても何もならないだろう」
腕を組み、冷静に斬斗が言うと、その言葉のおかげで少し落ち着いたのか、ゆっくりと美月は頷いた。その様子を見て、春は口を開いた。
「貴方は無意識の内に、歌に幻覚作用を込めている。貴方があの場所へ抱く恐怖。それが幻覚の全て。貴方が歌いたいという気持ちが、返ってあの場所を思い出させるの」
「……じゃあ、もう歌ったらダメなの?」
「そうじゃない。私は、貴方の歌声が大好きだった。あの場所に居た時から。あの場所が怖いなら、あの場所を忘れるように努力すればいい。貴方の幻覚の能力は、利用されてるだけなの」
「どうすればいいの? そんなの、あの場所は……」
次第に美月は体が震えてきていた。その様子をじっと春は見つめ、ゆっくりと手を伸ばし、抱き締めた。しっかりと、離さぬように。
「その為に私がいるの。あの場所に返す為じゃない。貴方を自由に、歌わせてあげたいから。だから、此処にいる」
「此処に……? 私の、傍に?」
「うん。そうだよ」
「本当に?」
「うん。本当だよ。今度は逃げないから、大丈夫。私には、仲間がいるから。その仲間に、美月も入れてあげるから」
「……仲間?」
「そうだよ。とっても強いの。だから、一緒に行こう、美月」
春の言葉がどれほど美月に染みたのかは分からない。だが、次第に美月の無表情の顔から涙が零れて出てきていた。
ゆっくりと、大粒の涙は止まることなく、地面の岩石を濡らしていく。
「これ……止まらないよ……」
春は、美月が涙を流しているところを初めて見た。感情が無く、誰が死のうと関係のないバイオレンスな状態だった美月が初めて見せた涙。それはきっと、良い事なのだと春は微笑んだ。
その一部始終を見ていた斬斗は、心が何か詰まっているような感覚がした。
特にこの二人に思い入れなどはないが、斬斗はその様子を見て、変われるものだ、と鼻で優しく笑った。
「……とにかく、此処から出ないと何も始まりそうにないな」
「えぇ、そうね……」
斬斗の言葉に、振り返った春が答えた。美月は涙を必死に服で拭いている所だった。
洞窟は薄暗い状態が延々と奥まで続き、一歩進めばまた闇。十歩進んでもまた闇が広がり、それは果てしない闇に見えた。
「左右に道が分かれているが……どうする? この三人で行くのか?」
「え……斬将、貴方も着いてきてくれるの?」
春が驚いた表情で斬斗に向けて聞いた。ゆっくりと立ち上がり、斬斗はたて掛けて置いた剣を腰元に装着しながら「勘違いするな」と呟いた。
「借りは返すだけだ」
斬斗は振り返り、そう言った。
しかし、春の様子は思っていたのとは違い、笑みを浮かべて笑い声を小さく漏らしていた。
「……何がおかしい?」
「ううん。借りって言っても、多分だけど、貴方はもう私達を助けてくれたんじゃないかな?」
春の言葉を聞いて、斬斗はうっ、と息を飲み込んだ。
あの地割れの時、春と美月は気絶していたはず。あれは落ちることが怖くて目を瞑っていただけなのかもしれない。そういう考えがすっかり思いつかずに、敵を助けたという自分のキャリアにも関わる事実が知れているやもしれないことに焦りを感じたのだ。
「ほら、その反応はやっぱり」
「う……うるさいッ! 早く用意をしろっ。どれほど歩くかも分からん」
斬斗は少し苛立ったような、恥ずかしいのを我慢しているような顔を春の目線から逸らし、暗闇を見つめた。その様子を見て、春はまた思わず笑ってしまうのだが——その瞬間、思い出したことがあった。
「秋生……。そうだ、秋生はッ!?」
「秋生……? 誰のことだ?」
「アバターコード、月蝕侍。陽炎を使う細目の男です!」
春の言葉を聞いて、ハッとしたような顔をしたかと思うと、斬斗は「そういえば……」と、言葉を漏らした。
「あの場で探したんだが、あいつの姿だけはなかった。もっと探そうとしたその時、地割れが……」
「そんな……」
傍にいたはずの秋生が消えていた。それは春にとって、不安な要素だった。今までパーティとして組んできた秋生には、親しみがある。その分、心配になっていたのだ。
あの時、秋生は狂気に犯されていた。そのことがより一層春の心を揺さぶったのだ。
「早くここから脱出しましょう」
春はそう言った途端、立ち上がった。
秋生はどこにいるのか。秋生を探す為に。
【番外編:Condemnation 序章】
「はぁ……はぁ……はぁ……」
頭が割れそうだ。もう"終わり"が近づいているような気がする。
全身が麻痺しているような感覚。俺はもう、死ぬんじゃないだろうか。
一体何をしていたかさえも思い出せない。俺はどこで、何をしていた? そこで——何があった?
