ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白夜のトワイライト ( No.92 )
- 日時: 2010/09/09 20:23
- 名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)
白夜は夢を見た。昔の夢だった。子守唄と共にその鮮烈な映像が流れていく。
それは自分が"国の最強兵器"として実験されていた時のことだった。
思い出すだけで吐気がし、頭痛が自らを襲い掛かった。だが、必ず忘れてはならない。
あの事件によってこの憎い思い出は俺自身に降りかかる罪となっている。
白夜には大切な人がいた。それはある姉弟で姉のほうは強気なようだけど心は本当はか弱い少女。
弟のほうはいっつもそんな姉のことが大好きでずっとくっついている気弱な少年。
姉は姉で弟を大事に思い、仲のいい姉弟だった。だがこの二人も白夜と同じように実験体だった。
初めて三人が出会ったのは同じ実験現場で会ってからのことだった。
二人はどれだけ辛い実験だろうと必死で耐えていた。俺はそれを見ただけで心を落ち着かせることが出来た
——名前は、なんていうんだ?
——私?私はルト!この子は私の弟のレト!
——お、お兄ちゃん…誰?
——俺は白夜。
白夜は"太陽に近づきすぎた堕天使"という実験タイトルだった。
そしてその姉妹は"螺旋に轟く兎"という妙な実験タイトルだった。
俺たちはその後、脱走した。遠いところまでずっといった。だが、捕まえられるのは時間の問題だった。
俺たちが捕まえられた理由はとある凶悪兵器を起動させるためだった。その兵器は
世界最悪最凶にして最大の大戦争、トワイライトで使われた日本軍の最終兵器。
その名のとおり、トワイライトだった。
トワイライトはただの兵器ではなかった。使用者にはそれ相応のリスクを伴った。
さらにトワイライトを発動するためにはある能力が必要だった。それは——リアルでの能力発動可能。
エデン内で起こせる能力を現実世界でも起こせることの出来る者しかトワイライトは発動できなかった。
つまり、白夜とルト、レト姉弟は発動できる者だった。適合者とされたのだった。
最初の適合者とされたのは、姉弟の姉のほうだった。そして…
意識不明、植物状態。生き返る見込みは奇跡が起こったとしても不可能といわれるほどに深刻だった。
その弟は必死でトワイライトを止めようとした。そこで…俺は…俺は…!!
——トワイライトの発動を阻止するものを、排除せよ。それがお前の任務だ。
——なっ…!
——君は自由になりたいのではないかね?生まれもってその凄まじい力があれば自由になりさえすれば…
君の大切なトワイライトの適合者…あぁ、そうそうルトとかいうガキだったかな…助けることが出来る。
それに一度脱獄した身で死なないだけまだありがたいと思え。
俺はこいつを殺してやろうかと思った。だがこいつにはまだ聞くことがある。
俺もトワイライトを起動するのは止めたかった。だけど…ルトが…
——私がもし、死んだとしても…弟を…頼むね?……好きだよ、白夜…好き、だったよ……さよなら。
脳裏に張り付いてとれないこの言葉が俺の頭を交差する。いつまでもいつまでも…。
どうして俺は止めれなかったんだろうか?いくら敵がいようとも俺なら…。
——私がトワイライトを発動しないと…みんな死んじゃうの。なら私は…この命をみんなのために使いたい
——待っ…!
——邪魔はさせないよ…白夜。
俺はそこで後ろから何者かに…やられた。気を失う前にマスク越しでよくわからない声が聞こえた。
——三月兎。君は英雄になるんだよ…。この黒獅子の名を持って君に栄誉をたたえるよ。
…白夜は、まだシナリオがある。きっちり働いてもうらからな。
最後に聞こえたのは黒獅子と名乗る男の男か女か年代が上なのかわからないグチャグチャの笑い声が
俺の脳内を駆け巡っていき、意識が途切れた。
ルトの最後の言葉に何も、いえなかった。俺は、自分の無力さを知った。
——何が最強の力だ…!何が…!何が天才だよっ!!俺は…!ルト一人守れなかったじゃないか…!
そして、ルトの弟であるレトが来た。
——お前が…!姉さんをっ!姉さんを殺したっ!!
俺は、レトにまで同じ思いをさせたくはない。到底自分の口から、偽善者の口から
ルトはお前のため、みんなのため、俺なんかのために…なんていえなかった。
——…罪ある者は俺だけでいい。
俺はレトの目に熱の斬撃で目の近くに傷を負わせてしまった。
本当に裁かないといけないのは俺自身なんだ。誰か、いっそ俺を殺してくれ。
そして二番目の適合者となったのは俺だった。もうどうでもよかった。他人の命なんて。
俺はその使用したリスクとして一生子供のような状態になるというものをかけられた。
俺のトワイライトは暴発で終わったのだ。ルトの時は正常に起動できたからリスクが高かった。
俺は暴発だからリスクが低い。もし神がいるのなら俺とルトを代わって欲しかった。
意識不明の植物状態となったルトの行方がわからない。俺は必死で探した。
そしてトワイライトの中にまだ眠っているということを"あの学者"から聞いた。
俺は…ルトを元に戻すためだけに生きている。何があろうと…必ず…ルトを見つけ、元に戻す。
それが俺に与えられた罰なのだから。