「何だ……これ……」
壁にもたれかかるようにして倒れると、その痕には血がべっとりと付いた。全身が血だらけで、視界もぼやけている。
ゆっくりと、右手を左腕が"あるだろう部分"へと手を付けた。
しかし、右手は虚空を振るうばかり。痛みは左腕が付いているはずの部分から伝わってくる。
しかし、その後、ぼやけた視界の中で見つけたもののおかげで自分の置かれた状況が分かった。
「あぁ、そうかぁ……。俺——左腕が千切れてるわけか」
視界が消えていく中、吾妻 秋生こと月蝕侍が見た"それ"は、紛れもない、自身の左腕だった。
肩の辺りからバッサリと千切られているその腕が眼の前に転がっていた。おぞましい光景を最後にして、秋生の意識は消えて行った。
「——おや?」
腕が空中へ上がる。
「へぇ……まだ、まだまだ——終わらせないよ」
意識はなかった。とっくに消えていたが、その言葉だけは、何故か、秋生の耳へしっかりと聞こえていた。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.185 )
- 日時: 2011/10/11 23:14
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: EFs6h6wo)
都会染みた場所から離れ、人気のなさそうな場所へと春之助と裏面は来ていた。
都会の風景には似合わず、周りには誰もいない寂れた様子に首を傾げつつ、裏面は春之助に着いて行った。
元を辿れば、裏面はとある人物を探しているのだが、その道中に道に迷い、異形の化け物に襲われたのだった。自分に心底自信のない裏面にとって、春之助の存在はとても頼りになる。春之助がゆっくりと歩いていくのを、小走りで裏面は追いかけていく。正確に言えば、春之助に付いてある犬の尻尾が左右に動くのを見つめながら着いていっているわけなのだが。
「大丈夫かいな? 疲れたか?」
「え、あ、い、いえっ、だ、大丈夫です……」
「んじゃあ、俺が疲れたから休もか!」
「えぇっ!? あ、あのッ! ……あぁ……」
突然振り向いた春之助に驚いたのと、休もうと言い出しては裏面の腕を引っ張り、半強制的に休まされることになったことも驚いた。
見た目が犬耳、犬尻尾というコンビになので、可愛さで圧倒されていた為かここまで強引な人だという印象は全くなかったのだ。
丁度公園があり、そのベンチに座ることにした。都内は都内だが、ここは静かな場所で、ビル群もあまり見えない。都会というより、田舎臭い雰囲気のある場所だった。だが、それが返って落ち着かせてくれた。
「この場所が分からんわぁ……ここ、どこやろな」
「あ、それ、私も聞こうとしてました……」
「ほんまかいな? 臨ちゃんも知らん都会やとはなぁ……」
悩んだように腕を組み、うーんと唸り声をあげている春之助を横目に、裏面は小さく笑い声をあげてしまった。
「な、何がおかしいんや?」
「あ……ご、ごめんなさいっ。あの、その尻尾って、態度によってやっぱり変わるんですね?」
裏面が春之助に生えている尻尾を指摘しながら言った。
その言葉通りに、尻尾は真っ直ぐ伸びていた。左右に揺れることもなく、尻尾はその態度の通りに従っていたのだ。
「うぁ! めっちゃ恥ずかしいやん!」
慌てて尻尾を隠そうとする春之助だが、今度は犬耳がピクピクと前後に動いているのを見つけた裏面が再び笑い声をあげた。
「わぁぁっ! どうしろ言うねん!」
「ふふっ、可愛いからいいじゃないですか?」
「よくないわぁっ! あぁ、もう……あんま見んといてっ」
そっぽを向いて頬を膨らませる春之助の姿は本当の犬のようで、とても可愛らしく見ている裏面は思っていた。元々春之助は童顔な顔の造りをしている為、そのおかげでそう見えているのかもしれないのだが、それは言わないでおこうと裏面は口を結んだ。
そうして少ししてから、不意に春之助が裏面の方を向いた。その様子に驚いた裏面は、思わず「な、何か……?」と返してしまった。
「あんな、臨ちゃん。実は——」
春之助が言葉を紡ごうとしたその時、理解しがたい雑音に似た声が聞こえてきた。それも春之助と裏面の辺り一面を囲んでいるようで、辺りからその雑音は聞こえてきた。
「&#&%$”#&%&」
「何語喋ってんねん! ……それにタイミング良すぎやろ! 台無しにすんなや! KY集団が!」
マシンガントークの如く、早口で春之助は言葉を吐き出すと、それと同時に両手を握り締め、ゆっくりと構えた。
敵はあちこちにいる。数は正確には分からないが、かなりの数がいることは明白だった。
煩い雑音が辺りから聞こえ、耳が痛いほどの状況下の中、
「臨ちゃん、戦える?」
「は、はい……大丈夫、です」
「よっしゃ、ほな——暴れてくるわ」
その瞬間、春之助は猛烈な勢いで前方駆け出した。
左右からその春之助をすかさず攻撃を加えんと、化け物が飛び掛ってくるが、空中で春之助は両手を交差させる。その後、綺麗に化け物の頭だけが飛び上がった。データの化け物は血を噴出すことはないが、青白い光を傷口から発光させている。
「よっ、と」
春之助はそのまま体を捻らせ、そのままの勢いで着地する地点にいた化け物へと手を振りかざし、振り落とした。その瞬間、何かが"噛み千切った"ような惨い音が響いた。化け物の半身は噛み千切られたように裂け、体と呼ぶには到底及ばないものへと変貌されていた。
着地した後、足に力を込めた春之助に、一斉に前方から襲いかかってくる化け物の集団は奇妙な声をあげて春之助を仕留めようと飛び掛ってきた。
「春之助風、ドッグ・ムーンアサルトォォッ!」
早口でそう言った直後、勢いよく春之助は宙に浮いて後転した。爪で引っかくように、両手を伸ばしながら行ったので、足と共に手も同じように前方へと後ろ回りに振り回した。
前方にいた化け物の集団は4,5体だろうか。それらの化け物は全て"上半身が食い千切られた"ような有様となっていた。
春之助は素早く着地すると、また駆け出していく。その姿を裏面は見つめ、たった30秒にも及ばない行動に圧巻されていた。
「$&%##!」
「っ……!」
裏面の元にも化け物は迫ってきていた。ほんの後わずかの距離で、間一髪にして裏面は避けたのだ。
そのまま倒れるようにして転がった後、すぐに立ち上がり、決心したような顔付きでハッキリと言い放った。
「ショートカット【手榴弾】」
すると、裏面の手には手榴弾が握られており、それを多少慣れた手つきで前方へ投げつけた。
手榴弾が地面へと被弾した直後、強烈な破裂音と共にその場にいた化け物は皆吹き飛んでいた。
何とか倒せたことで、一息吐く裏面の後ろに化け物の声が聞こえてきた。それも、すぐ近くに。
「あ——」
声をあげたが、それは何の意味も無く、裏面は化け物の攻撃を受けてしまった。肩に痛みが走る。それは抉られ、自分の肩に強烈な痛みが走っているのだという実感が湧き、思わず叫び声を出した。
「臨ちゃん!」
春之助の声が遠い。少し視界がぼやけ、後ろへと倒れていく自分の体はどの方向にあるのかも分からずに、裏面は地面へと——倒れなかった。
そしてその直後、化け物の断末魔が近くで聞こえた。一体何が起こったのか。何故自分は地面に倒れていないのか、と裏面が考えるのも束の間、
「大丈夫?」
その声は、とても優しそうな声だった。裏面がゆっくりと目を開けてみると、右手に大きな剣を持ち、左手で裏面を支えている優輝の姿があった。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.186 )
- 日時: 2011/10/12 00:36
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: EFs6h6wo)
そういえば作っていた設定があったのだけれど、誰が誰だか全く分からないというような状況&書く機会がもはやありませんので、このレスに書き留めておきたいと思いますw
えー……ランクと職種について、ですね。どのキャラがどのランクでどの職種か公表したいと思います。なお、能力のレベルによってランク付けされているので、異能につきましてのランクは変わりませんが、身体能力についてのランクは変わります。この二つをまとめますと……。
ランクは上から【SSS、SS、S、A、B、C、D】まであります。
異能と職種のあれこれの総合ランク表示とさせていただきます。身体能力とか、書いても無駄な気が。チートとかバレちゃう気が(ぁ
職種:エデン内のいわば職業のようなもの。そんなものあったの? とか聞かないで(ぇ
シーカー、ストライカー、クレイバー、スレイヤー、パニッシャーの5つが職種となります。
【概要】
シーカー【頭脳的職業で頭を使う勝負や幻覚や毒など、異常状態にさせるタイプの能力を持っている職種】
ストライカー【武器での攻撃が全くなく、能力がほとんどの攻撃手段となっている。その他、武器も多用するが、能力と融合させているタイプもこれに当てはまる】
クレイバー【能力も使い、武器攻撃、能力攻撃の二つを使いこなす。いわば万能タイプということです。クレイバーのS以上のランクは稀と言われている】
スレイヤー【能力は身体向上などで補い、武器攻撃がほぼ全て。近接攻撃のエキスパートといえる】
パニッシャー【様々なリスクはあるが強い力の多い職種。体に負担がかかるが人ではないものに化けるタイプもパニッシャーとなる】
まあ、こんな感じです。よし、何か楽しくなったきt(殴
意気揚々と、今まで登場した野郎とオリキャラさんをピックアップしていきますっ。登場したオリキャラのみとさせていただきます。すみません;後ほど、また更新させていただきます。ネタバレ防止の為に隠している登場人物もいますが、ご了承くださいませ。
月影 白夜【白夜光】ランク:SS 職種:クレイバー
日上 優輝【神斬】ランク:A 職種:ストライカー
断罪【断罪】ランク:SS 職種:クレイバー
橋野 慶治【狂戦士】ランク:B 職種:スレイヤー
ディスト【???】ランク:??? 職種:???
レト【螺旋翼】ランク:S 職種:ストライカー
黒獅子【黒獅子】ランク:??? 職種:???
ヴァン・クライゼル【土沌龍】ランク:SS 職種:クレイバー
ラプソディ【狂気】ランク:SSS 職種:???
ナイトメア【悪夢】ランク:SSS 職種:???
緒川 春之助【犬神】ランク:SS 職種:パニッシャー
ツクツク法師【???】ランク:??? 職種:???
風月 春【大和撫子】ランク:A 職種:シーカー
吾妻 秋生【月蝕侍】ランク:A 職種:ストライカー
不知火【閃光王・柏】ランク:SS 職種:スレイヤー
涼代 美月【氷歌】ランク:S 職種:シーカー
レイス・マキャベッリ【探求者】ランク:C 職種:シーカー
裏面、臨死【なるようにならない最悪】ランク:S 職種:ストライカー
黒槍 斬斗【斬将】ランク:A 職種:ストライカー
天道 残月【月夜】ランク:SS 職種:スレイヤー
エルンスト・ワイズマン【軍犬】ランク:A 職種:ストライカー
阜 七姫【赤頭巾】ランク:C 職種:シーカー
鈴音 凛【神無】ランク:D 職種:シーカー
という感じになりましたー。
上がこの小説の普通登場人物で、下がオリキャラ様でございます。
能力の無力化部類のものはランクを低くしております。無能力とさほど変わりはないという判断がされると考えてくださいませ。
以上、終わります!引き続いて登場していく人物ごとに更新していきますw???の部分もある程度話が進めたら明かしますー。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.187 )
- 日時: 2011/10/14 17:44
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: EFs6h6wo)
昔から、正義のヒーローとか憧れだった。
俺もなりたいと思っていた。それは、きっと叶うものだと思っていた。ずっと、ずっとなりたかった。
誰かを守れる、ヒーローに。
番外編:Condemnation(断罪)
ゆっくりと目が開けてくる。ぼんやり、木で作られたようにみえる天井が目線の奥にある。ゆっくりと体を起こしてみるが、何の痛みも感覚も麻痺しているように、何も感じない。
ぼんやりと、今の状況を見つめてみると、自分はどうやら助かったようだ、と心の中で思う。
助かった? いや、助かったと思っているだけかもしれない。実際、ここがどこかも分からないのだから、ここは天国ですとでも天使の輪やら羽をつけたものに言われても何ら疑うこともないだろう。
俺は、吾妻 秋生はここにいる。それだけは確信が持てたことだった。
「確か……左腕が……」
感覚の無い左腕、いや、左半身ほとんど全てを右手で触ろうとしたその時、
「目覚めたようだね」
部屋の奥から声が聞こえてきた。女の声だと分かったが、その声は秋生にとってとても印象の強い声だった。
「お前は……!」
忘れるはずがない。白夜光と戦った場面をこの目でしっかりと見ている。その絶対的な強敵が眼の前にふらりと現れたのだ。驚かないはずがなかった。
「断罪……!」
「ふふ、久しぶり、かなぁ? 月蝕侍のー……秋生君? だっけ?」
あの時と同じように、動きやすそうな短めの着物を羽織り、不気味にニヤニヤと笑みを浮かべながら、その女、断罪は秋生を見つめていた。断罪の殺気は忘れることのない、心に植え込まれた恐怖の一つだった。そんな恐怖の塊でもある断罪から名前を呼ばれると、吐気がするように気味が悪かった。
「そんな顔しないでよ? 別に、僕は君を襲ったりしないから、さ」
トン、トトン、と傍にあった机をリズムよく指で弾いた。その音が虚しくもハッキリ聞こえるのは、この異様な空気と同時に、ほとんど無音の状態が続いているからだった。
「何で、お前がこんなところに……」
「あはは、何でって、君の腕は僕が治したんだよ?」
「な……」
断罪の言葉に、秋生は絶句した。
自分の腕は、断罪に治された。何人もの罪無き命を奪っていった殺人鬼に。それは秋生にとって不愉快極まりないものだった。
「あのままじゃ、君、死んでたんだ。お礼の一つもないんだねぇー」
ケラケラと、ふざけたように小さく笑い声をあげる断罪。それを見て、秋生はすぐに自分の左腕を触った。
だが、左腕に感触はない。右手にはしっかりと左腕があると教えてくれているのだが、逆に左腕が右手に触られているということを教えてはくれなかった。
つまり、左腕は完全に麻痺している。けれど、動けと命令を告げると左腕はしっかりと動く。触っている感覚、触られている感覚がないのに命令は行き届いている。これは麻痺とはいえない、不完全な麻痺だった。神経はやられていない。もしやられていたら、まず動かない。けれど動く。だけど——感触も何もなかった。
「何だよ……この奇妙な、手は……」
「あぁ、それね。君の狂気を納めてるから、そんな感じになっちゃってるんだ。時期に治るけど、けど——それからが大変だね」
「どういう……ッ」
「狂気との戦いが始まるのさ。あの左腕が取れてたのは、狂気が暴走して内側から侵食、暴発したから千切れちゃった。それを今、留めてる。感触が元に戻ると、代償に狂気が暴れ出す。狂気に酔うと、凄まじい力を手に入るけど、自分の意識で判別することが出来なくなる。更に、その後の激痛が伴ったりもする。狂気を自由に扱えたらいいんだけどね」
話しながら他にあるベッドに座り、横に置いてあったお手玉を手に取ると、それで遊び始めた。
「俺は……狂気に犯されているのか?」
「まあね。大分根が深い所までいってる。面白いよねぇ」
ケラケラと断罪は笑いながら、お手玉で遊ぶ手だけは止めない。軽々とお手玉を上空で左右に交換させながらも器用に返事を返していく。
話しのないこの場では、お手玉の中に入っている物の音がシャリシャリとだけ聞こえてくる。
「ということは……俺は、このままだと、仲間まで殺しちまう可能性があるってことか?」
「殺っちゃうだろうね。——あ」
殺っちゃうだろうね、と言った瞬間、急に断罪は殺気を露にし、無意識の内にお手玉を破裂させてしまった。
小さく、パンッ! と音が鳴ると、そのまま地面へとお手玉の屑が零れ落ちていった。
「丁度、こんなお手玉みたいだね、今の君は。気をつけないと、何かの拍子にリミッターが外れちゃったら——君も、僕みたいになる」
そうして断罪は奥の方へと戻っていこうとした。だが、秋生は「待ってくれ!」と声を高らかにあげていた。
ゆっくりと断罪は振り返る。長い髪はゆらり、と揺れてこちらに顔を見せた。その時、何故か秋生には見えたのだ。
悲しく、涙を流して泣いている断罪の姿が。
「何?」
けれど、すぐに声を発した断罪にそれは掻き消され、同時に断罪の笑みを含めた表情が見えた。
「どうして、俺を助けた」
秋生はぐっと力を拳に込めて、そう言った。
「あぁ」
ゆっくりと、呑気に断罪はそう答えると、正解とも不正解ともいえない答えを秋生に対して返した。
「なんとなく。暇潰し」
笑みを浮かべた断罪は、どこから取り出したのか、右手にいつの間にか持たれていた林檎を口元に運び、シャリッと音を鳴らして食べた。
「林檎、美味し」
秋生は断罪のそんな姿を見て、変な感じがした。
口元に、血の味が混じったその日のこの頃。秋生は決心する。
「断罪。あんたは、これからどうするんだ?」
「えー? 関係あるかな、君に」
「ある」
秋生は即答だった。齧られた跡のある林檎を片手に持つ断罪は、その言葉に不思議そうな顔をした。そしてすぐ後から笑みを浮かべ、断罪は口を開いた。
「偽善を振りまかす奴を探しに行くんだよ。そいつは、何か知ってるからねぇ。僕はそいつに聞きたいことがあるのさ。それを聞いて——」
「殺すのか?」
断罪の言葉を遮り、秋生はそう言い放った。すると、断罪はその言葉に拍子が抜けたような顔をして「へー」と声を漏らした。
「それもいいね?」
特に思い浮かばなかったような感じを出して、疑問系でそう答えた。ゆっくりと林檎を齧り、シャリシャリと口から音を出す。
「じゃあ、逆に君はどうするつもり? お仲間の元に戻るのかなぁ?」
「いや、戻らない。俺は」
秋生はどこか詰まったように言葉を留めた後、すぐに決心した表情で口を開いた。
「——あんたについて行く。狂気を克服するんだ、傍に俺なりの狂気がいる方が為になる。それで、もし俺が狂ったら、俺を遠慮なく殺せ。それが簡単に出来る、あんたが一番の最適な人間だ」
「……へぇっ! なるほどねぇ」
断罪は驚いたような声と混じり合わせ、嘲笑しつつもゆっくりと林檎を握り締め、破裂させた。今のは断罪の能力、高圧縮を使って潰したものだと秋生は分かった。
バラバラに、それもグチャグチャに潰れた林檎は見るも無惨に地面へと果汁をぶち撒けた。
「面白いねぇ。君、気に入ったよ」
「やめろ。お前に気に入られると、生きた心地がしない」
「あははははっ! 面白い面白い! ならいいよ。ただし、言った通り狂気で完全に狂ったら殺しちゃうからね?」
「あぁ、構わない。好きにしろ」
断罪はとても嬉しそうな、それでいて普通に見れば可愛げのある表情で微笑むと、ゆっくり奥の方へと歩いて行った。
断罪がいなくなった後、ゆっくりとため息をついた。
「あの野郎……」
秋生が話していた間、断罪はずっと——殺気を放っていた。それも、恐ろしいほど強い殺気だった。今にも殺されそうな気配がしたほどである。
狂気に狂った俺を殺してもいい、という許可がそれほど興味を湧き立たせたのか。その意図は分からないが、どちらにしても心臓に悪い。顔を歪め、自分の手を見つめた。感覚のない左腕を動かしてみる。けれど、感触は全くない。
「畜生……!」
ベッドを思い切り右手で叩く。その後、左手でも叩いてみたが、感覚がないので全く分からない。見ると、左手は血で滲んでいた。どうやら、机の角に向かって叩いたようだ。本来なら痛みを表す言葉を己の口から言う所だが、それ以前に痛みも何もない。ただ、手からは血が流れ落ちるのみであった。
——秋生のもう一つの目的。それは、自分の心に隠された狂気を呼び覚ませたラプソディを探し、奴を——。
潰れた林檎の汁を集り、蟻が何匹も群がってきていた。蟻も蟻自身の役目を果たすために。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.188 )
- 日時: 2011/10/14 18:53
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: EFs6h6wo)
今回のアップデートによって起こった被害は現実世界では大きく問題となっていた。
"人口のほとんどが消えた"、"まるで、あの時のように"、"あの、惨劇が再び"。
プレイヤーはログアウトが出来ず、尚且つ現実世界にいる人々はエデンにログインすることが出来ない。アップデート時にログインしていた、もしくは別の何かで関係のある者が今回のアップデートに巻き込まれたとされている。警察の大部分もエデンにログインしてしまっている為、大規模な捜索は困難と見られている。
しかし、あの惨劇と呼ばれる電脳世界、エデンにおける大戦争、トワイライトの時とは違うことがある。
それは、アップデートをわざわざ行ったこと。そして、電脳世界と現実世界の区別を混入させたことだった。
ログアウト禁止になったのはトワイライト時同様なのだが、その二つの出来事が疑問視されていた。特に、アップデートである。
科学技術が進み、人々の暮らしはより豊かを求めて科学者達はネットワークという未知について調べた。その結果、異世界という架空の世界ならぬ広大な"世界"がネットワークに多数残留していることが分かったのである。
人間は、もし人類に危険が及ぶようなことになれば、ネットワークに人間そのものをダウンロードし、電脳世界で生きることを可能とさせる為に努力を重ねた結果、遂に成功してしまった。
新たな世界、新たな土地、ゲームのような感覚に捕われた人間は、次々と残留した世界に取り込まれていくこととなった。
それが、エデンだった。
次第にエデンは本当の世界のような扱いをされ、様々な発展を遂げていく。そして、人類が最も感動したことが異能であった。
様々な異能がエデンでは扱える。ゲームの世界だから殺しても構わない。そのような軽い感じでプレイヤーをキルしたことがきっかけとなり、エデンで死ぬとリアルでも死ぬということが分かったのである。
意識そのものをネットワークにダウンロードしている為だといわれているが、死亡すれば脳死状態になる。つまり、植物状態のような形になるということだ。
残酷な一面、便利なネットワークの力に圧倒され、様々な利点と共に、引き起こされたのが——トワイライトだったのだ。
地下の通路の奥深く。そこには想像も出来ないほどの都市が広がっている。この地下街は、元々の現実世界とエデンの電脳世界が混じり合って出来た機械都市である。
今、そこには多くのプレイヤーが存在している。アップデートしてから世界を彷徨い続け、見つけた居場所がこの地下街だった。
広大なこの地下街は、通称アンダープレイスと呼ばれ、プレイヤー達が情報交換を行ったりもする。
そのアンダープレイスの一角に、寂れたバーがあった。現実世界よりも勝手のいいこの世界は、基本は何でも作ろうと思えば作れる。現実の世界同様の生活を求めた人間ならではの行動は、自分達の生活の場を作ることであった。
バーの奥に、紫色の髪をした男が座っていた。呆然とその視線は虚空を見つめている。その眼差しの色も、紫であった。
カラン、と男の眼の前に置かれたウイスキーか何かの酒が入ったグラスの中にある氷が鳴る。
そのバーの中には、誰もいない。その男以外、マスターさえもその場にはいない不自然なバーだった。そんなバーの奥から、ゆっくりと何者かが出てきた。
その者は、女だった。漆黒のショートカットの髪に、金色の目をしている。バーの雰囲気とは一転し、ジャージ姿で現れた。
「何の用ですかー?」
少々、呑気な声で男に話しかけた。しかし、男は黙ったまま、現れた女を見つめる。そして数秒してから、
「お前が"黒猫"か?」
男の言葉に、驚いた素振りも見せず、その女は後方にあった酒の入ってあるボトルを手に取ると、一気にラッパ飲みを行った後、息を吐いて、男に笑いかけた。
「ま、そうだね。どーも、琴覇 明(ことは あきら)ってな名前で、アバタコードは一応、時雨ね。表向きだけど」
そうしてまたラッパ飲みを始める。その姿を見て、男はただ黙って自分のグラスに入った氷を見つめていた。
「ぷはぁー……。って、黙ってないでさ、自己紹介ぐらいして欲しいところなんだけど?」
おどけた感じで男に向かって言う。その紫の眼差しと金色の眼差しがぶつかり合い、ゆっくりと男の方が口を開こうとした——その時、
「邪魔するぜぇー!」
ドアが乱暴に開き、大柄の男が中へと入ってきた。しかし、それを紫の髪をした男と琴覇は何も言わないし、咎めない。その様子を大柄な男に続き、入ってきたチンピラのような男共が騒いだ。
「何だここはぁっ!? しょぼくれたバーだなぁっ!」
傍にあった椅子を蹴り飛ばす。それは紫の髪をした男のすぐ近くまで滑っていき、寸前の所で止まった。
しかし、その椅子のことなど気にもせず、ただグラスを見つめている。
「おいおい、ここが黒猫のいるバーって聞いたんだけどよぉ、もしかして、お前みてぇな女が黒猫か?」
「さぁ、どうでしょう?」
琴覇の返した言葉が余程腹が立ったのか、男は怒りを顔で表し、腕を大きく上げた。力で押せば何にでもまかり通ると思っているのか、男はそこらの椅子に向けて大きく両手を振り回した。
その瞬間、椅子が真っ二つに裂け、辺りに木屑が飛び散る。それを見た後ろのチンピラ共は声高らかに、
「見たか! 親分はなぁ! この世界で何人もプレイヤーキルをした、有名なPKなんだぜぇっ!?」
「へぇ……。あの、それで、何の用でしょう?」
「てめぇ……!」
「まあまあ、落ち着けお前ら」
親分と呼ばれた大柄の男が周りのチンピラ共を宥める。男は前へと出て来て、琴覇へと近づいていく。
「あのよぉ、情報を買いに来たってわけなんだが……タダで譲ってくれねぇかなぁ」
「何を?」
「情報に決まってンだろ? まあ、どうしてもって言うなら……痛い目に遭うことだけは間違いないだろうがなぁ?」
大柄な男の言葉を聞いて、後ろにいるチンピラ共が下衆な声を出して笑い出した。大柄な男も、得意気に笑みを浮かべている。
その様子に、琴覇はため息を吐き、
「今先客がお見えになってるんで、帰っていただけますかね?」
「先客ぅ? ……この紫の小僧のことかぁ?」
大柄な男は、笑いながら紫の髪をした男に指を差す。それと同時にチンピラ共から笑い声があがった。
しかし、何も動じずに、依然としてグラスの氷を見つめているままの紫の髪をした男に、大柄な男は腹が立ったのか、
「こんな小僧……今すぐ退出させてやるからよぉっ!」
大きく腕を振りかぶり、紫の髪をした男へと振り落とそうとした。——その瞬間、
バチッ、とまるで電撃が走ったかのような音が鳴った。店内に静けさが走る。それはほんの1秒未満のことで、そのすぐ後から床に何かが落ちた音が響いた。
「ぎ、ぎぃやぁああっ!!」
悲鳴をあげたのは、大柄の男だった。
男は苦痛に歪んだ顔で、自分の足元の床を見る。そこには、自分が先ほど振り落としたはずの両腕が落ちていた。
すっかり足元はその両腕から垂れていく血によって床が汚れていく。腕の断面には、焦げた痕のようなものがついていた。
大柄の男のその様子を見て、チンピラ共は絶句し、その場から動けずにいた。それは、琴覇も同様だった。
異様な殺気を放つ"それ"は、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「——くだらない」
その後、大柄の男を含めたチンピラ共は、恐怖で顔を歪ませながら逃げていった。血で汚れた地面は、すっかりとこびり付いてしまっている。
そこに佇む紫色の髪をした男に向けて、琴覇は冷や汗をかきつつも、ニヤリと顔を笑みで歪ませ、
「あんた、名前は?」
そう聞いた瞬間、男の周りにふっと紫色の電撃のような一閃が纏わりつくようにして現れた。ゆっくりと男は琴覇に顔を向け、そして冷静な声で言い放った。
「コードネーム『紫電』(しでん)……——籐堂 紫苑(とうどう しおん)だ」
カラン、と再びグラスの中の氷が溶け、音が鳴った。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.189 )
- 日時: 2011/10/14 20:42
- 名前: 旬 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
えー,なかなか読み進むことができない時間が足りない旬参上です。
最初の方は少し読みました。
が,不幸な事に! 私は読むペースは遅いんです。
だからま大分あるな……。
でもすっごく面白かったです!
続きも頑張って,執筆ペースに追いつけるように読みます!
応援してますねっ,しゃいぬおにいさん!
でわでわ ノ
- Re: 白夜のトワイライト ( No.190 )
- 日時: 2011/10/15 15:48
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: EFs6h6wo)
>>旬さん
コメントありがとうございますーっ。
最初の方、読んでしまいましたか……(ぇ
今とは全然違う書き方なので、結構黒歴史ですw
いえいえ、読んでいただいただけでも十分ですー!ありがとうございますw
正直、これ面白いのか、と思いながらも書いてます;
これからどんどん面白くしていけるように、展開を盛り上げていきたいと思います。ていうか、設定をちゃんと設立したいと思いますです!
ありがとうございますw旬ちゃんy(ぁ
頑張りませうっ!
- Re: 白夜のトワイライト ( No.191 )
- 日時: 2011/10/16 14:17
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: EFs6h6wo)
エデンはワールドコードと呼ばれる数式化した世界の座標によって様々な世界へと移転することが出来る。
一つの世界観だけではなく、様々な世界観があり、その中には寂れた見知らぬ都会の世界や、中央と呼ばれるヨーロッパ式の町並みが揃う巨大な街や、地下街に存在するアンダープレイスと呼ばれる機械によって作られた大都会も存在する。
そして、その中には江戸と呼ばれる日本古来の町並みも存在していた。
周りは武士風の人や、着物を着こなす人などが街を謳歌し、賑わってはいるが、この賑わいは別のものであった。
それは勿論、アップデートによる異変であった。
ログアウトも出来ず、ただ混雑した世界に取り残されたプレイヤー達は不安一色であった。そんな中、
「江戸から離れたら、イルが襲いかかってくる」
というものが街全体に広がり、騒ぎは大きくなる一方であった。
イルと呼ばれるのは、いわゆるバグの一種であり、エデンで死亡したプレイヤーの残骸が集まって出来るデータの結晶と呼ばれるもので、プレイヤーを吸収すればするほど、イルは強くなっていく。そのイルは、以前までは普通にしていれば見かけることもなかったが、アップデートによって一気に数が増えた。ある一定までプレイヤーを吸収したイルは、偽プレイヤーへと成りすましても来る。
そうした騒ぎを合わせて、この世界はおかしくなる一方であった。エデンはそもそも、現実世界の次にある世界として扱っていたが、もはや犯罪天国となってこの世界、ゲームのように楽しむ若者も急増し、この状況に狂い始めて電脳世界内にも存在してしまった麻薬を打って、他プレイヤーを殺すということを繰り返していた。
そういったプレイヤーなどを裁く為の大規模な組織、エルトールも今はどうなっているかの詳細も不明。その他の組織の活動も確定しない状態が続き、戦闘など最初からしないようなプレイヤーも大勢いるこの世界に、プレイヤーキラーという言葉は絶えない。
そんな江戸の街の大通りに、一人の若者が歩いていた。
一見、とても男には見えないほどの女顔を持つその男は、からんころん、と下駄が鳴らし、服装は綺麗な桜色と青色が上下に分かれたもので、髪は黒の長髪、そして腰元には"普通よりも長めの刀"が一本帯刀してある。
その男は、呑気そうに欠伸をかますと、騒いでいる人々を見て、
「今日も元気だねぇ……」
と、笑った。
ゆったりとした物腰的にも、あまり強そうには見えない。そのことがきっかけで、よくプレイヤーキラーなどに狙われるのだが、本人は全く気にしていない。むしろ"歓迎"していた。
「おいおいおいっ、嘉高さん! こんな大通りをまた歩いて! 何してんの!」
後方より、この呑気そうな男を嘉高、と呼んだのは不知火であった。
ボサボサの髪をそのままに、江戸の街並みにそぐわない格好をして、嘉高同様に女顔である不知火は慌てた様子で嘉高の下へと駆け寄った。
「うーん? まあ、いいじゃないか。今日は散歩したい気分だったんだ」
「そんなので毎回まかり通ると思ってんですか! ちゃんと屋敷に帰ってください!」
「不知火、そろそろ僕が遊ぶこと大好きな純情な子だと気付いてよー」
「もうとっくに気付いてるわ! 純情ではないですけどな! ……って、言ってる場合じゃないですって! 会議とかもあるんですから!」
不知火が必死に嘉高を戻そうとしているのを裏腹に、嘉高は笑いながら返していく。そんな余裕な態度を毎回振り払い、尚且つ、嘉高はとんでもない遊び人だった。
毎度毎度、屋敷から飛び出しては遊ぶ毎日。今日は散歩といっていたが、この後何か面白いものを見つけてそちらに行くのかもしれない。だから不知火は慌てた様子で屋敷に戻るように言っているのだ。
「会議面倒だなぁ……あ、そうだ。じゃあ不知火が仕切ってよ」
「ダメですって! 斎条が怒るじゃないすか! 今日ばかりは無理です! 俺も庇い切れません!」
「……しょうがないなぁ。じゃあ帰るよ」
嘉高の言葉に、不知火は安堵した顔つきで大通りから裏ロ字に入る道に行く嘉高へとついていく。その時だった。
「ぎゃああ!」
「うわぁっ! イルだ! 化け物が出たぞぉぉっ!」
「きゃああああ!」
騒いでいた大通りの人だかりの中から、突如として悲鳴があがった。そこには、一人、また一人と体を鋭利な何かで貫かれ、既に絶命しているものが何人もいることが確認できた。
そのイルは細身な体をしているが、どこかしら鋭利に作られており、手は槍のように長く、鋭い。そして動きが速いことと、手馴れている手つきからして、相当な吸収量を保っているのに違いはなかった。
「嘉高さん!」
不知火が叫んだのも否知らず、嘉高は既にイルの方へと向けて歩いていた。ゆっくりと、しかし、先ほどのおどけた様子とは違い、別人のような風格を漂わせながらイルへと向かっていっていた。
カランコロン、と下駄が鳴り、その瞬間ごとに時が止まっているように見えた。
「%$#%&(’%」
「ひぃぃっ!」
次々と倒されていく人々と、逃げ惑う人々。それらが二つに分かれているばかりで、イルに向かって戦おうとするものはいない。
その中、嘉高 正宗(よしたか まさむね)だけは違った。イルへと向かって殺気を放つ。すると、イルは嘉高の方へと顔を向けた。
「——来なよ」
嘉高が呟いた瞬間、絶叫に近い声でイルが飛び掛ってきた。それはとてつもない速さで上空へと飛び上がり、そして一気に両方の槍と化した腕を嘉高へと突き刺そうとした——が、その瞬間イルの両腕は斬られていた。
風を切る音や何も感じず、ただ刀が振るわれた。それは音も無く、イルの両腕を一刀両断したのだった。
「ばいばい」
嘉高はゆっくりそう告げると、刀をもう一度振るった。ただ肉を斬る音しかその場には響かない。それは数秒も経たないうちに、イルの体はいつの間にか真っ二つにされてしまっていた。
見ていた人々は、何が起きたか分からないだろう。当の本人である嘉高は、その長い刀を既に鞘へと納めきっているところだった。
「何時見ても、有り得ないな……嘉高さんは」
不知火は半ば感心し、半ば呆れた様子で言った。
嘉高はゆっくりと不知火の方へと振り返ると、
「さ、帰ろっか」
笑顔でそう言った。
その場の静けさの中、ただその言葉のみが広い大通りを埋め尽くしていた。
「始まるなぁ……」
ラプソディは呟いた。
薄暗い個室。そこは誰にも知られることのない、秘密のワールドコードによって形成された自分だけの空間だった。
ゆっくりとラプソディはコーヒーへと手を伸ばし、砂糖をいくつも入れる。そして掻き混ぜた。
「"あいつ"も、こうして砂糖を入れてたなぁ……」
ラプソディは呟いた。
そして、一口そのコーヒーを飲む。その後、ゆっくりとコーヒーを机の上に置き、
「僕の口には合わないな」
ラプソディは呟いた。
そして立ち上がり、小さな窓を見た。
そこには、絵があった。巨大な絵だ。自分の好きな絵だった。小さい頃、思い描いていた絵だった。
いつも、いつもそう思っていた。思っていた、念願の絵。それがようやく完成するかもしれない。
「ねぇ……? ——ルト」
窓の向こうには、カプセルのような容器に入っている女性の姿があった。
その女性を見つめ、ゆっくりとラプソディは口を歪ませた。
「始まるよ……また、トワイライトがさ」
コーヒーは、いつの間にか空っぽになっていた。